JR工事管理者の大山康雄さんにインタビュー
身長187センチ、体重100キロという大柄な体格に、若々しい笑顔が印象的な大山康雄さん。大山さんは約10年間のトラックドライバー歴を持つ異色のJR工事管理者だ。県立高校卒業後、トラックドライバー(2~10t)、鳶、土工などの作業員を経て、2013年にJR工事管理者(在来線)の資格を取得した。
JR工事管理者とは、JR営業線から5m以内の線路近接地で行う工事(営近工事・近接工事)に配置される資格者だ。駅舎や駅ホームでの工事も営近工事とされるため、JR工事管理者の人材需要はかなり高い。特に最近は、駅舎周辺における大規模都市再開発も増加しており、企業間の採用競争も激化している。
ある大手ゼネコンの人事担当者は、「JR工事管理者の有資格者であれば、現場に立っているだけでいいから採用したい。年齢は問わないし、希望給与が高くてもいい」とさえ言う。これは冗談交じりの言葉だろうが、それほどJR工事管理者の需要は高まっている。給与水準も上がってきていることは言うまでもない。しかし、その一方でJR工事管理者の仕事は夜勤が多く、激務だとも言われている。
JR工事管理者(在来線)の有資格者である大山康雄さんに、資格取得の経緯やJR工事管理者の勤務実態、転職事情などについて伺った。
JR工事管理者の一日のスケジュールとは?
―― 大山さんは今、JR工事管理者として、どんな現場で働いていますか?
大山 JR某ターミナル駅で駅舎と駅ビルの建替え工事(S・SRC造)を担当しています。線路上に人口基盤を構築してコンコースを移設するなど、駅舎と駅ビルの耐震性・利便性・回遊性を一体的に向上させるための改良工事です。駅構内の商業スペース「エキナカ」や駅ビルを段階的に開業し、2年後の全面リニューアルを目指して昼夜間で工事を進めています。JR工事管理者としての業務は、現場作業管理と、それに付随する書類作成が中心ですね。
―― 現場の雰囲気はどうですか?
大山 今の現場は規模が大きく、毎日1000人ほどの作業員が働いています。なので、現場管理はかなり大変です。職場の雰囲気は和やかですが、今は一期開業目前なので、ちょっとピリピリしていますね。予定通りに工事を進めつつも、事故が発生しないように細心の注意を払っています。
―― JR工事管理者は、夜勤や単身赴任が多いイメージですが、大山さんはどうですか?
大山 現在は自宅から通勤しています。電車通勤で片道1時間ほど掛かります。鉄道関連の工事は、終電~始発間に工事を進めるケースが多いので、たしかに夜間工事が多いですね。私も今は夜間勤務がメインです。18時30分から現場打ち合わせが始まり、20時に1回目の夜礼、23時に2回目の夜礼があります。その合間あいまに現場管理や書類作成を行い、6時頃仕事が終了します。自宅に帰るのは大体、朝7時頃ですかね。
◎大山さんの1日のスケジュール
15時 | 起床 |
17時 | 自宅出発 |
18時 | 現場到着 |
18時30分 | 現場打ち合わせ
現場管理および書類作成 |
20時 | 夜礼(1回目)A点呼
現場管理および書類作成 |
23時 | 夜礼(2回目)A点呼
現場管理および書類作成 |
0時30分 | B点呼
現場管理および書類作成 |
4時 | 作業終了 |
4時30分 | 翌日の作業打ち合わせ
打ち合わせ後、書類作成 |
6時 | 勤務終了 |
7時 | 自宅到着 |
―― 夜勤が多いJR工事管理者の皆さんに共通する悩みだと思いますが、ご家族との時間が恋しくなりませんか?やはり休日は、ご家族と過ごすことが多いでしょうか?
大山 はい。夜勤メインで、なかなか子供たちと会う機会がないので、休日は子供たちとの時間が最優先です。一緒に近所の公園に出掛けたり、犬の散歩をしたり、一緒にお菓子作りをしたりしていますね。自分だけの時間が取れるときは、愛車をカスタムしています。自分でパーツを作ったり、取り付け等の作業をしたり、趣味の時間も作るようにしています。年に数回は車仲間で集まってオフ会を開催し、子供たちも一緒に参加しています。観光地は栃木と山梨が好きなので、家族旅行でいちご狩りや桃狩りに行くこともあります。
正社員より派遣社員のほうが、安定・高給与・高スキル?
