掘削工事の排水計画で注意すべき点とは?
現場で掘削工事の排水計画を行う時に、何に注意すべきか?
おそらく「地下水位の高さと掘削床の関係」を気にしている人が一番多いと思います。
掘削床よりも地下水位が低ければ、慢性的な排水の必要もないので、雨水が溜まった所は、その都度水換えを行えば良いからです。
しかし、それだけで本当に大丈夫でしょうか?
私は掘削床の地層の影響で、過去にとても苦労した経験があります。
掘削床より地下水位が低くても油断大敵!
数年前、とある現場で私は掘削の施工計画を立てていました。
その現場を経験するまでは、地下水位が高い地域で工事をすることが多く、山留め工法やディープウェル工法などの排水計画も合わせて行うことが多かったのですが、今回の現場は違いました。
ボーリング調査や試掘の結果、掘削深さが2m弱で、地下水位が2mくらいであることが明らかになっていたため、特に排水計画もしなくて良いから楽勝だと、私は考えました。
実際の掘削工事が始まると、予定通り地下水位は掘削床よりも低く、水替えも不要。工事は順調に進みました。
しかし、掘削工事が終わり、基礎・地中梁の躯体工事を行っていた時、全く予想しない形で、ある問題が発生しました。
掘削床の「地層」に、もっとご注意を!
問題が発生したのは、ある夏の夕刻。どんどん雲行きが怪しくなり、ついには土砂降りの雨によって、基礎工事をしている部分が水没しました。
しかし、午後5時前でちょうど職人さんたちは作業の片付け中でしたし、私も明日になれば水は引くだろうと気楽に考え、帰路に就きました。
そして次の日、現場へ向かうと、想定外にも現場は昨日とほぼ同じ状況でした。数cmぐらいは水位が下がっていましたが、全く作業が出来る状態ではありませんでした。
「なぜ水が引いていないの!?」
私の頭の中はパニックに陥りましたが、ゆっくり考えている余裕はありません。ありったけの水中ポンプで水替えを始め、ようやく昼過ぎになって、全部の水を替え切りました。
が、しかし、その日の夕方、また土砂降りの夕立ちに見舞われたのです。
また、やり直しです。肩を落としても、天気には勝てません。その後も、夕立ちと水替えの苦しいイタチごっこが続きました。
田んぼの埋め立て地
それから数日後、定例会議の場面で、昔からずっとお客様の施設を管理している担当者に、この水替えの話をしました。
すると、「昔この一帯は、田んぼでした。田んぼを埋め立てて出来た土地なので、ちょうど掘削床の深さあたりに、田んぼの水を溜めるための地層があったのでは?」という返事。
会議後、改めてボーリング調査の図面を見てみると、確かに「砂層」に挟まれて「シルト層」と書いてあります。
「水が溜まらないと田んぼの意味がないですからね、そういうことか!」などと妙に自分で納得してしまいましたが、今でも工事前に気付くことは難しかったと思っています。
掘削工事の排水計画では、くれぐれも掘削床の地層に注意しましょう。