電気設備会社が1年のテレワークを経て出した結論

電気設備会社が1年のテレワークを経て出した結論

うちの会社でテレワークなんて無理でしょ

最初の緊急事態宣言が発令されたあの日、新型コロナウイルスがここまで世界にダメージを与えるなんて、誰が予測しただろうか。

うちの会社の社員たちも、その頃はまだ「緊急事態」をそれほど深刻には捉えていなかった。

私を含むごく一部の社員は、家族や自身に基礎疾患があるなどの理由で、若干神経質になっていたが、その他の社員は、新型コロナウイルスをどこか対岸の火事のように思っていたのではないかと思う。

だから、いくら小池都知事が『テレワークをしましょう!』と声高に呼びかけても、うちの会社の人たちも例外なく「無理でしょ?この会社じゃ」と思っていたに違いない。

助成金上限250万、助成率10/10てオイシ過ぎない?

1年前、小池都知事の会見を見ていたある日。私の耳にこんな言葉が入ってきた。

「東京都のテレワーク助成金にたくさんのご応募を頂いておりますが、~」

・・・ん?え?今なんて?助成金??うちの会社でも、もらえるのかしら?

期間限定や数量限定などにはすこぶる敏感な、主婦でもある私。お得感満載のワードに惹かれて、すかさずネットでググってみると、助成金の募集要項が色々と出てきた。

小池都知事が会見で語っていた東京都の『事業継続緊急対策(テレワーク)助成金』は、助成金の上限が250万円、助成率10分の10と書いてある。

・・・ええええ~!!10分の10?全額じゃん!!

最高250万円分のITツールがいただけちゃうってことだよね!?それ、オイシ過ぎない!?これは応募するしかないでしょう!急いで準備をしなくては!!(ワクワクが止まらない)


でも、建設業界で「テレワーク」って何やるの?

ワクワクな気持ちを一旦落ち着かせ、冷静に考えてみた。

そもそも、建設業界で”100%のテレワーク”は正直難しいと思う。現場に赴かないと始まらない仕事だからだ。

施工管理アプリを使って、デバイスのモニターを見ながら現場に遠隔指示を・・・なんて話も最近聞いたりするが、クライアントの監督員ならともかく、うちの会社の人たちにそれが許されるとは思えない。

じゃあ、結局うちの会社で「テレワーク」は無理ということか?

答えは、NOだ。

理由は、施工管理のお仕事は、現場が100%ではないからだ。

クライアントとの打ち合わせや積算、工事図面の作成、資材注文等々、現場以外の仕事もたくさんある。それらは別に、会社に居なくてもできる仕事だ。スマホと、積算や作図用のアプリの入ったPCがあれば、自宅でも問題なく仕事ができる。

また、私が常々疑問に思っていたことがある。

それは、外現場の人たちが、会社に来て出勤と退勤の打刻をする必要があるのか?ということだ。

会社と現場が近いならまだしも、どうしてわざわざ会社に来てタイムカードを押し、遠くの現場に行き、帰って来てデスクワークをしているのか?

しかも、巷はコロナ禍だ。移動が増えるということは、感染リスクがあがるということでもある。ただでさえ少ない人数で多くの業務をこなしているわが社にとって、1人の感染は会社の危機にもつながる。

私は前々から密かに思っていた。「そこは直行直帰でいいじゃない。デスクワークは自宅でしてよ!」と。

善は急げ!助成金ゲットまでの道のり

こうなったら善は急げだ。さっそく私は上司に相談し、社長の承諾を得てもらうことにした。いつもはPC1台購入するのに、あれやこれやと理由を書き連ね、社長の承諾を得るのに約3か月は掛かっていた。

たが、さすがに「無料でもらえる」だけあって、今回は「いいんじゃない?」の一言が早かった。いや、待てよ。「無料だから・・・」ではなく、「社員の健康を守るためだから」ですよね?社長。

肝心なのは、ここからだ。今回説得しなくてはならないのは、社長ではなく、助成金申請の提出先だ。申請が通らなければ全てが水の泡になる。何とか「わが社におけるテレワーク環境の構築」をしなくては・・・。

まずは、必要機器の書き出しから取り掛かった。

1.ノートPC

これはマスト!でも欲張って必要数以上は申請しない。あとで追及されると困るから・・・。

2.スマホ(現ガラケー使用者用)

