縁の下の力持ち「海上自衛隊 施設職域」とは?
私は海上自衛官として約15年、「施設」という職種でお仕事をしていました。
以前、施工の神様で特集されていた陸上自衛隊の「施設科」職種とはお仕事の内容がちょっと異なりますので、過去の勤務経験から少しばかりではありますがご紹介したいと思います。
施設職域の海上自衛官の仕事とは?
海上自衛隊のホームページでは、施設職域の業務内容は次のように紹介されています。
国有財産についての管理、運用、施設器材・施設車両を用いての建設、道路等の工事および器材の整備を行います。
これだけでは、知らない人が読んだら「なんのこっちゃ??」となりそうです。簡単に説明すると、海上自衛隊施設職域の隊員は、基地の建設計画の立案・調整や維持管理を行うのです。
陸上自衛隊の施設科隊員は戦闘に特化した前線での任務を持っていますが、海上自衛隊の施設職種隊員は完全なる後方支援、いわゆる縁の下の力持ちなのです。
硫黄島やアフリカにも配属される
海上自衛隊は艦艇だけではなく、航空機も保有しています。そうなると当然、港だけではなく飛行場も持っています。施設職域の隊員は港湾施設だけではなく、飛行場施設も維持管理しています。
勤務地は、北は北海道から南は沖縄、特殊な場所としては硫黄島や父島、そしてアフリカのジブチ共和国に所在する艦艇基地もしくは航空基地に配属されています(私が勤務していた当時の話ですので、今は分かりませんが・・・)。
硫黄島には、海上自衛隊と航空自衛隊の基地が置かれており、民間人の立ち入りは禁止されている
発注用図面や仕様書の作成も行う
施設職域の隊員は母数が少ない(海上自衛隊隊員数の1%程度)ため、隊員自ら工事を行うことはあまりありません。
基本的には、維持管理に係る外注工事に出すことになるので、そのための発注用図面や仕様書の作成をしています。施工業者決定後は、監督官として業者の管理や工事に係る部隊内の連絡・調整を行うことが主体となります。
新設工事については、現在は防衛局(昔は防衛施設局)が発注元となりますので、部隊から要望を出して、外注工事を出してもらうこととなります。
施設職域の隊員は監督官ではありませんが、防衛局がコンサルに委託して工事を監督しているので、工事に係る問題や要望を調整する際には、コンサルもしくは現場代理人とやり取りして工事を進めるという役割を担います。
海上自衛隊唯一の”工事専門部隊”も存在する!
そんな海上自衛隊の施設職域ですが、唯一、自前で工事をする部隊が存在します。それが八戸航空基地に所在する「機動施設隊」という部隊です。
機動施設隊は、海上自衛隊の航空部隊の運用等に必要な施設の維持、修理、被害の復旧作業、その他の整備に関する業務を機動的に行うことを任務とする部隊です。また、災害派遣や除雪支援等の民生協力も担っています。隊員数は約80人です。
陸上自衛隊の活躍の影に隠れて目立っていませんが、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震の際には災害派遣に従事し、がれき除去や物資輸送を行いました。
機動施設隊は、基本的に航空機の離着陸に必要な滑走路の被害復旧のために創立された部隊です。そのため、舗装工事を主体的に行っています。
平時には全国各地の部隊に派遣され、自隊の機材を輸送して約2~3か月の期間、舗装工事等(一応、他種土木工事も施工します)に従事します。実績として多いのはやはり道路舗装工事であったと記憶しています。
一般の方には、海上自衛官が道路舗装工事を行っているとは想像もできなかったのではないでしょうか?
除雪も仕事の一つです!
海上自衛隊は青森県の八戸市に固定翼の航空基地、大湊に回転翼の航空基地、そして京都府舞鶴市に同じく回転翼の航空基地を保有しています。この3基地は、冬になると雪が降ります。雪が降り、積もってしまうと航空機を運航することができません。
そのため、施設職域の隊員が主力となって除雪車両を操縦し、滑走路の除雪をしているのです。積雪は夜中がほとんどなので隊員は夜通し、除雪をして航空機がいつでも運航できる状態を維持しているのです。
除雪車
・・・ざっくりでしたが、海上自衛隊施設職域の隊員のお仕事について書きました。
私も艦艇基地、航空基地で勤務してきた経験がありますが、やはり部隊の運用方法が異なるため、同じ海上自衛隊であっても文化の違いがあり、苦労したことが多々ありました。
今後は、海上自衛官として経験した、工事に関わる苦労話をしていきたいと思います。