アフリカ・コンゴのコンゴ川の渡河するマタディ橋保全計画(プロジェクト賞)

アフリカ・コンゴのコンゴ川の渡河するマタディ橋保全計画(プロジェクト賞)

【土木学会】第2回「インフラメンテナンス賞」45件が決定!

土木学会 インフラメンテナンス総合委員会はこのほど、2022年度の「インフラメンテナンス賞」の選考結果を発表した。今年度はプロジェクト賞6件、チャレンジ賞10件、エキスパート賞8件、マイスター賞14件、特別賞1件、優秀論文賞6件の計45件を選んだ。

インフラメンテナンス賞は、インフラメンテナンス分野に特化し、関連する優れたプロジェクト(事業)、人・団体(技術者、オペレーター、管理者など)、個別要素技術者(点検・診断、施工方法、材料など)や論文(実践的研究)を評価し、共有することでメンテナンス関係者のインセンティブを高めることを目的とした表彰制度で、以下の4つの賞で構成される。

プロジェクト賞:メンテナンスにより地域のインフラの機能維持・向上に顕著な貢献を果たし、地域の社会・経済・生活の改善に寄与したプロジェクト

チャレンジ賞:点検・診断、設計、施工・マネジメントなどの個別や組合せ技術を駆使した地域のインフラメンテナンス、または創意工夫によりインフラメンテナンスに対する管理者、市民などステークホルダーの意識の向上が認められた取組み。

エキスパート賞:インフラメンテナンスに関する極めて優れた技術や技能を持ち実務で顕著に活躍している個人。

マイスター賞:インフラメンテナンスに関する技術やマネジメント全般で豊富な実務経験に基づく卓越した総合的かつ指導的能力を持ち顕著に活躍している個人。優秀論文賞は実践研究論文に登録される論文の中から編集小委員会から推薦のあったもの。

今回は全国から90件の応募があり、インフラメンテナンス表彰小委員会による選考を経て選出。表彰式は2月27日、28日にオンライン開催する第2回インフラメンテナンス・シンポジウム内で実施した。記者会見では、同総合委員会インフラメンテナンス表彰小委員会の塚田 幸広副委員⻑(土木学会専務理事)と吉田⻫正幹事⻑(JR東日本)の両名が出席し、選考内容を解説した。

東名高速道路 大和トンネル拡幅事業(プロジェクト賞)

メンテナンス技術者に光を当てる

――今年と昨年との授賞内容の違いは。

塚田副委員長 昨年は第1回目ということもあり、プロジェクト賞に多くの方が手を挙げていただき、今年は落ち着いた感があります。また、エキスパート賞とマイスター賞という個人への表彰には、多くの方が推薦され、メンテナンス技術を継承する技術者に表へと出ていただくことができたと考えています。エキスパート賞とマイスター賞を授賞された方々は専門家集団であり、こうした方々に現場のご相談を受けていただけるような体制づくりをインフラメンテナンス総合委員会では考えています。

土木学会では土木学会賞を設け、第一線の研究者や技術者、最先端の技術などを選考対象としてきましたが、インフラメンテナンス関連は対象となることが少なかったため、インフラメンテナンス賞をもとに、関係する技術者、研究者などに光を当てたいと考えています。

左から、インフラメンテナンス表彰小委員会の吉田斉正幹事長・塚田幸広副委員長

プロジェクト賞は代表的な作品を選考

――今回のインフラメンテナンス賞の全般の感想は。

塚田副委員長 バランスを考えたわけではありませんが、鉄道、空港、高速道路、橋梁など、それぞれの分野の代表的なインフラメンテナンスのプロジェクトを選考することができました。

また、チャレンジ賞については、新技術から市民協働に基づいた人材育成の側面からも選出しました。土木学会には、国土交通省や建設会社、高速道路会社や鉄道会社などの専門家集団がおりますが、自治体レベルでもインフラメンテナンスを啓発していく必要があります。今回は岩手県や大阪府のほか、国土交通省 四国地方整備局 那賀川河川事務所などの出先機関の取組み、奈良県の田原本町の取組みなど、技術のみならず体制や契約のあり方などのチャレンジングな展開についても、今後とも評価をしていきたいと考えています。

橋梁の予防保全型維持管理への移行を踏まえた道路ストック包括的民間委託(田原本町(奈良県)、大阪公立大学、オリエンタルコンサルタンツ)

インフラメンテナンスも含め地方自治体にフォーカス

――土木学会はインフラメンテナンスをはじめ、地方自治体にフォーカスしたセミナーをいくつか開催しています。地方自治体の土木学会への関心度は高くなっているのでは。

塚田副委員長 すぐに成果が表れるものではありませんが、地方自治体に対してもしっかりと目を向けていることが浸透しているように感じます。

インフラメンテナンス国民会議」では、「インフラメンテナンス市区町村長会議」も設立し活動していますが、土木学会としてもしっかりと首長との連携を構築したいと考えています。