自分の会社用スマホもついでに申請。事務職はスマホ要らんでしょ?という意識は、この際変えていただこう。

次に、クラウド環境の構築をイメージする。

1.Office 365を契約

1人あたり1TBのOnedrive(クラウド型データ保存ツール)が使えるのは嬉しい。会社PCと自宅ノートPCのデータ共有と、Office各種アプリの共有に使用。

2.KING OF TIME(クラウド型勤怠管理システム)を契約

これで不毛なタイムカード打刻のための出社にサヨナラだ。

3.Microsoft Teamsのインストール

  • 社員の業務予定表を共有:社員の業務見える化が可能に
  • お知らせデータのアップロード:事務所周辺エリアのコロナ感染者情報を共有
  • チャットツールによる個別連絡:「○○さーん、出勤打刻忘れてますよ~」などの連絡がスムーズに
  • Web会議も利用可能:今年の忘年会はリモートか?

これらに、テレワークでの必須項目として明記されているセキュリティツールと、在宅での図面作成業務に必要なアプリケーションを追加して・・・、うむ。何とか形になりそうだ。

お役所案件だけあって必要書類は細かく指定されていて、揃えるのはそれなりに大変だったけれど、どうにか期限までに申請が完了。かくして無事に、助成金の「支給決定通知書」の通知をいただくことができた。

実際に助成金がもらえるのは、申請したツールを使用したテレワークの後(実績報告書提出後)というのが不安なところではあったが、社長から「とにかく準備を始めたのだからやってみてください」という有難いお言葉をいただき、わが社なりの「テレワーク」を開始、現在に至る。(助成金は無事、満額受給済み)


テレワークで生まれた「副産物」

「テレワーク」を開始し、1年経った今。果たして、わが社でテレワークは継続できているのか?

結論、100%ではないけれど、テレワークはできている。

コロナ禍において、新型コロナウイルスに対する「温度差」が生じていることは、誰もが感じていると思う。「自分は感染するわけない」と思っている人と、「自分は感染するかもしれない」と思っている人とでは生活の仕方が全く違う。

「感染するわけない」と思っている人は、いくらテレワークの環境を整えたところで、これまでと何ら変わりない生活を続けているし、「感染するかもしれない」と思っている人は、現場のない日は在宅勤務でデスクワークをし、外出も極力控えるような生活をしている。

ただ、テレワークの環境を整えたことによって、万が一社員の誰かが感染し、他の社員が自宅待機の状態になったとしても在宅勤務が可能な状態にはなっているし、在宅勤務をしている社員と、していない社員との情報共有がクラウド上で可能になっているという点においては、「テレワークはできている」と言って良いのではないか?と私は思っている。

さらに、テレワークをすることによっての「副産物」も生まれた。少しずつだが「ペーパーレス化」が進んだことだ。

毎週の業務報告書や立替経費の申請書、社員への回覧書類など、以前は紙に印刷して確認・回覧していた物を、担当が会社に居なくてもできるようにと、現在はデータによるクラウド上での確認となっている。

事務・経理書類の保管も紙は廃止し、データでの保存に変えている。「うちの会社は何でこんなにコピー用紙を使うんだ!」と怒鳴っていた、今は亡き会長にもご報告したいくらいだ。

コロナが収束したら、テレワークも終了?

最初に書いたように、基本的にこの業界において、100%のテレワークは不可能だと思っている。

だから、現在テレワークをしていない社員に言わせると、「コロナが収まったら在宅勤務なんてなくしていいんですよね?」になるらしい。

その言葉の裏には、「在宅勤務なんて言いながら、おおかた家でテレビでも見てるんだろう?」という考えが見え隠れしているから、朝から晩まで真面目にデスクワークしている私には少々腹立たしくも思えるが、やはり現場メインの方々には、「直ぐに現場対応できる状況」であることが最重要であるということも理解できる。

そして実を言うと、こうしてテレワークを推進している私は、誰よりテレワークをしてはいけない人だという残念な事実に、社員は気が付いていない。(気が付かないふりをしてくれているのかもしれないが・・・。)

色々な業務をやってはいるけれど、1つ前の記事『お見合いも採用も「ご縁」。建設業界の中小企業に”人材確保のチャンス”はあるのか?』に書いた通り、私の本業は「お留守番 兼 経理・事務」だ。

今その肝心な「お留守番」ができていないのだ・・・。

「kiyolaさんの電話応対の声、評判いいんだよね~。本当にありがたく思っているよ」と以前言ってくださっていた社長、ごめんなさい。コロナが収まったら、私は本業に戻ります!

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