共立女子大学 家政学部 建築・デザイン学科の3名(左から、岩渕さん、浦田さん、榎本さん)

共立女子大学 家政学部 建築・デザイン学科の3名(左から、岩渕さん、浦田さん、榎本さん)

建築を学ぶ女子大生に聞いた。”建設業界のイメージや魅力、インターンに求めること”とは?

若者が建設業界に抱いているイメージやニーズとは

「人手不足」という言葉を耳にするようになって久しい。人材育成以前に、人材獲得に頭を悩ませる業界は少なくないが、とりわけ建設業界は若い人材の獲得が喫緊の課題と言える。

総務省の「労働力調査」(H29年平均)をもとに国土交通省が推計した資料を見ると、60歳以上の建設技能者が全体の約4分の1を占め、10年後にはその多くが退職することが予想される。一方、未来を担う15~29歳の割合は全体の約10%。近い将来、これまで以上に深刻な人手不足が到来する恐れがあり、建設業界は若者に関心を持ってもらえるよう、今すぐに努めなければならない。

若者が建設業界を敬遠する理由として、一般的には「3K(汚い、きつい、危険)」が挙げられる。とは言え、定量的な調査結果では見えてこない要因もあり、若者が建設業界に抱いているイメージやニーズなどを知ることは急務と言って良い。

そこで、2023年4月に「建築・デザイン学部」の設置を予定し、建設業界に貢献する人材輩出がますます期待される共立女子大学の、家政学部 建築・デザイン学科に在籍する3回生の浦田真優さん、榎本咲蘭さん、岩渕梨里花さんの3名に話を聞いた。

趣味や経験から、建築に興味を持つようになった

望月(施工の神様ライター)

まず建設・施工を学ぼうと思ったキッカケはなんですか?

浦田さん

私は、昔からカフェ巡りや美術館巡りが好きなのですが、そういったところに足を運ぶ中で「こういう空間を私もデザインしたいな」という思いが芽生え、建築に興味を待ちました。

榎本さん

インテリアショップなどのモデルルームを見るのが好きで、私も「こういう空間を作りたい」と思ったからです。また、祖父が工務店を営んでおり、その姿を幼少期から見ていたことも、「建築の道に進みたいな」という気持ちにつながりました。

岩渕さん

私は、高校時代に演劇部に所属し、照明を担当していた経験もあり、エンタメや舞台の照明に関連した職を目指そうと思っていました。ただ、父親に反対されてしまい、「インテリアの照明とかも良いんじゃない?」と提案され、そこから建築に興味を持ちました。

「参加して良かった」と感じたインターンシップ

望月(施工の神様ライター)

インターンシップについての意見を聞きたいのですが、皆さんは参加されましたか?

浦田さん

参加しました。ただ、半日や1日といった短期間のものが多く、あまり詳細な企業情報や業務内容を知ることはできませんでした。

望月(施工の神様ライター)

会社説明会と変わらない感じなのですね。

浦田さん

はい。「大学内で開かれる会社説明会との違いはなんだろう?」と思うことも多々ありました。また、コロナ禍だから仕方ないのかもしれませんが、オンライン開催のものも少なくなかったです。やはり、会社や現場に足を運び、そこで働く人たちと直接話がしたかったです。

ただ、直接現場に足を運ぶ機会もあり、その際はその会社で働くイメージがしやすく、非常に良い経験になりました。

望月(施工の神様ライター)

「参加して良かった」と思う瞬間はありましたか?

榎本さん

私は現在、第一希望としては施工をやりたいのですが、設計もやりたいと思っています。施工管理の業務を任された後に設計に移れると一番良いと思っていたのですが、いろいろなインターンに参加した際、先輩社員の方から「設計から施工はあるけど、施工から設計は難しいよ」という話をいただき、とても参考になりました。

実際に業務を体験できなくても、直接働いている人に話を聞けるのもインターンの魅力だと思います。オンラインであっても、先輩社員の方に気軽に話ができる環境だとありがたいです。

望月(施工の神様ライター)

聞きたいことがすぐに聞けることは重要ですね。

岩渕さん

そうですね。私も、地方の企業のインターンに参加したのですが、参加した学生が3人ほどで、社員の方も2~3名でした。企業や業務に関する説明を受けている際に、気になった箇所はその都度すぐに質問ができ、より深い話まで聞けて良かったです。


男性中心、建築=理系というイメージが強い

望月(施工の神様ライター)

建設業界のイメージを教えてください。

浦田さん

“現場”が一番最初に思い浮かぶため、「男性中心の仕事なのかな」とイメージしています。

また、インターンで現場に行った時、「足元が不安定だな」「外で働くのって結構寒いな」といった身体的な不安を感じ、「若いうちしか働けないのかな?」「男性でなければ現場に立ち続けることは難しいのかも…」という疑問を覚えました。

望月(施工の神様ライター)

確かに、”男性中心”と考えやすいですよね。

榎本さん

そうですね。私は、インターンに参加した際にグループディスカッションをしたのですが、同じグループの男子大学生がとても理路整然に話す人で、「建築=理系」という印象を持ちました。

望月(施工の神様ライター)

理系は男性のイメージがありますからね。

榎本さん

私たちの大学は、女子大ということもあってか周囲と張り合うことも少なく、「協力しながらやっていこう」という意識があります。また、家政学部なので”生活に寄り添った建築”という抽象的なニュアンスが強く、データを使用したロジカルな話が軸になると話題に入れないこともありました。

