電気に関する素朴な疑問
ここ一年ほど、北関東のプラント工事に安全専任として関わっている。現場は最後の詰めに入ったところだ。
私の所属する会社では、大きなパネル類の荷揚げはほぼ終了しているが、やっとラック類の取り付けが7割ほど完了しただけで、これから本格的なケーブル敷設工事が始まろうとしている。
私の本職は建築の現場管理だが、今は電気計装関係の会社に所属している。建築現場で少しは電気に関わったこともあるが、正直、私の知識はほぼ素人レベルでしかない。
せっかくその道のプロが周りにたくさんいるので、ここぞ!と言わんばかりに色々聞いて勉強させてもらおうと考えた。電気の専門家たちに同じ質問をしてみて、どんな答えが返ってくるのか、どんな手法や考え方があるのかを聞いて回ることにした。
ケーブルの長さや重ね方について
さっそく、プロたちに素朴な疑問を2つぶつけてみた。まず1つ目は、「ケーブルの長さ」だ。
ケーブルの長さも、人間が計算するので時には間違うこともあるだろうし、経路が変わって、予定より長くなることだってあるだろう。短くなる分には切断できるだろうが、仮に長さが足りなくなったらどうするのだろうか?
プロたちの回答は「ケーブルは原則、途中で繋いではいけない。仮に長さが足りなくなった場合は、よほどのことがない限り、全部やり直しをする!」という答えがほとんどだった。
ここでいう”よほど”とは、工期が間に合わない、材料そのものがない場合などのことを言うらしい。
そして2つ目は、ケーブルラックにも寸法の制約があり、狭い場所を通る幅の狭いラックなどに大量のケーブルが敷設される場合、ケーブルが重なって二重にも三重にもなってしまう。その時、ケーブルの重ね方に何か決まりはあるのか?
これについては、「太く重量のあるケーブルが下にくるように、現場では、太いケーブルから敷設を始め、順に細いケーブルにする」という答えが返ってきた。
その理由は、ケーブル本体の重量の影響を避けたいことと、通電の際にケーブルから発せられる熱の量に関係しているらしい。
熱が発生すると電流が通りづらくなるので、ケーブルの重なりの量もしっかり計算されてるということが分かった。厳密に言えば、北海道と沖縄では、ケーブルの許される重なりの量は同じではないらしい。
「ケーブルがラックからはみ出していたり、盛り上がったりしてるのは明らかにオカシイと思っていい!」ということも教わった。
だが、オカシイ箇所を見つけたとしても、正確には、熱の影響で不具合が発生するかしないかは、通電してみないと分からないことも多いそうだ。
知っているのと知らないのとでは雲泥の差
電気の専門家たちから、こんなことも教わった。
ケーブルは、直径1~3m程度の木製ケーブルドラムに巻かれて搬入され、一般的に建物の上階に荷揚げされるそうだ。
ケーブルそのものの重量があるため、下から上に引っ張るのは大変なので、極力、建屋の上階のパネルなど起点になる部分に荷揚げされ、そこから下階に向かうように作業を進めるのが原則だと聞いた。
荷揚げの時には、主要な地点に人を配置し、1本のケーブルを「せーの!せーの!」と声を掛け合いながら、全員が同時に引っ張り上げる。
ラックは水平や垂直あるいは斜めに走っているので、曲がり部の抵抗は思いのほか大きく、作業人数もラックの曲がり具合に応じて増やすらしい。
水平のところはいいが、面倒なのは、垂直に立ち上がったところや斜めにねじれるように立ち上がっていくラックの上のケーブルの固定だそうだ。
固定には、樹脂製の結束バンドと繊維の黒ヒモがあるが、樹脂製のバンドは力が掛かるので、垂直の位置でケーブルがずり落ちないように固定するために使われることが多いらしい。
ただ、使い分けは現場によっても異なるそうで、樹脂製はあくまで仮止め用で最後は全部を繊維ヒモにする場合もあれば、要所要所で樹脂製のバンドを使っている現場もあるようだ。
――今回このように話を聞けたのは、私にとって非常に価値があった。初歩的な知識かもしれないが、知っているのと知らないのとでは雲泥の差だと思う。
今後、他の現場でケーブル敷設工事があった際、電気担当者や電気業者に意見や疑問を言えるようになっただけでも大きい進歩だ。
まだまだ序の口だが、ここの現場で得た知識や経験をまた次の現場でも活かしたい!と思っている。