TDYアライアンスの20年間の歩み
TOTO、DAIKEN、YKK AP(以下、TDY)は、3社のリモデル分野におけるアライアンスが2月に20周年を迎えたことを記念して、TDY20周年の歩みや、今後の展望について説明する「3社長共同記者会見」を行った。
出席者は、TOTOの清田 徳明代表取締役 社長執行役員、大建工業(DAIKEN)の億田 正則代表取締役 社長執行役員、YKK APの堀 秀充代表取締役社長の三者。
会見の席上、TDY商品を採用したライフスタイル提案「十人十家(じゅうにんといえ)」のプランを現在の20プランから2022年度には新たに4 プランを追加、さらに2025年度までに全50プランへ拡充すること、加えて、工事店の提案によって実現した暮らしの事例を募集し、「みんなの”十人十家”」として2025年度までにTDYリフォーム情報サイトへ100件の事例掲載を目指すことを発表した。
TDYはなぜ成立し、どのようにして強化され、今後どの方向へ向かっていくのか。3社長共同記者会見から読み解いていく。
アライアンス提携でリモデル売上は1.5倍増に
まず、三社はなぜアライアンスを組んだか。億田代表取締役 社長執行役員がTDYアライアンスの20年間の歩みについて口火を切った。
1990~2000年代初頭にかけて、少子高齢化社会の進行が叫ばれており、ピーク時には170万戸の新築住宅が徐々に減少傾向となり、2009年度には78万戸まで落ち込むという衝撃的なニュースがあった。
一方、当時5000万戸と言われたストック住宅に目を向けると、住まいの質の向上を求める消費者も多く、新たな需要も巻き起こり、リモデル事業が大いに注目された時期であった。
2002年に水まわりのTOTO、内装建材のDAIKEN、窓・エクステリア分野のYKK APがリモデル分野でのアライアンスを提携したのはこのような背景があった。
TDYアライアンスの狙いはリモデル分野での市場拡大やシェアアップを図り、顧客満足の実現であった。また、リモデル分野で、常に顧客の暮らしの価値を向上できる最高位のグループであることと、アライアンスによる社会貢献、ブランド強化を通じて永続的に事業収益を獲得することを理念に上げ、住空間のトータル提案を行い、この2022年で20年を迎えた。
TDYアライアンス締結は「新築」から「リモデル」の転換期に行われた
この20年での活動では大きく3つのステージに分けることができる。
1stステージ(2002~2007年)では、リモデルによって生活が変わることを顧客に提示し、消費者ニーズを掘り起こすことから開始した。具体的にTDY3社によるコラボレーションショールームを開設し、全国各地でリモデルスタイルフェアなどのイベントを開催し、TDY活動の周知に努めた。この大規模フェアは現在に至るまで延べ52万人が来場している。
続く2ndステージ(2008~2017年)では、リモデル提案の基軸となる「グリーンリモデル」を提唱した。TDYのノウハウや技術を組合わせることにより、「健康配慮」、「長もち住宅」や「CO2 削減」を実現し、環境に優しく快適で自分らしさを表現した住まいづくりをサポートするリモデル提案をスタートした。
また近年、消費行動が「モノ」から「コト」へと変化する中、リモデルも同様に、暮らしのあこがれをかなえるための「コト」実現の手段に変化してきた。
このような変化を踏まえ、3rdステージ(2018~2021年)では「グリーンリモデル」に加え、「十人十家」による暮らしの提案をスタートした。「十人十家」とは聞きなれない言葉だが、十人いれば十通りの暮らしの想いがあるということから、TDYならではのライフスタイル提案を行っており、現在は20プランまで進化・拡大している。2018年のリモデルコレクションという大規模イベントでは、「十人十家」の提案を実物大で空間展示し、来場者からは、「リモデル後のイメージが膨らみやすい」と好評であったという。
大建工業(DAIKEN)の億田正則代表取締役 社長執行役員が20年の歩みをもとに、着実に成果が上がったことを語る。
また、TDYアライアンスの情報発信拠点となる「TDYコラボレーションショールーム」は、2004年に開設したTDY広島からスタート。17年間で全国13か所となり、多くの顧客に商品提案を続け、来館組数は462.5万組にのぼる。水まわり、内装建材、窓分野をワンストップで確認できる点や、各社アドバイザーの連携、商品知識の深さについて顧客から好評を博している。
「TDYリフォーム情報サイト」のアクセス数も伸長しており、HPリニューアル後の2018年度を起点とすると、2021年度は54%増加しており、リモデル分野への関心がうかがえた。
TDY3社合計のリモデル売上高推移では新設着工戸数が減少する中、アライアンス提携時の2002年度を100とした場合、約20年間で1.5倍へと増加した。3社それぞれの強みを活かし、住まいにおいて総合的な提案を行ってきたことが、各社のリモデル売上を伸ばすことができた要因と、億田代表取締役 社長執行役員は締めくくった。
