大東建託株式会社 建築営業管理部の山下知次長(右)、広報部の新宮聖徳課長(左)

大東建託株式会社 建築営業管理部の山下知次長(右)、広報部の新宮聖徳課長(左)

大東建託、サブリース事業の正当性を語る

社会問題となったサブリースの是非

サブリース運営会社が賃貸住宅1棟や、部屋ごとに一括して借り上げし、オーナーへ建物や部屋の賃料収入を保証する契約方法であるサブリース。しかし、最近ではトラブルも発生し、一部のサブリース運営会社からの「何もしなくても家賃が入ってくる」などのトークで契約したオーナーは、思わぬ家賃減額や契約を容易に解除できない落とし穴にはまった。特に「かぼちゃの馬車事件」はずさんな経営により、多くの不動産投資家に被害を与え、社会問題となった。

そこで国土交通省は、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(サブリース新法)を施行するとともに、「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(以下、ガイドライン)を策定し、規制を強化した。

サブリース事業を行う大東建託株式会社は、ガイドラインに即した広告物、WEB開示情報などを見直し、リスク説明資料を新たに作成。パンフレットには「説明品質向上宣言」マークを添付、「外部通報窓口」を設置するなど対応を進めている。

今回、同社の建築営業管理部の山下知次長、広報部の新宮聖徳課長が、サブリース事業の正当性を語った。

サブリース事業が普及したワケ

――不動産業界でここまでサブリース事業が普及した理由とは。

山下知氏(以下、山下) 国土交通省の調査では、管理会社の委託やサブリース事業で行っている家主は8割以上となり、残りの2割が自主管理です。

昔は、農家や地主が自分の敷地にアパートを建設し、学生を住まわせていた形態もありました。当時、「木賃アパート」も多く、自主管理もそれなりに多かったのですが、専業農家も減少するという時代背景もあり、働きながら不動産賃貸業を行うことが増えました。

そのような中、自分がアパートを清掃し、家賃の取り立てを行うことは煩わしいということで、不動産管理会社に委託する家主が8割に及びました。その中でも、サブリース方式を採用することがオーナー様にとって負担が少ないことで、普及が進んだと理解しています。

――土地を持っているサラリーマンが、副業として不動産賃貸業を行うことは大変ですね。

新宮聖徳氏(以下、新宮) 一番大変なのは、家賃の回収ですね。また、オーナー様にもよりますが、そもそもアパートを建築する、入居者を募集する、契約をするなど、すべての業務が大変なわけです。土地を保有しているサラリーマンが兼業でかつ自主管理での運営はかなり負担がかかりますし、不動産賃貸業のニーズが拡大している中においては、サブリース事業はとても有益な仕組みです。

当社が提供する一括借上(サブリース)は、オーナー様の賃貸建物を当社グループの大東建託パートナーズ株式会社がお借りして、当社グループが各入居者様へ部屋をお貸しする転貸方式で、当社での家賃滞納率は約0.099%です。

契約の規約に則り、建物の維持管理を行い、その内容をオーナー様にご報告しています。つまり、オーナー様と入居者様は直接のやりとりがありません。入居者様からのお問い合わせやクレームもすべて当社に入ってきます。

――人口減少している中、なぜアパート需要が増加したのでしょうか。

山下 外国人労働者や少子高齢化による単身世帯が増加するなど、社会情勢が変化したことにあります。賃貸住宅の需要は増えていきましたが、もしサブリース事業が進化・発展を遂げていなければ、恐らくこの需要には対応できなかったでしょう。

今は日本全国で外国人の受け入れが寛容になっています。当社の協力会社も外国人技能実習生を受け入れており、現場で活躍されていますが、この傾向はこれからも続くと予測しています。

新宮 日本においては人口が減少傾向に転じていますが、賃貸住宅の需要を考える際は、世帯が主な指標となります。その世帯についてはまだ減少に転じてはいませんので、急激に需要がなくなることは考えにくいのです。

サブリースの問題は「営業マンのオーバートーク」

――一部のサブリース事業会社では、夜遅くに訪問し強引な勧誘があったり、家賃の減額については小さく記載したり、誇大な広告を掲載したりと、様々な問題点があります。特に破産した株式会社スマートデイズによる「かぼちゃの馬車事件」では、多くの不動産投資家が被害に遭った。

山下 一部のサブリース事業会社による強引な勧誘などの問題もあり、サブリースを規制するため、サブリース新法が制定された背景があります。

しかし、当社では昔からリスクについてはお客様にしっかりと説明をしてきており、そのうえでオーナー様からご信頼、ご用命をいただいております。問題が発生する理由には、約3,000人に及ぶ営業マンとお客様とのやりとりの中で、2つのパターンがあると感じています。