―― 大山さんの現在の就業形態は派遣ですが、なぜ派遣という働き方を選びましたか?
大山 この業界特有の感覚かもしれませんが、正社員も派遣社員も“安定性”という意味ではそれほど違いはないと思います。私が所属している会社は特定派遣会社なので、一口に派遣と言っても実際は正社員雇用ですし、社会保険や福利厚生についても大手企業レベルで手厚いです。前職の正社員時代より給与は2倍近くになっています。
派遣会社に転職した最大の理由は、自分で好きな勤務地・企業・現場を選べる点と、給与もスキルも高めやすい、という点です。正社員の誘いもありますが、今は色々な現場で経験を積んで、スキルも給与も相乗的にアップしていきたいと思っています。こう言っては語弊があるかもしれませんが、正社員にはいつでも戻れますし……。
―― 派遣会社に転職する前は、どんな会社に勤務していましたか?
大山 主に鉄道工事を行う建設会社で正社員として働いていました。駅舎新設工事や駅橋上化工事、高架下店舗開発工事などで、職長とJR工事管理者を担当していました。前の会社で鉄道工事に携わるようになったことが、JR工事管理者の資格を取得することになったターニングポイントです。
JR工事管理者になったキッカケは「所長との出会い」
―― 具体的にターニングポイントとなった出来事などがありましたか?
大山 指扇駅橋上化工事の現場が、私がJR工事管理者の資格を取得することになったきっかけです。この現場は、私が既存建物の解体から竣工まで経験した初めての現場でした。着工当初は職長として従事したのですが、この現場の所長に技量を認められて、JR工事管理者の資格を取得するよう勧められました。そして、この現場に従事中に、職長からJR工事管理者となり、JR工事管理者と職長の二足のわらじで現場を切り盛りしました。橋上化する駅舎が高台にあったため、アースアンカー工法で施工するなど特殊工法も多く、あらゆることが初体験の現場でした。現場管理も大変でしたが、私の現場でのポジションが一転したのは、この現場からです。そのあとからJR工事管理者の有資格として、駅高架下店舗工事、橋上駅舎新設工事、駅舎天井耐震化工事などに従事するようになりました。
―― 大山さんはJR工事管理者の資格を取得した後、その建設会社の正社員を辞めて、派遣会社に転職したわけですが、その理由は何だったのでしょう?
大山 前職場での経験のおかげで、JR工事管理者の資格を取得できたので感謝していましたが、収入面がかなり不安定でした。根拠もなく給与を半分近くピンハネされるなど、給与が月10万円台のときもありました。不満を感じて会社とも話し合いをしましたが、なかなか折り合いがつきませんでした。
そんなとき、私生活で彼女との同棲をスタートし、彼女と彼女の子供3人を自分ひとりの収入で養うために、本気で転職を考えるようになりました。インターネットで検索したところ、収入的にも仕事的にも、最もJR工事管理者の資格を生かせる求人情報を案内してくれたのが『施工管理求人ナビ』でした。今ではその頃と比べて2倍近くの給与になっていますし、大手ゼネコンの元請け側のスタッフとして経験を積めるので、本当に転職して良かったと思っています。
―― 一般的に派遣会社のイメージは良くないように思いますが、初めて派遣社員になることに、不安はありませんでしたか?
大山 最初に『施工管理求人ナビ』の採用担当者と会ったときは、すごく不安でしたが、担当者の派遣に関する説明や態度にホッとしたのを覚えています。私の派遣会社は『施工管理求人ナビ』を運営しているC4株式会社というIT系の会社ですが、私が今まで抱いていた派遣のイメージを完全に覆されました。とにかく「建設業界を明るい世界にしよう」というスタンスの会社です。
私の派遣先を決める際も、将来的なヴィジョンも含めて、JR工事管理者の資格を生かせる現場を案内してくれました。転職に伴う資格更新の手続きも手伝ってくれましたし、派遣先で実際に働きはじめてからも、公私にわたって色々と気に掛けてもらい助かっています。何か困ったことがあると、メールや電話ですぐ相談に乗ってもらえるので心強いですね。派遣ですと専任のサポート担当者が付いてアドバイスもしてくれるので、安心して仕事に集中できます。
JR工事管理者は現場運営も転職も「コミュニケーション」が重要
―― JR工事管理者や施工管理技士の中には、転職を検討している人も多いと思います。転職に成功した大山さんから、そんな方々に何かアドバイスできることはありますか?
