電気保安業界に携わる人たちが集えるカフェ
昨年、電気保安業界で突如”斬新なアイディア”を生み出した人物がいた!!
クラウドファンディングで資金を集め、電気主任技術者や電気保安業界に携わっている人たちが集えるフリースペースを、2019年10月にオープンしちゃったのだ。
そのフリースペース「Cafe自家用電気(カフェジカ)」を運営する、株式会社ミズノワ代表の水島さんにお話を聞いてきた。
元電気保安業界 営業マンの未知なる挑戦
――どうも初めまして・・・ではないですよね(笑)。私たちは。
水島さん そうですよね!元々の出会いは、自分が前に働いていた会社に問い合わせしていただいたのが、初めてでしたよね(笑)。
――そうです(笑)。私が以前勤めていた、太陽光のO&M会社で電気主任技術者を探していたときに、電話対応してくれたのが水島さんだったと(笑)。今思うと、恐ろしいほど世間が狭いなと思いました(笑)。
水島さん そうですよね(笑)。それから自分がクラウドファンディングを立ち上げたときに、ツイッターで反応していただいたので、DMを送ったところからまたお付き合いが始まった感じですよね。
――もともと、電気保安業界は世間が狭いというのは知ってはいたのですが、関西もまだ自分の庭だとは知りませんでした(笑)。
水島さん (笑)。
――挨拶はほどほどにして、この「カフェジカ」のオープンに至った経緯についてお話を聞かせてください。
水島さん 経済産業省がデロイトトーマツに調査依頼して明らかになった、「電気保安人材の中長期的な確保に向けた業界横断的な認知度向上並びに入職促進に関する調査・検討」にて、自分たちが携わっている電気保安業界の人手不足に関して、早くて2020年には人材不足が顕在化するという内容の資料を読みました。
また、実際にこの業界で働いていて感じた技術者の高齢化、そして求人を出しても全くと言っていいほど集まらない人材不足を目の当たりにして、自分に何かできないかと思い、たくさん悩んだ結果、この「カフェジカ」をオープンし、この問題を解決することができるのではないかと考えたのがきっかけです。
カフェ内にある試験練習するための施設
――お世辞抜きで、本当に素晴らしいです!!
特に私が素晴らしいと思ったことは、横のつながりが本当に薄い業界であり、また電気保安法人と電気管理技術者の仲が悪いとされている状況の中、そういう業界の暗黙のルールを無視して、沢山の技術者が集えるスペースをオープンするというのは、本当に斬新だなあと思いました。
そして、水島さんの起こしたこの波は、瞬く間に世間に知れ渡り、たくさんの業界紙からインタビューを受けているのを知っており、いつかインタビューしたいなと思っていたので、今回実現して本当にうれしいです。
水島さん たくさんの方の応援で、目標金額の120%を集めることができたので、支援していただいた方々に「支援してよかった」と思っていただけるように、これからも運営していきたいです。
目の前に迫る”人材不足の危機”
――この業界の人材不足について、先ほども少しお話しいただきましたが、より詳しく聞きたいと思っています。実際に人手不足は、2012年からスタートしたFIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)が始まってから約3~5年過ぎたあたりから、如実に人手不足が現れませんでしたか?
水島さん わかります。実は自分が前に働いていた会社の話になりますが、自分が入社した時に受託していた外部委託の案件が1万件くらいあって、それから約10年で1.8倍の1万8千件くらいに増えたのですが、最後の1~2年は増やそうと営業をかけても、そもそも受けられる人材が不足していて、泣く泣くお断りしたという経験もあります。
また、当時働いていた会社にくる問い合わせ内容も、某大手保安法人が断られて流れてきたお客様が増え始めたのも、今から2~3年前あたりからでした。
――経済産業省にある「自家用電気工作物設置件数全国計」から関東地区だけをピックアップすると、平成22年から令和元年の10年間で12%以上も増えるなど、異常な伸びを記録していました。そんな時に私は、全国あちこちに電話をかけまくって太陽光発電所の外部委託を受けてくれる会社を探していたけど、本当に見つからなかったのはよく覚えています。
水島さん 国も何もしなかったわけではなく、太陽光発電所に限っては点検頻度の見直しと、換算係数の圧縮(換算係数とは、保安業務に従事する方に与えられる点数で、その点数内に収まる件数しか点検ができないルールになっている)などの緩和策を打ち出しましたが、焼け石に水状態になっていますね。
電験を取得すれば、80代でも働ける
――これだけ国も危機感を持ち、全国各地にある電気保安協会も解決できない人手不足の問題ですが、解決する方法とかはありますか?
水島さん 一気に解決できる方法というのはないです(笑)。それこそ、講習を受けただけで電気主任技術者の免状を発行するレベルまで落とさないと、解決は難しいと思います。それは無理だというのを承知の上で、やはり地道に活動するしかないと思います。
――そもそも、この業界の知名度がなさすぎるのが問題ですからね。それに対して国が考えていることが、ドラマにするなどのメディア戦略でしょ(笑)。その他として、IT化くらいが今のところ目立った動きですかね。
水島さん 関西電気保安協会は、石野卓球氏とタイアップしたCMをYouTubeでアップ(2020年2月29日までの期間限定)して話題になっていましたよ。
――あれは衝撃的でしたね!でも、あれを見た電気保安業務を知らない友人が「卓球やべぇーよー」だったので、あれで知名度がアップしても内容が知られることがないのは、最高にロックでしたね(笑)。
水島さん 今流れているCMシリーズも、フレーズが耳に残って実際に何やっているかがわからない、知名度しかアップしてないですからね(笑)。
――保安協会は家庭用も担っているから、電気保安業界のみをピックアップするのは難しいのかもしれませんね。その他だと、この「カフェジカ」を使って、電気科の高校生や大学生、電験を取得して活用できていない層などに向けたイベントを開くっていうのも、草の根運動かもしれないけど重要かもしれないですね。
水島さん 一度取得してしまえば、80代でも働くことのできる資格ですからね。そういう資格だっていうことを高校生や大学生が知る機会が増えたら、今よりもこの業界を目指そうという子たちが増えるかもしれませんね。
「カフェジカ」を通して、繋がりの輪を広げたい
――今頃ですが(笑)、カフェジカについて教えてください。
水島さん ホームページにもありますが、「電気主任技術者や、様々な電気技術者が集まるカフェ」がカフェジカです。
――ちょうど今は、9月に試験予定の電験3種関連のイベントが多い感じですかね?
水島さん それに偏らないように、様々なイベントを考えております。前に開催したイベントでは、地域を跨いで揃った現役の保安協会・保安法人で働いている方による、スペシャルコラボリレー試験実演なんかもやりましたよ!
入口付近にある遮断機やリレー等
――関東とか、中部、近畿とかの保安協会さんですか!?業界の人からしたら、「マジか!!」って思いますが、この業界を知らない人からするとマニアックすぎますね(笑)。
水島さん 有名な講師の方によるセミナーをした際には、北は北海道から南は沖縄まで、本当に全国からお越しいただくこともあります。
――基本的に電気保安業界に関わっている人というのは、一匹狼タイプばかりに思われがちですが、実際には横とつながりたい人ばかりなのは、前の会社で働いていた時に電話をしていて知っていました。北海道や沖縄からくる理由もわかります。
水島さん そのつながりが、この「カフェジカ」を中心として繋がりの輪になると素晴らしいなと思っております。