発注者の支援を行う「事業促進PPP」
「事業促進PPP」として発注者側に入っている建設コンサルタント。国交省の工事を受注している建設会社の中には、知っておられるところもあるだろう。業務によってはゼネコンとコンサルとのJVで入っているところもあるが、業務を受注している会社を見ると建設コンサルタントがほとんど入っている。
発注者側に立ち、事業や工事の進捗を見て、問題が発生すれば解決にあたったり、事業全体の計画を立案したり、発注図書を準備したり…などなど発注者の支援を行う立場が、事業促進PPP(Public Private Partnership)である。これにより、発注者側の人手不足を補ったり、大量の業務を分担したり、事業全体の進捗をスピードアップさせて効率的に事業を進める、などの効果が期待されている。
権限は発注者にあってPPPには無い。しかし立場は発注者と同じだ。そんな事業促進PPPチームを、工事受注者はどう見ているのだろうか?
現場を知らねーのに発注者側につきやがって・・・
もしかしたら、こう思っておられるのかもしれない。
「現場を知らねーのに発注者側につきやがって・・・」とか「権限もないくせにえらそーな顔しやがって・・・」とか。たしかに、えらそーな態度を取っている人をチラホラみかける。
少し前の話になるが、ある地方で私は事業監理業務に従事していた。私は主に事業全体といくつかの工事の進捗を監理する側での仕事にあたった。管理技術者や主任技術者がいて、その下に私がいるという構図だったが、何度か工事受注者との打ち合わせに同席させていただいた。いくつかの受注者は明らかに見下す態度をとっていた。
一方で、その受注者は問題やトラブルがあるとすべてこちらに問題解決を”丸投げ”。「工事ができるようにしろや!」と言わんばかりだった(そんな態度は別の職場でも見聞きしていたので、別に驚きもなく、そんな会社もあるよね、というところ)。工事受注者は工事遂行が仕事であり、問題解決は自分たちの仕事ではないと捉えていたのかもしれない。
ゼネコン社員もPPPに・・・
案件によっては、ゼネコンもPPPのチームに加わっているところがある。東北の災害復旧のPPPには大手ゼネコンがJV幹事となっているところもあるようだ。幹事であれば管理技術者はゼネコン社員が務めているのだろう。PPPという立場だから、発注者側での立場で業務遂行となる。ときには、工事受注者の敵のように受注者から映っているかもしれない。
発注者を技術的な面から支援するのがPPPの役割だから、ときには受注者と敵対してしまうこともあるかもしれないし、ありうる話だ。PPPは発注者の利益を守ろうとするし、受注者は自分たちの利益は絶対確保することが求められる。時には設計変更によって利益を増やそうとすることもある。それは受注者としては当然のことだ。ボランティアで仕事をしているわけではないし、利益は会社にとって血液のようなもので、なくてはならないもの。
ただし、不当な増額要求は発注者としては受け付けられない。不当に要求してくる施工者はそう多くはないだろうが、そこは人である。チャンス!となれば目がキラーン!となって、ギリギリを攻めてくることはあるだろうし、そこを踏み越えてくることだってありうる(見たことがある)。
そこは、PPPとしては受注者の意は汲んで赤字にならないようにして適切な利益は確保しつつも、発注者の利益は死守しなければならない。いろいろなせめぎあいは発生するだろう。
受発注者間で争ってる場合じゃない
当たり前のことだが、事業を進める目的は、住民のさらなる利便性向上など住民に利益を享受してもらうことである。道路一つ造るにしても、もっと安全に快適に通行できるようになることが道路建設の目的である。つまり、住民に喜んでもらうことが大事なのだ。
「あんたのせいだ」とか「〇〇が悪い」とか争うとか、そんなことをしている場合ではない。住民の方々の期待に応え、要望に応えるために、できるだけ事業推進のスピードや効率をあげていかなければならない。
発注者も民間と同じく、人材不足に悩まされている。ネットやテレビなどの報道では霞が関のキャリア官僚の退職が扱われることがあるが、地方出先機関も不足している。人手が少なくなっているのに進めるべき事業はそんなに減っているわけではない。それを補うために、民間の専門技術力などを活用しようというのが、事業促進PPPだ。
お互い言いたいことや不満はたくさんあるだろうが…、もっとも念頭に置くべきは「住民に喜んでもらうこと」である。
何のために工事を行うか?という目的を見失った発注者や受注者をよく目にする。何事も原点に立ち返ることが、円滑な工事施工に不可欠ですよね・・・泣