大山 私も家族を養うため、そして自分の生活レベルを上げるために転職せざるを得ませんでした。転職を検討し始める一番の動機は収入面だと思います。現場での経験値が上がれば、給与も上がって欲しいのに、能力と収入のバランスが取れていないと転職したくなる場合が多いと思います。また、職場の人間関係がうまくいっていないときも、不満がたまり転職を考えるようになります。
どのようなケースでも、転職をちょっとでも迷うようになったら、ダメもとで『施工管理求人ナビ』に相談してほしいと思います。派遣事業を営んでいるからといって、むやみに勧誘しようとせず、適切なアドバイスをもらえるはずです。派遣業を営む会社としてあるまじき行為ですが、もしかしたら転職を思いとどまるように説得されるかもしれません(笑)
私も転職を迷っていた一人でしたが、気軽な気持ちで『施工管理求人ナビ』に相談した結果、仕事も生活も一変しました。そんなに自慢できるほど贅沢な生活を送っているわけではありませんが、前職より収入も上がり、子供たちの我儘を聞くことが出来るようになりました。家族旅行も増え、趣味の時間も増えました。
自ら動かなければ何も変わりません。何もしないで後悔するよりも、やって後悔する方がいいです。動く勇気を持ちましょう。その勇気の先には何かが待っています。もしかしたら、新たな世界が待っているかもしれません。
―― 過労や薄給で悩んでいる方々を勇気づけるような力強い言葉ですね。大山さん自身は今後、JR工事管理者として、どういったヴィジョンをお持ちでしょうか?
大山 引き続きJR工事管理者としてのスキルを磨きながら頑張っていきたいと思っています。今の会社なら、元請けゼネコンの一員として、大きな現場の工事管理スキルを身に付けることができます。前の職場にいたままだったら、おそらく今のような大型現場を経験することはなかったと思います。
それから、JR工事管理者として、というより、建設に従事する人は皆そうかもしれませんが、自分が手掛けた建物が完成して竣工を迎えたときは、格別な感情が湧きます。そういう“やりがい”の面でも、私はJR工事管理者として、JR関連の工事に長期にわたって携わりたいと思っています。そして、今後はJR線閉責任者などの資格を取得していきたいと思っています。
―― JR線閉責任者の資格も取得したら、またインタビューさせてください。最後に何か読者にメッセージがあればどうぞ。
大山 実は、私は建設業界に入る前、トラックドライバーを10年ぐらいやっていました。その後、ビルの解体工事、改装工事、吹き付け材修繕工事などといった建築現場で作業員、足場鳶として働くようになりました。今でも、この頃に経験した足場の仮設作業や、施工アンカーの施工方法・施工規格などのノウハウは役に立っています。
そんな私が作業員からJR工事管理者になったきっかけは、前述の指扇駅の現場で所長に認められたからでした。認められたと言っても、格段に私のスキルが優れていたわけではありません。現場でのコミュニケーションをしっかり取っていたので、気に入られた、と言ったほうが、むしろ適切かもしれません。
JR工事管理者にとっても、施工管理技士にとっても、現場を円滑に運営する上でコミュニケーションが重要だとは良く言われることですが、それは現場をスムーズに進めるためだけでなく、実は自分自身の“財産”にもなっていきます。私がJR工事管理者になれたのは、現場でのコミュニケーションを大事にしていたことが、所長の目にとまったのがきっかけです。
転職に関しても、自分から動いて人とコミュニケーションを取ることが“悩み”を解決する秘訣ではないでしょうか。私はこれからも、周囲とのコミュニケーションと、周囲への感謝の気持ちを忘れずに、現場を管理していきたいと思っています。