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「十人十家」を進化させ、顧客の意識変化に対応へ
詳細な調査に基づいて、TDYアライアンスの次の一手を語るTOTOの清田 徳明代表取締役 社長執行役員
次に登壇したのが、TOTOの清田代表取締役 社長執行役員。TDYアライアンスの今後の方向性について語った。
今回、改めて3社の存在意義を検討したといい、ものづくりを展開する各社だが、商品とともに新たな暮らしを提案している。そこで今回、顧客の気持ちに寄り添い、リモデル分野でTDYアライアンスを進化させるため、「暮らしの中に笑顔を。」というメッセージを新設し、発信した。
顧客の関心が持続可能な社会の実現、防災や衛生などに高まっていく中、グリーンリモデルはさらに進化、「健康・ 快適」、「安全・安心」や「環境配慮」の三つの視点に注力。リモデルの価値を顧客に分かりやすく伝えるために、「十人十家」を進化させていく。
このコロナ禍では社会全体と個人の生活が大きく変容した。TOTOがコロナ禍を経た暮らしの意識変化の調査・アンケートを行ったところ、⾃宅で過ごす時間が「増えた」と回答したのが約57%で、「⾃宅に対してどのような意識をもちましたか?」という問いに対して、「リラックスできる空間にしたい」が53.6%、「安全・安心を確保できる空間にしたい」が45.9%と続き、顧客の意識の変化を踏まえて、暮らしや住まいのさまざまな提案が必要と指摘した。
コロナ禍を経た暮らしの意識変化 / 調査・出典:TOTO
次にTOTOでは、「リフォーム情報収集に関する実態調査」を実施。初期関心期から情報収集期にかけて費やした期間は10か月に及び、リフォームを決定するまでに半数以上の顧客が何らかの「困りごと」があり、また「不安」があった顧客の割合も40%を超えていることが明らかになった。そこでリフォームを実現したいという顧客に寄り添うことが、重要であるとの認識を示した。
さらに、調査を深堀りしていくと、リフォームの一歩を進めるためには、「リフォーム後のイメージが描ける」「リフォームの費用や流れが分かる」や「納得できる工事店が見つかる」の3点が重要であることが分かった。
そこでリフォームの初期関心期から寄り添い 、「暮らしの中に笑顔」があるリモデル実現をお手伝いするステージへ進めていくとTOTOの清田代表取締役 社長執行役員は意欲を示した。
リフォームについて「困りごと」や「不安」が多いことも調査で分かった / 調査・出典:TOTO
TDYアライアンスのNEXTステージへ
最後に登壇したのがYKK APの堀代表取締役社長で「TDYアライアンスの具体的な取り組みについて」をテーマに語った。
具体策としては、TDYが オススメする商品を盛り込んだ、ライフスタイルの提案「十人十家」は、現在20プランに留まっているが、2025年度には合計50プランへと拡充し、工事店による「みんなの”十人十家”」の事例を2022年8月から募集開始し、2025年度には100事例を公表する。
さらにリフォームには「困りごと」や「不安」が付きまとうが、これを払しょくするため、2022年10月に「TDYオンラインリフォーム相談センター」を開設、リフォームの困りごと、不安に幅広い範囲に対応する。
TDYアライアンスは次のステージに進むと述べるYKK APの堀代表取締役社長
また、「リフォームの費用」へ関心が高く、すでにTOTOではトイレのリモデルの参考価格を提示している。ここにDAIKEN、YKK APの2社も足並みをそろえ、フローリングや窓がある場合を想定し、空間としての参考価格を提示することも明らかにした。
施工面について、リモデルクラブ店は約5,000店あり、その中で空間工事、間取りの変更やフルスケルトン、トイレや玄関空間など得意分野もそれぞれある。TDYでは「十人十家」の提案を進め、空間工事に対応する目的で工事店を増強する。工事品質向上、提案力向上のサポート展開が狙いだ。いたずらに店数を増やすよりも顧客対応力を向上していくというのがスタンスだ。
工事店の工事品質向上、提案力をサポートし、より満足度の高いリモデルへ
次に、リモデル価値提案活動としては、暮らしかなえる「TDYリモデル博」を、TDY リフォーム 情報サイトにおいて7~10月にかけてオンラインで、「TDYコラボレーションショールームフェア」を7月末(6日間)および8月末(6日間)にかけて開催する。顧客がリフォームに一歩進めるための、重要なイベントとして位置付けていると、YKK APの堀代表取締役社長は示した。
この後、質疑応答に移った。
これからのTDYアライアンスの3社長の想い
――20年間についての想いをコメントしていただければと思います。