一つは、営業マンが正確に説明しているつもりでも、お客様が理解されていないことが確認できていなかったケース。もう一つは、営業マンによる重要な項目の説明が不十分なことが原因となってしまっているケースがあるのではないかと思っています。

当社では、リスクの説明本を作成し、営業マン、お客様双方に早い段階から、「このようなリスクがあります」と詳細に説明しています。さらに、誤解を受けないようなプレゼンテーションの方法、社員教育の徹底など、コンプライアンス強化を含めて、より丁寧にリスク説明をしております。

大東建託グループが運営するサブリース物件

新宮 サブリース新法ができた背景には、サブリースの仕組みよりも、事業会社のモラルの問題が大きかったと考えています。サブリースの仕組み自体に、大きな欠陥があるとは思えません。

繰り返しになりますが、当社では新法制定前からお客さまへのリスクの説明に関して、しっかりと営業マンに教育をしてきました。また、もしお客様を前にして、「リスクなんて何にもないんです。寝ててもお金が入って来る仕組みなんですよ」というオーバートークで、契約に至ってしまったとします。

しかし、その後、当社支店の事務系の社員が営業マンとは別にオーナー様を訪問し、「営業からこのようなリスクがあることの説明を受けましたか?」と確認させていただき、双方の認識に相違がないことを踏まえたうえで署名・捺印をしていただくという取り組みをずっと前から行ってきました。

サブリース新法制定前から、サブリース業界では営業マンのオーバートークによる問題点があったため、当社としてはこの問題に粛々とあたってきました。

サブリース新法 / 国土交通省


「10年家賃固定制度」の考え方

――報道によると、「家賃がなぜこれだけ下がるのか」とショックを受けるオーナーさんもいるが。

山下 当社は10年家賃固定で、この期間は家賃が下がりませんが、それ以降は築年数の経過による建物の状態や相場の家賃に合わせ、多くの建物で家賃は下がります。ですが、これはパンフレットや家賃シミュレーション上で説明しています。

当社の家賃固定期間は業界で最も長いと言われていますので、10年後の下落率でご意見いただくこともありますが、現体制では10年家賃固定を短縮することを検討しておりませんので、10年固定の優位性を訴えていきたいと考えています。

新宮 アパートは経年劣化しますから、家賃は1年に1%下がることはよく言われます。単純に考えると、10年後10%下がる可能性があります。下がることはオーナー様も想定されていますが、「こんなに下がるの?」と驚かれるのでしょう。他社さんの例では、2年更新で期間が短いから、家賃は下がっていくものという意識があると思います。

ただ、当社では安心してオーナー様に不動産賃貸業を続けていただくため、10年は家賃を下げないという設定をしております。

選ばれるサブリース会社とは

――国交省の新法公布やガイドライン制定についてなにかコメントを。

山下 当社では今後もお客様からご信頼いただけるよう、取り組んでいきます。今後、サブリース新法を遵守しない会社は罰則の対象になりますから、業界全体から見てもプラスだと思います。

――新法が公布され、ガイドラインが制定されましたが、御社の対応は。

新宮 サブリース新法では誇大広告や不当な勧誘等の禁止等が定められており、ガイドラインにより説明品質向上が求められております。当社はパンフレット等の見直しを行い、リスク説明のタイミングやポイントをまとめたガイドラインを全社で共有し、さらには営業向けのオンライン研修やテレビ会議を実施しています。

続いて、誇大広告や不当勧誘などのサブリース新法に違反する行為について、通報・相談いただくための「外部通報窓口」を設置しております。サブリース新法の狙いは、オーナー様が不利益を被らないためですので、オーナー様からのお声が入りやすいよう、「外部通報窓口」を設置し、なにか通報があれば、真摯に取り組み問題解決を図っていきます。

サブリースを扱っている最大手企業として、サブリース新法が公布されたことを重く受け止めておりますが、業界全体のイメージアップに繋がるいい機会であるとも捉えています。当社もガイドラインに則り見直した点もいくつかありましたので、広く周知していきたいと考えています。

サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン / 国土交通省

――「外部通報窓口」には、何か通報がありましたか?

新宮 新法違反の通報は、今のところないですね。当社は一方的にオーナー様と契約を解除したこともありませんし、逆にオーナー様から解約したいというご希望があればそれに沿っています。初年度からの10年家賃を固定していますので、真摯に対応しています。

山下 ただ、これからの課題は末端の営業マンまで、正確に周知していくことにあり、教育・指導に力を入れて他社との差別化を図り、より一層、選ばれるサブリース会社として存在感を示していきたいと考えております。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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