左から川田さん、服部さん(写真提供:阪神高速道路株式会社)

左から川田さん、服部さん(写真提供:阪神高速道路株式会社)

「ビッグプロジェクトあるで。毎日やりがい感じられるで」 “良い橋をつくろう”という情熱が溢れる職場

世界最大規模と目される連続斜張橋の設計に携わる若手社員

阪神高速は現在、大阪湾岸道路西伸部事業の一環として、世界最大規模と目される連続斜張橋の建設を進めている。

この連続斜張橋の設計に携わる若手社員(入社2年目)2名に取材する機会を得た。阪神高速に入社した理由、仕事のやりがいなどについてお話を伺った。

川田 歩美さん 阪神高速道路株式会社 建設事業本部 神戸建設部 湾岸西伸第一建設事業所

服部 駿佑さん 阪神高速道路株式会社 建設事業本部 神戸建設部 湾岸西伸第一建設事業所

本当は橋梁に行きたかったが、くじ引きで落ちた(笑)

――土木に興味を持ったきっかけはなんでしたか?

川田さん 大学は農学部で、農業土木を学んでいました。工学部の一般的な土木ではありませんが、それが土木を学んだきっかけです。

服部さん もともと工作とか、モノをつくるのが好きだったので、大学は工学部と決めていました。工学部の中でも土木系を選んだのですが、なぜ土木を選んだかと言うと、高校の文化祭で、6m四方のオブジェの設計っぽいことをして、楽しかったのが記憶に新しかったからです。建築も考えたのですが、やはり規模の大きい土木のほうが良いかなということで、土木にしました。

――大学ではどのような勉強をしましたか?

川田さん 研究室は、農業用のダムに関する研究をしていました。構造物と言うより、地質寄りで、地下水を溜める地下ダムについて、水質を絡めた研究をしていました。沖縄や鹿児島に何度も出張してやっていました。

学生時代、研究に打ち込む川田さん(中央、本人提供)

服部さん 研究室は海岸工学分野で、粒子法を用いた数値解析をやっていました。数値解析手法は、FEM解析が一般的なのですが、粒子法という比較的新しい解析手法で、流体と構造物の連成解析を対象にした基礎的な研究をしていました。本当は橋梁工学の研究室に行きたかったのですが、くじ引きで落ちました(笑)。

学生時代、ジャグリングに打ち込む服部さん(本人提供)

「入社してから勉強すればエエから、全然問題ないで」

――就活はどんな感じでしたか?

川田さん 農業土木はちょっと特殊な分野なので、農水省とか地方自治体に就職するパターンが多いんです。いろいろアドバイスを聞いているうちに、発注者として主体的に動ける仕事が良いかなと考えるようになりました。その中で、阪神高速で働いている大学OBの方とお話する機会があり、それがきっかけで阪神高速の仕事に興味を持つようになりました。

――農業土木よりは都市土木をやりたいと思ったということですか?

川田さん そうですね。とくに都市高速道路は物流、ひいては都市の経済を支える大動脈としての役割を担う重要なインフラですので、農業土木とは性質が異なると感じ、興味を惹かれました。OBの先輩は、たまたま今私がいる神戸建設部に所属されていたのですが、「ビッグプロジェクトあるで。毎日やりがい感じられるで」とススメられたので、「あ、とっても良いな」と思ったわけです。

――阪神高速で「これをやりたい」というのはあったのですか?

川田さん 道路に関して素人でしたので、とくにはこれと言うものはありませんでしたが、漠然と「建設事業はスケールが大きくていいな」と思っていました。先輩から「入社してから勉強するものだから、学生時代の知識の差は全然問題ないで」と聞いていたので、あまり不安はなかったです。

――就活はどうでしたか?