清田社長(TOTO) この20年間では、各社の事情を尊重しながら非常に良い関係を築けてきたと思います。この活動を通じてリモデル空間をワンストップで提案できたことは大きな意義がありました。引き続きコラボレーションを構築していく中で、これから先は顧客に初期段階から寄り添い、TDYを選んでよかったと、長きにわたるファンづくりを進めていきたいです。
億田社長(DAIKEN) これからのTDYの方向性としては、「十人十家」はまだスタートしたばかりであり、この辺りをさらに進化させたい。顧客がこういう家や空間に住みたいというあこがれや夢を具現化させるように提案していきたいと思います。
堀社長(YKK AP) YKK APはもともと新築が中心でしたが、この20年間で顧客とTOTO・DAIKEN・YKK APの3社をつなぐネットワーク「TOTOリモデルクラブ」に加盟している施工会社「リモデルクラブ店」での売上は20倍に、また、リモデルの商品は12倍に増加しています。今後ともリモデルの売上全般が伸びることを期待しています。
あこがれの空間は当社1社ではとても具現化するのは難しい。具現化のためには3社の商品がそろっていくことが必要です。商品開発で言えば、お風呂の窓についてはまったく意識していなかったのですが、TDYでお風呂の窓についてあらためて考える機会があり、良い視点が生まれたと思いました。今後も”あこがれ”についてどう貢献できるか、どのような商品開発を展開していくかが次の10年への期待となります。
TDYアライアンスの20年間にわたる成長ステージ
リモデル需要は引き続き堅調の見通し
――今後のリモデルの需要動向やコロナ禍での影響については。
清田社長(TOTO) おうち時間の滞在が長くなったことで、リモデルについて追い風が流れたと分析しています。さらにテレワークの環境が一気に進み、自宅で仕事をすることが増えたこともあり、自宅のあり方も変化したと感じています。2年超にわたりさまざまな制約がある中で、顧客も千差万別ですが、衛生や清潔について感度が変わってきました。そのニーズをしっかりととらえ、TDYが商品開発を進め引き続き堅調に行っていけば、支持をいただけると考えています。
億田社長(DAIKEN) コロナ禍では家への関心が高まりました。とくに音に関する部分、吸音や防音への問い合わせも多く、関連商材の出荷が増えています。
堀社長(YKK AP) 換気のニーズや窓への関心が高まっています。次に外の音が聞こえないように防音にも問い合わせが多く、省エネ以外にも求められることが増えました。コロナ禍によって当社の商品に注目が集まっています。
――カーボンニュートラルの文脈でTDYの拡大は。
清田社長(TOTO) カーボンニュートラルはTDYで意識していくことが肝要です。加えて、住宅業界全体でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を意識していく中で、必要な機能や商材が出てきます。そこでTDYを中心としながらも、そういったサービスを持つ企業と一緒に展開し、輪を広げていきます。
――施工への取組みはどうお考えですか。
清田社長(TOTO) TDYでは今後とも空間提案をしていきますが、施工の担い手が減少していることは重要な懸念点です。とはいえ現在、TDYが共同で施工体制を一元化することはありませんが、各社で商品をつくっていく上で、施工を意識した商品開発をそれぞれ進めています。さまざまな情報交換をしていくうえで、施工に関する取組みについて強化していきます。
アライアンスの効果として、「TDYコラボレーションショールーム」の存在は大きい
――「TDYコラボレーションショールーム」の今後の方向性については。
清田社長(TOTO) 現在、13か所ありますが、市場の状況を踏まえながら、計画を立てていきたいと考えています。
――参考価格の提示については。
清田社長(TOTO) TOTOでは、幅を持たせながら参考価格を提示しています。ただ、例えば、浴室空間であれば窓を含めた価格はどのくらい掛かるのかという顧客からの質問もあります。まずは浴室とトイレの空間でそこに窓がある場合、フローリングがある場合、といった参考価格の提示を進めていきます。
――20年間で売上が1.5倍となりましたが、アライアンスの効果はどれほどでしたか。また、今後の目標については。
清田社長(TOTO) アライアンスの効果については、残念ながら推し量れておりません。ただし、各社それぞれであった提案が空間に拡大したので、顧客のイメージが膨らんだのではないでしょうか。また、「TDYコラボレーションショールーム」では、ワンストップでリモデル内容を提示できましたので、TDYの売上に貢献したと思っています。
私どもの活動はソフトアライアンスですので、基本的にTDYで活動しながらも、各社がそれぞれリモデルの売上を高めていくことを目標に据えています。