施錠後の現場事務所に人の気配…。泥棒それとも幽霊か?現場で起きた珍事件

建設現場で起きた珍事件!隠しカメラに映し出されたのは・・・

現場で起きた珍事件

土木施工管理技士の仕事を長く続けていると、珍事件に遭遇することがある。今回は、中でも一番面白かった珍事件をご紹介しよう。

その現場は繫華街に近く、事務所は賃料を払ってテナントハウスを借りていた。

事務所内はWi-Fi・シャワー・エアコン完備、部屋の広さも40平米くらいで、男3人で事務所にいても窮屈さを全く感じないほど広かった。

この現場の工期は9ヶ月で、11月から工事がスタートした。

現場事務所での違和感

着工から3ヶ月が経った頃、現場事務所で“不思議なこと”が起こり始めた。

その現場では私が最後の戸締まりをすることが多く、その日も事務所内をしっかりと確認し、施錠をしてから帰宅した。そして翌日。誰よりも早く出勤し、事務所の鍵を開けた。

「んっ?」

さっきまで人がいたような痕跡がある…。鍵を閉めたのは自分だし、開けたのも自分だ。どういうことだ?

現場事務所の鍵は職員の私たちしか持っていない。もしかしたら、若手2人が忘れ物かなにかをしたのかな?と思い尋ねてみるも、『なんの話?』といった様子。そもそも若手2人は車で1時間かけて通勤していた。一度帰ってまた事務所に戻ってくるとは考えづらい。

この日を境に、誰もいないはずの現場事務所で様々な違和感を感じるようになった。

確実に消したはずのエアコンがついている、ゴミ袋の中に身に覚えのないお菓子やコンビニの袋が捨てられている、事務所内に喫煙者はいないのにタバコの匂いがするなど、おかしいのは明らかだった。

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カメラに映る黒い影

若手2人に「事務所の鍵を誰かに渡した覚えがあるか」と尋ねるも、「誰にも渡していない」と答えが返ってきた。もちろん私が誰かに渡すわけもなく、そうなるといよいよ怖くなってきた。

すぐに警察に相談しようとも思ったが、とりあえず証拠がなければ話にならないと思い、私は現場事務所に小型のカメラを設置し、夜中の様子をリアルタイムで観察することにした。

カメラを設置したその夜、カメラは驚くべき姿を捉えていた。

22時を過ぎた頃、1人の人間が事務所に入ってくる様子がハッキリと映っていた。性別は男。何やら蛍光チョッキを着ている。

事務所に入るやいなや、男は真っ先にシャワーを浴び、さらに驚くことに、缶ビール片手に晩酌を始めたのだ。リアルタイムで見られているとも知らず、のんきなもんだ。

次の瞬間、その男がカメラのほうに顔を向けた。

「嘘だろ…」

私は唖然とした。

犯人はまさかの…

不法侵入していた男は、毎日交通誘導員を頼んでいたガードマンだったのだ。

ガードマンはいつも17:15には伝票を書いてあがらせていた。帰宅して、わざわざ事務所に戻ってくる意味が全く理解できなかった。

後日、事務所に後輩がいないタイミングを見計らい、そのガードマンを呼び出した。男はすぐに自白した。

「事務所の鍵をどうやって入手したのか」と聞くと、「現場が半日で終わった日に、現場事務所に鍵が置いてあるのを見つけて、近くの合鍵屋で鍵を作った」という。

「なぜ現場事務所の鍵が必要だったのか」と聞くと、「ガードマンの仕事を始めてまだ1ヶ月目で、以前作った借金が原因で現在家がないから」と涙目で話す男。

毎日ネカフェ等を転々として、お金が底をつきそうになった時に、たまたま現場事務所に置いてある鍵を見つけて、残りのお金を使って合鍵を作ろうと考えたそうだ。

退勤した17:15から侵入する22時までの時間をどう過ごしていたかと聞くと、男はなんと、その時間になるまで橋の下で待機して、私が帰ったことを確認して侵入していたらしい。

最初は腹が立ったが、話を聞くとあまりにも不憫に思えたので、給料が入るまでは事務所で寝泊まりすることを許可した。最終的には男もうまく元の生活に戻れたようだ。

とまあ少し変わった、面白いような怖いような珍事件であった。現場では予期せぬことが多々起きる。私が経験した珍事件は他にもまだまだあるので、また別の記事でも紹介したいと思う。

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某ゼネコンで土木施工管理技士として奮闘中。前時代的な建設業界の風潮に辟易し、自分のキャリアプランを見直したい今日この頃。
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