「自殺するんじゃないかと…」 精神的にも追い込まれていた17年前の災害査定業務

「自殺するんじゃないかと…」 精神的にも追い込まれていた17年前の災害査定業務

新潟県中越地震から早17年

今から17年前の2004年10月23日は、新潟県中越地震が発生した日である。

17:56分頃、当時の新潟県川口町を震源に最大震度7の地震が発生した。震度階級改正以降、初めて震度7を記録したことに加え、地震発生時に震源の真上を走行していた上越新幹線が脱線したことも大きな話題となった。

私は新潟県の出身で、当時は新潟県内に本社がある建設コンサルタント会社に勤務していた。地震発生の翌日から山古志村や川口町などに入り、被災状況の調査を行い、11月に入ってからは災害査定業務を担当することとなった。

今となっては貴重な経験であり大きな学びとなったと感じているが、当時はそんな風に捉える余裕はなく、牛丼など味が濃いものを食べても、味がしなくなってしまうほどに追い込まれていた。

心が壊れかけてしまいそうになるくらい、非常に大きなインパクトのある仕事だった。今も記憶は鮮明に残っている。

精神的にも追い込まれた災害査定業務

比較するようなものではないことは分かっているし、なによりも個人的な感想で恐縮だが、私にとっては東日本大震災や熊本地震などといった地震災害よりも、新潟県中越地震が一番印象深く心に刻まれている。

今でも当時の経験や学んだことは活きているし、その後いろいろと辛いことはあったけれど、中越地震のときほど辛いと思ったことはない。

当時は国土交通省、新潟県、県内の市町村それぞれから調査や災害査定業務の依頼が殺到し、全社を挙げて業務に取り組んでいた。その会社は佐渡にも支店があるのだが、佐渡からも技術者に来てもらい、本社近くの宿に宿泊してもらいながら新潟県内あちらこちらを回ってもらっていた。

私は最初、国土交通省の災害査定業務を担当し、その後は市町村の農地災害の査定業務に携わった。なかでも、国土交通省の業務は私が直接窓口となって担当していたこともあり、特にインパクトが大きく本当にしんどかった…。

というのも、最初の打ち合わせで決めた方針が2~3日後にはガラッと変わるのは日常茶飯事で、発注者は「それが当然」という態度で接してくる。こちらとしては方針が変わるたび図面を作り直し、数量を拾い直し、説明資料を作り直さなければならない。

毎日、早朝から朝方まで仕事に明け暮れる日々だった。会社の床に簡単なマットを敷き、朝6時頃に寝て、8時前に起きて仕事をする、という日が何日も続いた。

ある時は、夜中に発注者に呼び出され、他の建コン担当者と一緒に説教を喰らった、なんてこともあった。発注者からの説教が終わった後、担当者同士で「今更そんなこと言われても…」なんて、愚痴を言い合ったこともよく覚えている。

あとで聞いたことだが、某建コン担当者で脳内出血を起こして倒れた人もいたそうだ。私は倒れることはなかったが、味覚がおかしくなったり、当時の私を知る同僚からは「あのときのタレカツさんは、目がイッちゃっていましたよ…」と言われたこともあった。

当時の上司からは、「自殺するんじゃないかと気が気じゃなかった」と言われた。それほど追い込まれ、今振り返ると病んでいたのだろうと思う。当時はそんな自覚はなかったが…。


シンドイが確実にスキルアップに繋がる

精神的に追い込まれるほど激務だったが、この現場での経験が私のスキルアップに繋がったことは間違いない。道路や付随する構造物、圃場、用排水路、農業集落排水といった災害査定業務に関わる中で、幅広くいろいろなことを学べたからだ。

実際に現地に行って被災状況を調査し、どのような形が正常なのか、どんな構造となっていて、どのように造られたのかを一気に知ることができた。

常に高い基準の要求をされ、当時の自分のスキルではやれる量ではなかったし、やり切るだけのレベルではなかったが、上司や先輩方に恵まれ、「靴の大きさに足を合わせる」ごとくの経験をさせてもらえたことは、非常に貴重だったと感じている。

といっても、そのように感じられるようになったのはあとになってからで、当時はそんなことを思う余裕は一切なかった。

ある程度の犠牲が必要なため、「絶対経験したほうがいいよ!」とまでは言えないが、もし機会があるのなら一度だけでもいいので、災害査定業務を経験するのも悪くはない。

とてもとてもシンドイが、短期間で一気に成長できる良い機会だからだ。

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大手建設会社に勤務する30代の建設技術者。 工事費1000億円超の現場で、計画・設計等を担当しています。
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