展示会業界について
展示会と言えば代表するものとして、東京モーターショーや東京ゲームショーなどの大きな展示会から、○○EXPO、○○展など、他種多様な展示会が存在します。
行ったことのある人はイメージつくかと思いますが、企業のブースが建っていて、それぞれが自社の新製品や新サービスなど、あとは会社自体の取り組みなど、展示している内容は様々です。
有名な展示会場としては、東京ビックサイトや幕張メッセ、東京国際フォーラム、パシフィコ横浜などが関東では代表的です。大阪だとインテックス大阪、その他の主要都市ではポートメッセなごや、マリンメッセ福岡や夢メッセみやぎなどがありますね。
展示会業界で有名な施工屋さんは、シミズオクトやトーガシ、博展、ムラヤマ、TSP太陽などのイベントを得意とする会社さんから、業界大手の乃村工藝社や丹青社、モーターショーだと電通ライブも関わってきますね。
展示会業界での繁忙期は、大体秋頃がモーターショーやゲームショー、シーテックなどがあって大きなピークを迎えます。そして春にもう一回、就活イベントや企業説明会、株主総会などでピークが来て、5〜8月は落ち着いてるという感じなのが一般的かと思います。
それら展示会の場所を借りて、各企業がブースを建てていくのですが、ブースの大きさの単位を1小間(3m×3m)と言います。東京モーターショーで出展してるトヨタや日産などの大企業だと、30小間以上ある大きなブースになり、就活イベントなどでは、1企業2小間と決められている場合もあります。
そして、そのブースを施工するのが、トラスやオクタパネルといったシステム部材です。施工性も高く、多くの展示会で構造体として活用されていて、なくてはならない存在です。
展示会の施工現場のリアル
さて、前置きが長くなりましたが展示会の施工について語ります。
規模によって異なりますが、大体最初は建築工事と同じで墨出しから入ります。しかし、既存施設の床に対して墨をうつわけにはいかないので、水糸を使って墨出しをします。
この墨出しが命で、間違えてしまうと全ての工程に影響してしまうので、始まるまでの段取りは神経を張り巡らせています。
聞いた話ですが、過去に墨出しの向きを180度間違えてしまった人がいたみたいで、途中まで建てていたトラスをレッカーで吊って回転させ、なんとか納めたという話を先輩から聞いたことがあります。
ベテランの先輩でも展示会の現場に関しては、前日の夜は眠れないほどプレッシャーのかかる現場だそうです。なぜなら、通常の建築工事や内装工事と違い、日数ではなく時間で工程を管理しているからです。
1時間の遅れが後の工程に大きく影響することもあるので、現場監督へかかる責任は大きな建築現場とほとんど変わらないと思っています。
私自身も2日間徹夜で現場に張り付けで、オープン10分前まで掃除をしていた経験もあります。あの時は痺れました…。
とにかく主役はお客さんの展示品なのですが、展示をするための治具や家具を特注で作ります。大体木工が多いですが、その納まりをミスると終わりです。
そのような治具、家具を作るためにポンチ絵(私達はマンガと呼んでました)という手書きの発注図面を描きます。
このような感じです。恥ずかしいくらいに下手くそすぎて、正直載せるのをためらいました…。
他では味わえないスピード感と現場の一体感
私が入社した時にいた先輩たちは、そのポンチ絵が上手い人だらけでした。
木工だけでなく、モニターをトラスに引っ掛けるための金物の図面まで手書きで描いてしまうような人たちで、早く先輩たちに追いつきたくて暇な時はトレース作業とかやってました。
そして、私たち現場監督の発注を受ける協力会社さんたちもまたその道のプロなので、納まりから現場の指揮の仕方までスピード感のある現場を目の当たりにし、1年目の時はただただ突っ立ってることしかできず、泣いた時もあります。
でも辛い思い出ばかりではなく、ご褒美もありました。施工が終わればひと段落で、会期中は関係者パスを貰えて、自由に展示会を楽しむことができます。
東京ゲームショーの現場を担当した時は、各ブースに有名人のゲストを呼ぶ時もあるので、裏のバックヤードを歩いてたらキングカズさんとすれ違ったこともありました。
また、とあるゲームの演出でセクシー女優さんがゲーム内に出てくるということで、有名なセクシー女優さんが某ブースの1コーナーにいる時があったので、大工のおじさんが「高村くん、ちょっと観に行こうや!」と言って一緒に写真を撮りに行き、心の中で「いつもお世話になってます」と呟いたのは今でも忘れられません(笑)。
現在はコロナの影響で、展示会が中止になったりすることが多いですが、しっかりと感染対策をして開催してるところもあります。あとはオンラインに移行してたり。
オンライン展示会は一回体験したことがありますが、どうなんでしょう…?リアルの場の価値を知ってる身からしたら、メリットをあんまり感じられなかったのが正直なところです。また展示会が普通に開かれる世の中が来ることを心から願っています。
展示会の現場にしかないあのスピード感と現場の一体感は、普通の建築工事や内装工事では味わうことができないと思います。計画段階で変更も多いし、納まりを考えるのも本当に大変だし、それでもどうやったらその空間を完成させることができるかという1つの目標に向かって、多くの職種の人が集結している仕事の感覚は、なかなか味わえないと思います。
もう高所作業車の運転できるかわからないけど、またいつか展示会場で高所作業車に乗ってブースを眺めたいなあ(笑)。なんだかあまりまとまってる気がしませんが、色んな思い出があるので、また思い出したら書こうと思います。
※この記事は、『展示会の施工現場のリアル』の記事を再編集したものです。