「俺たちが若い頃は」話に騙されるな
若手の頃、年長者からよくこんな話をされました。
俺たちが若い頃は・・・
「朝まで真っ黒になって図面を書いていた」
「ヘルメットをかぶらない職人だらけだった」
「夜通し酒を飲んでそのまま現場に行った」
彼らは、若者に対して『俺たちの時代はこんなに大変だった。今の時代はまだマシになってきた』とでも言いたいのでしょう。
でも、僕はこう思っちゃいます。「ちょっと待って、めちゃくちゃチョロくない?」と。皆さん、騙されてはいけません。よくよく話を整理してみましょう。
要点はこんな感じでしたね。
- 働く時間は短くなり、図面もCADになって楽に
- 職人さんは何も言わずヘルメットをかぶるから楽に
- 飲みに行く機会も減ったから楽に
よくよく考えてみてください。この話、あたかも楽になっているように感じられる気がしますが、実はまるで逆だと気づくはずです。どういうことか?細かく見ていきましょう。
働く時間は短くなり、図面もCADになった
よく考えると、CADになることで図面は詳細になり、精度が格段に上がりました。線の数も数十倍になっています。にもかかわらず、時間は短くなったということ。つまり、業務のレベルが跳ね上がっています。
職人さんだってヘルメットを当たり前にかぶる
よく考えると、そのくらい安全意識が上がった人たちを管理する能力が必要になったということ。当然、書類もがっちり増えています。つまり、レベルが跳ね上がっているのです。
そして追い討ちをかけるように、人手は減っているのに、仕事量は変わっていません。むしろ書類は増える一方。さらに高齢化が進み、残業なんてしようもんなら捕まる世の中です。
整理すると、
- 技術レベルは上がり、安全レベルも上がった
- 高齢化で人員は減っているが、利益は出さなきゃいけない
- もちろん土日休みで、残業はダメ
・・・えーっと?どこが楽なんでしょうか。レベルは倍増、負担も倍増。働く時間は半減。数式で表すと【レベル2倍×負担2倍÷時間1/2】となり、つまり業務レベルは8倍くらいになっているのです。
昔と比較して業務レベルは8倍に
「俺たちの時代はこんなに大変だった。今の時代はまだいいほう」という言葉が、こう聞こえてきませんか?
「俺たちの時代はこんなに低レベルだった。今の時代は本当に大変だな」と。
例えば、「俺は3年目には所長になった」という美談。これを今に直すと、3年×8倍=24年かかるレベルをクリアしないとダメという険しき道です。そもそも昔と今を同じ土俵に上げて語ることが、話にならないと言えます。
果たして本当に、「今の若いやつらはやる気がない」と言えるのでしょうか?
もしも、昔の人と同じスピードで仕事をしている若者がいるのなら、それこそモンスター級。だって先輩の8倍速で成長していき、先輩の8倍速で仕事をこなしているのですから。
超ハイレベルな時代に生まれた悲運
「若者よ、こんな超ハイレベルな時代にようこそ」
これが本来、新人を迎え入れる時の言葉なのです。とはいえ、嘆いてばかりはいられません。では、この時代を乗り越えるためにはどうしたらいいのでしょうか?
技術力は、やっぱり先輩から盗むしかありません。きっとそれが一番手っ取り早い。でもそれではスピード感が足りないことになります。なにせ8倍速で進まなければいけないのですから。
かと言って、適当な仕事をするわけにも行きません。そうなると答えは1つ。『根本は守るが、その方法は変える』しかないのです。
上辺の工法や手段に惑わされず、「本質を見抜く力」を身に着けることから。そして本質がわかったなら、それを変えずにやり方だけを跡形もなく変えてしまう。つまり変革を起こすしかないのかもしれません。
ここから先は誰も知らない世界。だからと言って歩みを止めてはいけません。こんなにも変革を良しとする時代なのですから、発想力と行動力がカギになります。
どんなものにだって攻略法は必ずあります。そしてそれは、誰も知りません。臆せずチャレンジをしていきましょう。未来のために。
※この記事は、『 【インスタで学べる】1日たった3分で学べる建設コラム 』の記事を再編集したものです。