一長一短、ゼネコンとプラント業者の重点ポイント

ゼネコンは溶接職人を信用してない?

プラント建設は色んな常識の集合体

本職は建築の設計、施工図、現場管理だ。だが、今は工業団地の中のプラント建設現場で安全専任として関わっている。やや畑違いだが、別の角度から建築に関わることにより、新たな発見などもあり、色々と日々勉強させて貰っている。

今私の所属してる会社は、電気の計装関係がメインの会社で、建築の仕事はほとんどない。電気の配線、配管等がメインの仕事となるので、扱う資材や材料も聞きなれない名前が多く、新しい知識を随分覚える必要があった。

プラント工事はいくつかの建屋からなり、電気室を含む建屋こそ外壁で閉ざされてるものの、一般的なプラント建設は、鉄骨構造体がむき出しの中に機械設備機器の配管や配線が縦横に走っている。良く言えば、機能美の高い建築と言える。豪雪地帯や極寒の土地にもプラントでは、吹雪除けの外壁をつけたり、鉄骨の表面を鉄板の外壁で塞いだ建物もあるようだが。

いずれにせよ、プラント建屋の中では、火を使って燃料を燃焼させ、エネルギーを造り出す故に、建屋は空気を大量に必要とし、更に有毒ガスの発生などに配慮し、完全に密封されたモノにはなっていない。

そのため、一般的な鉄骨造とプラントは施工の面でもまるで異なっている。

基本的には、プラント建設の基礎のアンカー設置までをゼネコンが請け負い、そこから上の鉄骨建て方以降は、全てプラント業者が施工する。

もう少し細かく分類すると、プラント建屋の中でも通常の建築に最も近い、電気室が入る建屋や管理棟などは建築ゼネコンが請け負う。建屋の中を見ると、細かな部分がプラント業者とゼネコンでは異なることが見て取れる。

このように、プラント建設では様々な業者が入り乱れて施工するため、現場でそれぞれが持っている常識の違いがぶつかるときがある。

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ゼネコンとプラント業者の重要ポイントの違い

一番の違いは溶接に対する考え方の違いだろう。一言で言えば、ゼネコンの人間は溶接というものをあまり信用していない。

かくいう私も昔はそうだった。が、プラント建設に関わる様になり、様々な溶接職人から色々な話を聞いてる内に、考えが改まっていった。

私が以前に関わった、特別な二重球形タンクの溶接作業の現場にいた溶接職人は、造船所での鉄板溶接の経験があるような職人だった。最近では、極秘扱いの潜水艦の造船における鉄板溶接に関わっているとも聞いた。

良く考えてみれば、潜水艦の外郭の鉄板も全て溶接作業で覆われている訳で、それこそ完璧に完全溶け込み溶接が出来なければ、何百メートルも潜水し、水圧に耐えられないだろう。

そんなスゴ腕の職人たちが入っている現場だったが、腕のある職人がゆえ、当然溶接後の非破壊検査において、溶接が不完全な箇所は一つも見受けられなかったのだ。こうした溶接を目の当たりにしているので、溶接の品質を信用しているプラント関係者が多いように思う。

それに反し、建築の現場に来る溶接職人は、プラント現場に来る職人と比べれば、溶接の品質が落ちるケースも少なくない。というのも、プラントと比べれば、建築ではそこまで品質を要求されないからだと思う。よって現状では、建築現場では接続部は溶接ではなくボルトナットで締め付けて結ぶのが常識だろう。

お互いの良い所を取り入れる

そんな考え方の異なる業者が一緒に仕事するとどうなるか?

例えば、ゼネコンが請け負った建屋の鉄骨階段の手摺は、当然のごとく組み立て式で、手摺の天端は途切れ途切れになっている。

それに対し、プラント業者が鉄骨階段の手摺を取り付けると、全てを溶接で繋ぐため、途切れ途切れにはならない。だが、鉄骨構造体の精度があまり良くないために、一本の手摺が途中で合わず、建築の人間から見るとその仕上がりは綺麗ではない。

鉄骨構造体の精度がもっと良ければ、鉄骨階段、手摺、床の縞鋼板やグレーチングの段差なども問題なく収まるハズだが、残念ながらプラント業者はそこまでの完成精度は追及していない。

あちらを立てればこちらが立たずだが、プラント業者がもう少し鉄骨建て方の際に精度を上げれば、結果としてプラントの品質も一気に上昇するだろう。

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アジア、アフリカなど海外の建築現場で長年、施工管理に従事している。世界中で対日感情が良好なのは、先人たちの積み重ねである。日本人として恥ずかしくない技術者でいたい。
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