現場事務所での違和感
着工から3ヶ月が経った頃、現場事務所で“不思議なこと”が起こり始めた。
その現場では私が最後の戸締まりをすることが多く、その日も事務所内をしっかりと確認し、施錠をしてから帰宅した。そして翌日。誰よりも早く出勤し、事務所の鍵を開けた。
「んっ?」
さっきまで人がいたような痕跡がある…。鍵を閉めたのは自分だし、開けたのも自分だ。どういうことだ?
現場事務所の鍵は職員の私たちしか持っていない。もしかしたら、若手2人が忘れ物かなにかをしたのかな?と思い尋ねてみるも、『なんの話?』といった様子。そもそも若手2人は車で1時間かけて通勤していた。一度帰ってまた事務所に戻ってくるとは考えづらい。
この日を境に、誰もいないはずの現場事務所で様々な違和感を感じるようになった。
確実に消したはずのエアコンがついている、ゴミ袋の中に身に覚えのないお菓子やコンビニの袋が捨てられている、事務所内に喫煙者はいないのにタバコの匂いがするなど、おかしいのは明らかだった。
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カメラに映る黒い影
若手2人に「事務所の鍵を誰かに渡した覚えがあるか」と尋ねるも、「誰にも渡していない」と答えが返ってきた。もちろん私が誰かに渡すわけもなく、そうなるといよいよ怖くなってきた。
すぐに警察に相談しようとも思ったが、とりあえず証拠がなければ話にならないと思い、私は現場事務所に小型のカメラを設置し、夜中の様子をリアルタイムで観察することにした。
カメラを設置したその夜、カメラは驚くべき姿を捉えていた。
22時を過ぎた頃、1人の人間が事務所に入ってくる様子がハッキリと映っていた。性別は男。何やら蛍光チョッキを着ている。
事務所に入るやいなや、男は真っ先にシャワーを浴び、さらに驚くことに、缶ビール片手に晩酌を始めたのだ。リアルタイムで見られているとも知らず、のんきなもんだ。
次の瞬間、その男がカメラのほうに顔を向けた。
「嘘だろ…」
私は唖然とした。