予備日は休みじゃない!ガッカリした現場の詰めの甘さ

予備日は休みじゃない!ガッカリした現場の詰めの甘さ

臨機応変な対応が求められる現場

先日まで私は、ある海洋研究所の中にある、波の研究のため設置された大きなプールのような器の新築改修工事に関わっていた。

一番最初の建物は60年前の建築で、その後、何回か増築と改修工事を繰り返している。改修のために、コンクリートを解体してみると、中から出てくるのはまだ丸鋼の時代だった。

継ぎ手や定着などの解釈が、まだ一般に浸透していない時代だったのだろう。鉄筋同士の緊結が不十分で、重ねの長さ等は一切配慮されていない。

今更そんなことで文句を言っても始まらないので、現状をどう納めていくかが改修工事のポイントだった。さらに、それらは全て現状がどうなっているかによって変わってくるため、その場その場で臨機応変な対応をするしかなかった。

何を話しても伝わらない

何と言っても、この現場で一番の勝負どころは、型枠の建て込みだった。打ち放し仕上げということもあるが、これがしっかりできるかできないかで全体の出来栄えが決まる。

この現場で、型枠大工に示されるべき注意事項は3つあった。1つ目は、改修工事の現場であるということ。

一言で言えば、定型のベニヤがそのまま使えない面倒くささが伝わっているか?ということだ。床が水平じゃない、壁が垂直・平行じゃない、つまり、どこかを基準の定規にしてそこからあらゆる寸法を追ってくることができない。

具体的には、床が水平じゃなければ、型枠ベニヤの垂直線を揃えるためには、どんな勾配で下を切らなきゃならないか?どの位置にセパレーターを配置するか?など、気を使わなければいけないところは山ほどある。

2つ目は、打ち放しの仕上げであること。張りぼてのコンクリートなら、仕上げの下地調整のモルタル仕上げでいくらでも調整できるが、打ち放しはそうはいかない。ごまかしが一切きかない。

型枠ベニヤの目違いや表面の不陸や平滑性、打設時のジャンカなどに細心の注意が必要だ。個人的には、型枠ベニヤのへりに取り付ける桟木でさえ気を使って、仕上げ面に釘の頭が出ないよう、桟木の側から木ねじで止めて欲しいと思うくらいだった。

3つ目は、L型の擁壁を一発で打設するための注意点だ。生コンの硬さ、浮かしの型枠の保持、打設順、床が平らじゃないために生じる漏れの対策など、利点と共に気を使わなくてはいけないところが、やはりたくさんあった。

だが、予想はしてたことだったが、ここの現場では、打ち放しの擁壁と単なるL型のコンクリート壁との区別さえついていなかった。当然、どこが違うのか理解をして、サブコンと交渉してくれるなど一切やってくれなかった。

打ち放しと改修工事であるが故の難しさなど、途中で何度もここの職員に話した。それをサブコンに伝え、今からでもできることはやったほうがいい!と散々話したのだが、結局何一つ伝わらなかった…。

この現場がどういう場所なのかは、仕事を始める前に現場の職長と話をすればすぐ分かる。さぁこれから始めるぞ!という時になって、今更できないことをうだうだ言ってもしょうがない。

伝わっていないのは、彼らだけの責任ではない!私自身、非常に不本意だが、彼らの言い分を受け入れるより術はなかった。


予備日は休みじゃない

それでも、1つずつできることを彼らに伝え、現場では前向きに取り組んだ。だが、最後の詰めの甘さには心底ガッカリした。

それは、打設前1日は、最後の細かい詰めをするために予備日として取りましょう!と1日あけてあったのだが、ここの職員の人達は何を勘違いしたのか、その日に関係する職人を、他の現場に助っ人として送り込む手配をしてしまったのだ。

既存の水平じゃない床、垂直じゃない壁に設置した型枠継ぎ目を完全に塞ぐ工事をしないと、型枠を外した時にコンクリートノロが漏れ出し、ジャンカが発生しそうなことは容易に想像がついた。

そのために取ってあった1日が、無くなってしまったのだ…。後から話を聞いて、散々その1日の大切さを伝えたが、まるでノレンに腕押しの反応だった。外注の人間ができることはそこまでだが、実にガッカリした!というのが正直な気持ちだ。

現場では、可能な限り指示や助言は行ったつもりだが、結局それをどう決断するかは、元請けの人間の判断に全て掛かっている。多くの外注の立場で仕事をしてきた人達は、同じような経験があるだろう。

大切なのは、そんな時の気持ちを引きずらないことだ。そんなことで神経を使って感情を乱すのは、自分にとって損なだけである。正論は正論として、こうあるべきだ!と自分の中で答えを出し、自分の中に蓄えておけば良い。

この記事のコメントを見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
建設業は、無形物を提供している
「新築工事だけじゃダメ?」建築施工管理技士は改修工事で成長する
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
アジア、アフリカなど海外の建築現場で長年、施工管理に従事している。世界中で対日感情が良好なのは、先人たちの積み重ねである。日本人として恥ずかしくない技術者でいたい。
モバイルバージョンを終了