JFEエンジ・ドボジョシリーズ第2弾【藤井さん】
JFEエンジニアリング(以下JFEエンジ)ドボジョシリーズの2回目は、現在、ミャンマーでの橋梁建設プロジェクトに携わる藤井美久さんを取り上げる。藤井さんは、シリーズ第1弾で紹介した戸部さんの同じ大学の3年先輩に当たる。
「海外で橋を架ける」と聞くと、それだけでロマンを感じるが、慣れない海外での仕事には、いろいろな苦労も伴うだろうとも想像される。実際のところはどうなのか。その率直なところを聞いてみた。(2020年に取材)
姉の影響で土木の世界へ
――土木に興味を持ったきっかけはなんだったのですか?
藤井さん 姉が関東にある高専で土木を勉強していて、その姉に土木をススメられたのがきっかけです。それで私も同じ高専に入りました。今に至るまで、土木の面白さを感じ続けています。
――専科ではどのような研究を?
藤井さん 東日本大震災が発生したときだったこともあり、避難しやすいまちづくりに関する研究をしていました。高専を卒業後、神奈川県にある4年制大学に編入しました。学部で長大橋が受ける風の影響に関する研究をした後、大学院では地震によるトラス橋への影響に関する研究をしました。実際に観測された地震データを基に、パソコン上で構造物の挙動の解析などを行っていました。
――大学に編入した理由は?
藤井さん 土木構造物の風洞に興味を持っていたので、風洞の研究で有名な大学に編入しました。
「発展途上国で橋に携わる仕事をしたい」で、JFEエンジ入り
――就活はどんな感じでしたか?
藤井さん 鋼橋の設計、製作、施工という一連の主なプロセスをすべて経験できるということで、JFEエンジを選びました。国内だけでなく、海外でも働くチャンスがあるのも魅力でした。「発展途上国で橋に携わる仕事をしたい」というのが一番の希望でした。
――「発展途上国で橋に携わりたい」と思ったのはなぜですか?
藤井さん 大学のプログラムで発展途上国に行く機会があったのですが、自分と年の変わらない若者が物乞いをしているのを目の当たりにして、衝撃を受けました。大学で学んだことを活かして、「発展途上国に貢献したい」という思いが芽生え、「橋をつくることで自分に貢献できることはないか」と考えるようになったからです。
――JFEエンジではこれまでどのようなお仕事を?
藤井さん 今年で入社5年目です。1年目〜4年目までは国内の橋梁、照明鉄塔の現場に配属されました。最初の現場は、神奈川県内の高速道路の現場でした。次が宮城県内の橋の架替えの現場で、その後、淡路島にある野球場の照明鉄塔の現場、群馬県内の地域高規格道路の現場にも行きました。4年目の途中からミャンマーに赴任しています。
ミャンマー政府の8割は女性技術者
――ミャンマーではどのようなお仕事を?
藤井さん ヤンゴンの西200kmほどのところにパテインという都市があるのですが、JFEエンジは、現地建設省が発注施工するパテイン橋の工事の橋桁製作業務と架設計画の策定、SVの派遣業務を請け負っています。
私はSVの一員として現地へ足を運び、現地スタッフへの技術的な指導、架設計画の審議のほか、JFEエンジとしての現地工事の受注に向けて、いろいろと動いています。ミャンマーに駐在する日本人のスタッフは10名程度いますが、SVは私を含め3名ほどです。
ミャンマーのパテイン橋建設現場で打ち合わせする藤井さん
――日本人の女性スタッフは藤井さんだけですか?
藤井さん そうです。ただ、現地のエンジニアは8割が女性です。日本とはだいぶ事情が異なっています。ミャンマーでは、大学進学者は女性の割合が高く、エンジニアなどの職業の多くは女性です。
――お国柄ですねえ。現地スタッフとのコミュニケーションは英語ですか?
藤井さん そうですね。
――現地で新たに発見したことはありますか?
藤井さん ミャンマーには、若いエンジニアが多いんです。自分と同じくらいの年のエンジニアがリーダーとして、プロジェクトを引っ張っていたりします。そういう姿を見て、刺激を受けています。
――現地で大変なことはありますか?
藤井さん 自分の知識不足を痛感しています。私のメインの仕事は、現地スタッフへの指導なのですが、なにを教えて良いかわからないことがあります。日々勉強して、考えるようにしています。
他人だけでなく、自分にも優しい文化
――仕事の上での文化の違いを感じることは?
藤井さん それはスゴく感じます。細かく「これをやって」と指示をすれば、的確に実行してくれますが、次から自分で考えてやってもらいたいと思っているところも、指示がないと動かないときがあります。ミャンマーには他人に優しい文化がありますので、外国からのSVに気を遣いすぎているのかもしれません。
――日本と同じ施工管理をするよう指導しているのですか。
藤井さん 基本的には日本と同じように施工したいという思いはあるのですが、資材などが限られているので、現地だけでできるやり方も提案する必要があります。例えば、足場一つとっても、日本のモノはしっかりしていますが、お金もかかるので、同じモノをミャンマーで組むわけにはいきません。現地の資材を使いながら、しっかり安全管理できるやり方を指導しています。
――進捗はどんな感じですか?
藤井さん この年末に無事完成しました。
2020年末に完成したパテイン橋
――終わったらどうするのですか?
藤井さん 他の受注案件もあるので、そちらを担当することになると思います。私の基本的なミッションは、ミャンマーでの事業継続なので。JFEエンジでは、現地で橋梁以外にも港湾施設工事や補強土壁工事、レール溶接機の販売も実施しています。
女性技術者同士で協力していかないと
――JFEには後輩のドボジョも増えているようですが。
藤井さん 今の部署では、女性の技術者としては私の年次が一番上なのですが、社内の女性技術者同士で協力して、誰もが活躍できる場を整えていく必要があると思っています。女性技術者が自分の思いを通すためにも、悩みなどを共有できる環境をつくっていきたいと思って、努力しています。
それぞれの現場に出ていることが多いので、一箇所に集まる機会がなかなかありません。なんとか理由をつけて女性同士で集まるようにしたり、オンラインでやりとりしたり、定期的にそういう場を設けるようにしています。