河川工事現場

工事用道路のルート変更で、工期が1ヵ月短縮した話【豪雨災害の復興工事】

工期や工程を予測できる力はあるか?

工事において、もっとも重要なのは工期といってもいいだろう。工期に間に合うことができなければ、会社自体もペナルティを負うばかりでなく、社会的信用も失いかねない。とくに土木工事は天気の影響をもろに受けるため、工期の影響は避けて通れない。しかし、現場を予測する能力があるだけで、ぐっと工程を短縮させることができることもまた事実である。

工事用道路のルート変更を要求

私がまだこの業界に入社して間もない頃。河川災害復旧工事の応援に行ったことがあった。現場は台風、豪雨に伴う石積みの崩壊で目も当てられないくらいに悲惨な状況だった。河川には崩れた石積みの山がゴロゴロ転がっていた。ブロック積工で復旧することは決まっていたが、川までの高低差が直高で30mあり、重機進入をさせるためには、工事用道路を盛土で作成するしかなかった。

当初の設計では、盛土材が約2,800m3、工事用道路作成の予定で2週間を想定していた。しかし、現場の状況を見た当時の所長は迷わずに設計変更を発注者に申し出た。所長は、工事用道路の作成中に一刻も早く下に降りて、大型土嚢を設置しなければ、雨が降り、水位が上がった時に大量の盛土材が流されてしまうことを懸念していた。盛土材が流されることによって、設計よりも多くの盛土材が必要になる可能性もあるため、コスト的にも無駄であると指摘したのだ。

そこで、所長はルート変更を要求した。当初よりも短いルートで施工箇所までたどり着けるような施工方法を提案したのだ。所長の案でいけば、当初よりも1週間工事用道路の作成期間を短縮することができる。施工箇所に行くまでに6日あればたどり着き、大型土嚢を設置することで、河川の水による盛土材の流出対策を一刻も早く行おうという意図である。


すぐに問題に対処する大切さ

所長の言っていることは理にかなっていた。確かに川の流速は見るからに速く、次に雨が降れば、大型土嚢がなければ、盛土材を投入しても流されることは目に見えていた。

しかし、土地の持ち主の問題と、設計の問題が立ちはだかった。それでも、所長の対応は驚くほど早かった。土地の問題は、工事用道路のルートを変更した際に、土地の地権者が違う場所に盛土材を投入する必要があったため、すぐに地権者を調べて、交渉を行った。土地の地権者も最初は顔をしかめていたが、所長がすかさず借地料を毎月支払うことを伝えると、二つ返事で了承してくれた。

また、ルート変更で盛土材の数量が減ることによる、工事用道路の安定勾配や計算、具体的根拠を発注者に示す必要もあった。ここでも、所長は当然のようにすぐに外部設計コンサルタントを呼び、自分の作成したルートに、具体的な安定勾配や計算上問題ないところで出来る限り近づけてくれと、外注した。コンサルを使って、ルート変更の必要性を実証したのだ。

工事をいかにシンプルに、簡単にできるか

結果的に、この現場では工期を1ヶ月も短縮した。最初の工事用道路作成の短縮がそのまま成果につながったと形だ。

所長は新米だった私に「工事っていうのは、いかに手間を減らして、シンプルにしてしまうかが重要。同じ結果が得られるのなら、足し算だけで済む方法と、複雑な割り算をしなければいけない方法のどっちを選ぶよ?」と問いかけてきた。

そして、「工事をシンプルにするためのお金は、準備の費用のようなもの、ここをケチって複雑なやり方をしたところで、管理も面倒くさくなるだけ。結果的に、不経済になることを知っておいたほうが良い」と付け足した。

現場監督には、高い管理能力も一つの求められるスキルだろう。しかし、それ以上に、現場を予測し、どれだけ慌てずに工事を簡単にすることができるかが大切かが、よく理解できた現場だった。

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