インフラメンテナンス・シンポジウム2日目にも、主に自治体職員で構成される「地方インフラ・メンテナンスネットワーク、通称・LIMN(ライモン)」による「橋守サミット 2023」を昨年に引き続き開催します。頑張っている地方自治体を取り上げ、応援していただけるようお願いします。


授賞対象一覧

※いずれも敬称略

インフラメンテナンス プロジェクト賞

  • マタディ橋保全計画(送気システム導入)及びマタディ橋維持管理能力向上プロジェクト橋梁点検機材据付支援業務・橋梁検査車導入(プロジェクト主体:国際協力機構)
  • 東名高速道路大和トンネル拡幅事業(プロジェクト主体:中日本高速道路東京支社)
  • 「ドライブレコーダー×AI」を活用した空港滑走路の調査及び点検(プロジェクト主体:南紀白浜エアポート)
  • 分岐器融雪ピット~降雪期における分岐器不転換防止対策~(プロジェクト主体:北海道旅客鉄道鉄道事業本部工務部工事課)
  • 高速道路リニューアルプロジェクトにおける円滑な交通確保の取り組み(プロジェクト主体:東日本高速道路北海道支社札幌管理事務所、関東支社京浜管理事務所、新潟支社長岡管理事務所)
  • 稚内港北防波堤ドーム予防保全事業(プロジェクト主体:国土交通省北海道開発局 稚内開発建設部 稚内港湾事務所)

インフラメンテナンス チャレンジ賞

  • トラック積載型システム作業床「フラップリフト」開発プロジェクト(取組み主体者:大林組)
  • 高校生との協働による道路インフラメンテナンスの取組(取組み主体者:岩手県)
  • まいど通報システム(取り組み主体者:大阪府)
  • 宅地地盤相談制度の確立および地盤災害に向き合う共創の場の構築と実践(取り組み主体者:地盤品質判定士会神奈川支部)
  • 電気探査を活用した堤内地の詳細な地盤情報を反映した堤防の浸透に対する安全性照査手法(取り組み主体者:国土交通省四国地方整備局那賀川河川事務所、応用地質)
  • センサBOXだけで始められる傾斜・伸縮監視システムOKIPPA~インフラ点検業務の省力化への取り組み~(取り組み主体者:西松建設)
  • 桟橋上部工を対象とした点検ロボットと診断支援システムの開発(取り組み主体者:海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所)
  • インフラメンテナンス国民会議 九州フォーラム テックシニアーズ(取り組み主体者:インフラメンテナンス国民会議九州フォーラム)
  • 橋梁の予防保全型維持管理への移行を踏まえた道路ストック包括的民間委託(取り組み主体者:田原本町・奈良県、大阪公立大学、オリエンタルコンサルタンツ)
  • 近畿地方における市町村の橋梁メンテナンスサポートと「目安箱」の設置(取り組み主体者:災害科学研究所社会維持管理研究会、近畿建設協会)

インフラメンテナンス エキスパート賞

  • 伊東 寛之
  • 金本 功
  • 末岡 英二
  • 内藤 幸美
  • 平手 克治
  • 藤原 博明
  • 松田 芳範
  • Luiza H. Ichinose

インフラメンテナンス マイスター賞

  • 石橋 忠良
  • 伊藤 賢一
  • 小山内 政廣
  • 上阪 康雄
  • 實延 栄二
  • 髙木 千太郎
  • 谷倉 泉
  • 内藤 英晴
  • 成井 信
  • 西川 和廣
  • 松田 浩
  • 松田 好史
  • 水口 和之
  • 山本 和利

インフラメンテナンス 特別賞

  • 写真を通じたインフラメンテナンスの重要性と魅力の発信(取組み主体者:山崎 エリナ)

インフラメンテナンス 優秀論文賞

  • 富山市における生活道路上の道路トンネルのメンテナンス事例(第一著者:大懸 重樹(富山市建設部道路構造保全対策課))
  • 感潮河川にかかる橋梁の下部構造に対する非破壊調査の適用について(第一著者:後藤 幹尚(大田区都市基盤整備部建設工事課))
  • 鋼橋の疲労き裂に関する近接目視点検訓練シミュレータの開発(第一著者:藤原 俊輔(首都高速道路技術センター))
  • 付着物除去不要な鋼矢板の板厚計測の開発(第一著者:石川 敏之(関西大学))
  • JR東日本における既設山岳トンネルの耐震対策に関する技術資料の制定(第一著者:北川 一希(東日本旅客鉄道))
  • 道路橋の震後調査の効率化・高度化に向けた3次元レーザスキャナの試行検討(第一著者:林 祐葵(土木研究所構造物メンテナンス研究センター))

2021年度の受賞者はこちら

インフラメンテに光を当てる『インフラメンテナンス賞』40件が発表!

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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