盛土の設計
先日、ある道路の盛土の設計に関わった。その道路は盛土高が高く、基礎地盤が軟弱であり、安定検討を行ったのだが、その条件設定や検討に時間と手間を要した。
道路土工 盛土工指針や軟弱地盤対策工指針などを参考にして、様々な事柄を検討し設計を進めていた。盛土材の物性値は、道路土工で示されている単位体積重量やせん断抵抗角、粘着力を活用した。
法面勾配や盛土高も、道路土工で示されている標準的な値を想定。ただし、盛土の全体高さがかなりあるため、盛土の安定検討や基礎地盤の検討が必要となった。
設計では当然の考え方だが、盛土材料はすべて同じ物性値をもっているものと仮定して、様々な検討を行い設計を進める。
円弧すべり計算で安全率を求めたり、地震時で応答解析を行って変形量を算出したりという中では、すべて同じせん断抵抗角や粘着力を用いて計算し、結果を分析する。ところがあるとき、ふとこんな疑問が湧いた。
「盛土の設計で想定していることを、施工ではどう確認しているのだろうか?」
盛土施工では締固めを管理
盛土の施工では、品質管理項目として締固め管理がある。よく用いられているのがRI法ではないだろうか。土中で放射線を照射し、透過減衰を利用して測定する。締固め度や含水比などを計測し、管理値を満足しているかどうかをチェックする。
一方で、設計で想定している内容を、施工で満足しているかどうかを検証する術はあるのだろうか。設計と施工を結びつけるものがあるかどうかというと、私個人の技術力・知識が不足しているからだろうが、これといったものが思い浮かばない。
施工では、締固め曲線における含水比と乾燥密度との関係において、乾燥密度の管理基準値を定め、管理基準値を満足する含水比であれば所定の品質を確保していると判断することとされている(道路土工 盛土工指針)。
しかし、設計では湿潤状態の単位体積重量を用いて設計を行うことが一般的であり、ここですでに乖離が生じていることになる。ただし、単位体積重量と乾燥密度とは関係があるので、単位体積重量から乾燥密度を求めることは可能だ。そのときの含水比を計測することで、指標とすることは可能と思われる。
ただし、盛土施工では、常に同じ物性値の土を使用できるわけではない。設計では何かしらの物性値を決めて検討・設計しているが、実際にはバラつきがある。なので、締固め曲線にある含水比と乾燥密度との関係性を用いて、品質管理に用いている。
設計と施工には乖離がある
難しい問題なのだが、現状では設計と施工との間に乖離があるのは否めない。
しかし、バラつきのある物性値を設計ですべて網羅することは難しいし、現実的ではない。かといって、まったくの均一な物性値をもった材料を確保することも、まず現実には不可能である。
とはいえ、このまま設計・工事を進めていっても乖離は埋まらない。もしかすると、もっともっと離れていくことも考えられる。おそらくは研究段階なのだろうと思われるが、少しでも乖離がなくなることを期待したい。
設計と施工の乖離があると、どうしても「設計が悪い」とか「施工がまずい」といった感情論が生まれてしまう。設計があるからこそ施工ができるし、施工事例の積み重ねが設計の品質向上につながると、私は勝手に考えている。
同じ業界の技術者・技能者なのだから、協力できるところは協力し合って、よいモノを造っていきたい。