管理がずさんな建築現場。ついに施主がキレた【前編】

※写真はイメージです。

管理がずさんな建築現場。ついに施主がキレた【前編】

管理がずさんな現場

新しい現場に来て2か月半ほどが過ぎた。「品質管理を担当してくれ」と言われ、派遣社員としてここの現場に来たのだが、来てみて驚いた。信じられないほど管理がずさんな現場だったからだ。

現場に入る前は、施工管理の人間が8人ほどいるので、通常の施工管理に加え、さらに細かい確認や指示を出して、建築の品質を上げていく体制になっているんだろうなと考えていたが、その考えは初日に崩壊することになる。

8人いるにも関わらず、施工管理が全く機能していなかったのだ。ここの会社は今までこのやり方でやってきたようで、所長や副所長はじめ、他の社員も誰一人何も言わない。

施工管理がまともじゃなければ、品質管理などできるはずがない。陰ながら施工管理の手助けをしていると、私に指示を出す社員2人からこんなことを言われた。

「施工管理には手を出すな!施工管理は施工管理者に任せておけばいいんだ!」

とはいえ、単純な配筋が図面と違ったり、型枠の寸法や位置が図面と違ったりするので、施工管理者に確認することもある。施工管理者に質問をすると、彼らは口を揃えてこう言う。

「全部サブコンの責任だから、サブコンに任せておけばいい!」

どちらも他人に責任を押し付けて自分は知らん顔。聞いていて唖然とすることばかりだ。かと言って、私も適当に仕事をするわけにはいかない。現場はそうしている間も進んでいくからだ。

本来であれば、施工管理を通さず直接作業員に指示・指導をするのはルール違反なのだろうが、コンクリート打設が目の前に迫り、『そんなことは言ってられない』と動き回っていた時のことだった。

施工管理のリーダー的な人と、私の上司が「余計なことはするな!」と言ってきた。「じゃあ、寸法が違ってても、カブリが取れない状況でも、何も言わずにただただ検査の前にここはおかしいから直せ!と言うだけでいいんですか?」と聞くと、「そうだ」と言われた。

いやいや、おかしいでしょ(笑)。よくそんなことが平気で言えるなぁ…と言葉を失った。

誰でも、どんな時でも、現場で何かおかしいと感じることがあったら、それを担当の人間に伝え、真偽を確認するのは当然のことだと思うのだが、そんな当たり前のことがこの現場では通用しないらしい。

工事を円滑に、かつ安全に遂行するために良かれと思ってやったことで、なぜそんな文句を言われなきゃならないのか全く理解できなかった。この記事を読んでいる皆さんは、おかしいと思わないだろうか?

刻々と近づく検査日

こんな状況の中、検査を迎えるとどうなるか想像して欲しい。

この現場は、配筋と型枠の検査が中心で、サブコンが作った検査予定表をもとに検査が行われる。検査前には、私の所属会社の施工管理者やサブコンの管理者などが総出で、検査に問題が発生しないように万全の準備をして検査日を迎えるというのが普通だと思っていたが、ここの現場は違った。

検査の2日前。私も心配になり現場を見に行ったのだが、職人が通常の作業を続けているだけで、検査場の清掃や片付けなどは何一つ手が付けられていない。さらに驚くことに、何回見に行っても、施工管理者が現場で指示を出している様子も一切ない。

明らかに検査に値しない状況で検査を受けようというのか。その神経が、正直言って、私は情けなくて非常に恥ずかしかった。

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迎えた検査当日

今回の検査は、屋上パラペットの立ち上がりの鉄筋配筋と型枠の検査。

本来ならば、鉄筋がもう少し見える状況で検査を受けるべきで、パラペットの一番カブリが取りずらいアゴの部分などは、型枠設置前の状況で検査を受けなければ検査にならない。

これで検査を受けようとしてるサブコンは、自分たちの打設計画だけを心配し、検査員のお目こぼしを期待して検査を受ける腹積もりらしい。検査の目的や趣旨などはどうでもよく、ただ打設前の手続きの一つとして検査があるくらいの意識なのだろう。

迎えた検査当日。開始時間まで残り30分。案の定、私の所属会社の施工管理者もサブコンの管理者もまだ誰一人来ていない。

検査前、私も現地に行き、上から覗き込んでみた。型枠ベニヤの木くずが一面に散乱したままで、一切清掃も行われていない。こりゃ酷い…。

『これじゃ検査にならないぞ』と焦って全体を見て回ったのだが、掃除どころか、スペーサーが脱落していたり、番線や結束線が底に落ちていたり、惨憺たる状況だった。一体どういう神経をしているのだろうか。

普通の検査官なら見た瞬間、怒って帰ってしまってもおかしくないくらいだ。私が検査官だったら「ふざけるな!」と怒鳴り散らすかもしれない。なんて色々と一人で考えていたが、清掃や片付けをしている時間はもうない。

さぁ、どうなる。(後編につづく)

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アジア、アフリカなど海外の建築現場で長年、施工管理に従事している。世界中で対日感情が良好なのは、先人たちの積み重ねである。日本人として恥ずかしくない技術者でいたい。
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