参加したインターンのグループディスカッションでは、蚊帳の外になりやすく、「やっぱり建築は男性の仕事なのかな…」と感じました。

望月(施工の神様ライター)

建築は数字では測れない、人に寄り添う気配りはもちろん、センスも大切になります。データやロジックも必須ですが、そういう部分も評価してもらえると良いですね。

浦田さん

そうですね。ただ、ロジカルに話している人が評価される雰囲気はインターン時に感じることもありました。

なんとか議事録を取ってアピールしたのですが、あまり良い感触は掴めませんでした…。もちろん、私が上手く主張できれば良いのですが、現在学んでいる”居心地”や”デザイン”といった部分も重視する空気感が醸成されると嬉しいです。

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建設業界の一番の魅力は、”やりがい”があること

望月(施工の神様ライター)

他にはどのようなイメージはありますか?

岩渕さん

他業種のインターンにも参加したのですが、建築業界はやりがいをとても感じられる業界だと思いました。建築業界は、自分が何をしたのかが可視化されるため、苦労や努力を実感しやすいのではないかと感じています。

なにより、自分が携わった建造物を見た人や利用した人が笑顔になる様子を想像するだけでも、十二分にやりがいを感じられると思います。

浦田さん

私も、やりがいがある仕事だなと思っています。自分が作った物が誰かを笑顔にし、利用している人の姿もイメージしやすい。そこが建設業界の一番の魅力だと思います。

あとは、私はグループで協力しながら一つの課題に取り組むのが好きなタイプです。建設業界はそういう連帯感を味わえる業界だと思いますので、そのあたりにも魅力を感じています。

望月(施工の神様ライター)

やりがいを多く感じられる業界と考えているのですね。

榎本さん

やりがいもそうですが、小さい時に祖父の作業場に何度も訪れた際、そこで働く人たちにすごく可愛がってもらいました。建設業界と聞くと”強面の男性”というイメージが一瞬浮かびますが、「本当はすごく優しい人たちじゃん」と思った覚えがあります。

“建設業界なら優しい人たちと一緒に働ける”と考えており、私だけかもしれませんが、ポジティブなイメージは強いです。



結婚や出産を経験しても「長く働き続けたい」

望月(施工の神様ライター)

建築業界に進むと仮定した場合、就活時は企業のどの点を重視しますか?

浦田さん

給料や労働時間も当然大切ですが、「長く働き続けたい」という思いがあるため、社内が風通しの良い雰囲気であるかはとても重視しています。

また、建築業界は出産や育児をキッカケに退職するケース、もしくは現場から退くケースが少なくないと聞きます。インターンの座談会に参加した際は、育休の取得率や育休取得後の復帰状況なども積極的に聞くようにしています。

榎本さん

私も雰囲気や福利厚生も重視していますが、「バリバリ働きたい」という気持ちもあるので、女性管理職の割合にも注目しています。私は、結婚や出産を経験してもキャリアアップしていきたいと思っているので、性別に縛られることなく平等に評価してくれる企業に就職したいです。

岩渕さん

私も雰囲気は重視しており、役職に関係なくコミュニケーションが活発な職場が良いです。特に、”仕事上の関係”とドライに割り切るのではなく、仕事以外のプライベートな話もしたいです。また、飲み会や旅行にも従業員同士で一緒に行くような雰囲気だと魅力的に感じます。

望月(施工の神様ライター)

やはり雰囲気は重要なのですね。

岩渕さん

はい。他にも、今住んでいる土地を離れたくないという思いもあります。「全国転勤アリ」という求人を頻繁に見かけるのですが、私の場合、転勤がある企業では働くイメージがあまりできません。

また、入社後は長く働き続けたいので、「産休や育休から復帰できるのか」「復帰しても前の役職に戻れるのか」といった育休明けの働き方にも注目しています。

望月(施工の神様ライター)

実際に女性がどのような働き方をしているのかは知っておきたいですね。

岩渕さん

そうですね。インターンに参加しても女性社員の方がいないケースもあり、直接話を聞くとなるとOG訪問しかありません。インターンや会社説明会では、女性社員の方にも参加してもらえると嬉しいです。

仕事を通じて、たくさんの人を笑顔にしたい

望月(施工の神様ライター)

もしご縁があって建築業界に進むとなった場合、どのように働きたいですか?

浦田さん

就活を始めて、設計をやりたい人が多いことを知りました。競争率の高さに少し不安もありますが、設計やデザインの仕事に携わりたいです。私は、自分が建築した商業施設に足を運び、利用している人の笑顔を見ることを目標にしているため、そこに向かって頑張りたいと思っています。

榎本さん

「実際に利用する人の近くで仕事がしたい」という思いがありますので、現場に立って、戸建てやマンションの施工管理に携わりたいです。

なにより、「女性だって現場でやれるんだぞ!」というプライドも見せたいので、現場レベルの仕事をバリバリ取り組めると良いな、と思っています。

岩渕さん

設計や施工、営業など、いろいろな業務を全て担えるスペシャリストになりたいです。また、お客さんと密にコミュニケーションを取りながら、「全員で満足できる住宅を建築していきたい」という思いがあります。

最終的にはお客さんだけでなく、建築に携わった全ての人が笑顔になれる住宅をつくっていけるようになりたいです。

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フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。 Twitter:@mochizukiyuuki
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