本記事は『リノベノシゴト』とのパートナーシップにもとづく転載記事であり、リノべる株式会社の許諾を得て掲載しています。
「建具が入らない・・・」
リノベーション工事が始まり、壁の下地が終わろうとしていた頃、現場から1本の電話が入りました。
「建具枠を取り付けているんだけど、LDK入り口のドア枠が入らないんだけど・・・図面の寸法合ってる?」という恐怖の内容でした。
頭の中は「えっ・・・(思考停止)」
本当に建具が入らないとなると、(場合によっては)壁下地の段階とは言え大掛かりなやり直しが発生してしまいます。
書き上げると頭が痛くなりそうなので、内容や工程は異なりますが、勇気のある方は過去の記事の想定工程をご参照下さい。
設計内容は?
原因や対応方法についてお話しする前に、まずはどういうプランだったのか簡単にご説明します。
- 建具の場所:LDK入り口(玄関ホール⇔リビング)
- 建具の種類:片開きドア
- 建具周り:LDK側ドアの左右には、”冷蔵庫+キッチン造作収納カウンター” と “造作デスク兼収納” がありドア両側にゆとりはほとんど無し。玄関ホール側ドアの左右には、トイレ・寝室があるが、玄関ホール幅は広くとっている為ドア両側にはゆとりあり。
建具(建具枠)を取り付けるまでの流れ
今回の失敗談の現場での建具を取り付けるまでの工程もご説明しておきます。
〜解体後〜
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- 墨出し(=スケルトン状態の躯体床に平面図を書く)をして壁の位置を決める
- 配管・配線工事
- 壁・床の下地を組む
- 建具枠を取り付ける
そして、建具枠が収まらず今回のミスが発覚しました。
どうやってリカバリーするか
今回の対応は、問題が発生した際の基本の流れで対応しました。
本当にこの基本が大事です!!
案件を担当する方は、この流れが出来て当たり前!じゃないと問題は膨張もしくは逆に増えてしまいます。
- 原因を究明
- 経験のある上司に相談し、対応方法を検討
- 2で相談した方法をもとに、現場の親方と対応方法や費用負担について協議
- お客様へ謝罪+対応策を提案
- 対応策実行
原因は何?
さて、今回の建具が入らなかった原因ですが、いくつかの要因があったのでご説明します。
1.図面が違っていた
まず、一番あってはならない図面のミスがおおもとの原因です。有り得ないのですが、平面図の建具の寸法が寸法線作図時の自動入力にはなっておらず、寸法数字を手入力にしていました。
その結果、図の建具幅と寸法線の数字が違っていたのです!
簡単に説明すると、図の建具幅は850mm>寸法線の数字は800mmだったということです。怖すぎます…。
2.余裕の無い計画
今回のプランは玄関ホール側のドア両側には余裕があったのですが、LDK側は余裕を持たせずに「冷蔵庫 → キッチン造作収納カウンター → 建具 → 造作デスク兼収納」を計画していました。と言っても、壁全長幅が50〜100mm程度の(図面と実際の)誤差は鑑みていました。
3.躯体の歪み
経年した躯体の壁や床には歪みが生じています。真っ直ぐ垂直・水平という状態はまず無いと思って下さい!
今回の物件もある程度築年数が経っていて、特に壁の歪みが大きかったようです。その為、”壁全長幅が50〜100mm程度の(図面と実際の)誤差は鑑みていた”としても、歪みによって誤差を飲み込んでしまっていました。
つまり、LDK側の壁幅に余裕がなくなってしまっていたということです。
4.現場確認不足
下地の軸組段階で、必要有効幅が取れているかの確認が出来ていなかった。確認をする状況(どこまで工程が進んでいるか)では全てが確認出来ない場合もあるかとは思いますが、これもあってはならないことです。
5.現場側の確認不足
今回は壁を作る・建てるにあたり、LDK両端の躯体壁を基準に必要な壁幅を追って壁の位置を決めていました。
具体的には、冷蔵庫横の躯体壁から → 冷蔵庫+キッチン造作収納カウンターの必要幅、反対の躯体壁から → 造作デスク兼収納の必要幅。そして残りを建具という位置決め。
壁の位置を決めた際に、全ての有効寸法を現場側でも確認していたら、壁を建てる前に防ぐことが出来たかと思います。
どうやって対応したの?
原因が分かり、上司や現場と協議をした結果、2つの対応方法をお客様にご提案することになりました。もちろん、まず謝罪と説明をしてからです。
①ドア幅を優先させる案
キッチン造作収納カウンター、又は、デスク兼収納を計画より幅を縮小させてドア幅を計画通り入るようにする。
お客様へのリスクとしては、壁の位置を変更する必要があり、壁下地をやり直さないといけない為、工期が伸びてしまう可能性がある。工期によっては引き渡しが伸びてしまう。
②ドア幅を計画より縮小する案
工期を変えず、キッチン造作収納カウンター・デスク兼収納は計画通りにし、建具幅を約30mm小さくする。ドアが木製框組デザインだった為、大工さんが枠と縦框を其々少しずつ削り小さくする。
お客様へのリスクは、建具幅が計画より小さくなる為、LDKに設置する大型家具や家電の搬入経路が狭くなる。家具や家電のサイズ制限が計画時より厳しくなる可能性がある。場合によっては、LDKに面したバルコニーからの搬入になる。
2つの対応方法をリスクも合わせてご説明し、②のドア幅を計画より縮小する案でご了承をいただき、実際に対応しました。
現場が動き出してから問題が発生した場合は、対応スピードも重要になります。
今回は現場から「建具が入らない」と連絡をもらってから、翌日の夕方にはお客様へ謝罪と説明、対応方法のご提案をしました。
同じミスをしない為には?
今回の失敗・原因から、同じミスをしない為の学びをまとめてみました。
【図面の寸法、数字への責任を持つ】
図面はお客様への提案ツールでもありますが、現場への指示書になります。図面に描いた図や線・文字・数字全てに責任を持ちましょう!そうすれば、作図も確認作業もより慎重になり、図面のミスが減るようになるはずです。
【確認作業に手を抜かない】
色んなところで耳が痛くなる程言われているかと思います。確認の作業は、設計から施工の中で、多くのタイミングで出てきます。
そして、確認をしっかりすることで防げる・早期発見出来るミスも多いかと思います。
”やる事がいっぱい・時間が無い・現場の親方や職人が何も言ってこない”、そんな時こそ落ち着いて確認をして下さい。
先輩や同僚・現場の方に協力してもらって確認するのも一つかと思いますが、その際はコミュニケーションをしっかり取り、何よりも人任せには絶対しないことです!