服部さん 「橋梁をやりたい」という思いがあったので、とりあえず高速道路関連の会社に就職したいと考えていました。コンサルやゼネコンも考えましたが、設計だけとか施工だけというのは、ちょっと視野が狭い感じがしていました。ということで、早い段階で、計画から施工まで全部できる高速道路会社に絞っていました。

最初は、なんとなく地元の高速道路会社に入りたいと思っていましたが、いろいろな方々のお話を聞いてみると、「橋が多いのは阪神高速」だとわかりました。そこで、けっこうギリギリのタイミングでしたが、阪神高速に方向転換しました。そういうことで、阪神高速に入社したわけです。

――そもそも、なんで橋をやりたかったのですか?

服部さん なんでなんでしょうかね(笑)。あらためて理由を問われても答えにくいのですが、やっぱり見栄えが良いからだと思います。

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「良い橋をつくろう」という情熱が溢れる職場

なにやら打ち合わせ中の川田さんと服部さん(阪神高速提供)

――実際に阪神高速でお仕事してどうですか?

川田さん 神戸建設部の湾岸西伸第一建設事業所というところに配属されて、2年目になります。就活の時に感じたOBの先輩への憧れが、橋梁の設計を担当させてもらえる環境につながっていると思っています。最初の1年は六甲アイランドの陸上の高架橋の設計チームにいました。2年目からは海上部の長大橋の設計チームにいます。今メインで担当しているのは、耐風設計と景観です。

今の職場には「良い橋をつくろう」という情熱に溢れる方々がたくさんいらっしゃいます。その情熱を日々感じながら、一員として頑張っているところです。最初はわからないことだらけでしたが、最近は主体的に動けるようになってきていて、楽しく仕事ができるようになってきています。

――仕事に対する戸惑いはありましたか?

川田さん 最初は、図面を見てもなにがなんだかわかりませんでした。上司からは「図面からモノを想像できるかが大事だよ」とアドバイスしていただいたのですが、しばらくツマづいていましたね(笑)。あと、戸惑いはありませんでしたが、言葉がわからないということもありました。先輩からは「言葉がわからんでも、恥ずかしがらず、どんどん聞け」と励ましていただきました。

まさかのドンピシャの職場で「ありがたい」

――阪神高速でのお仕事はどうですか?

服部さん 川田さんは同期として同じ職場に入りました。「長大橋をやるか、高架橋をやるか、どちらか選んで良いよ」と言われたので、ボクは遠慮せずに「長大橋をやりたい」と言いました(笑)。それで長大橋の海中基礎の設計を担当することになりました。2年目の今も同じ仕事をしています。

――入社早々念願叶った感じですか?

服部さん まさかドンピシャの職場に配属されるとは思っていませんでした(笑)。非常にありがたいです。

――とは言え、戸惑うこともあったでしょう?

服部さん ええ、一応一通り授業は受けていましたが、橋梁についてちゃんと理解していたわけではなかったので。たとえば、打ち合わせで土質力学に関する話題になったときに、なんとなく聞いたことがあるなとは思いましたが、具体的な部分は全くわかりませんでした。「議事録書いてみて」と言われたのですが、全然筆が進まなかったほどです。

あと、大阪湾岸西伸部事業は、近畿地方整備局の浪速国道事務所、神戸港湾事務所とともに3事業者で進めているので、その共同事業者との調整もあります。昨年、メインで担当していた先輩が異動になったので、基礎に関する共同事業者との調整なんかも、私が前に出てやることになりました。

そういったところの戸惑いは大きかったですね。今となっては、慣れてきましたけど。

――長大橋設計の進捗はいかがですか?

服部さん だいたいのカタチはできあがっていて、一般公開されています。今は細かい設計を詰めている状況です。

ちょっとでも爪痕を残したい(笑)

――今の職場で手に入れたいモノ、身につけたいスキルなどはありますか?

川田さん 新しく長大橋を架けるというプロジェクトは、国内でもなかなかないと思っています。長大橋の設計に携われるのは、すごく貴重な経験をしているなと感じているところですが、この経験、知識を活かす機会はおそらくないだろうなとも思っています。それでも、風に対する設計に関しては、誰よりも知っていると言われるよう、精一杯頑張っていきたいです。ちょっとでも爪痕を残したいです(笑)。

服部さん 一応目標は立てていて、一定の成果物を出すために、目の前のことを一つひとつこなしていって、自分ができる限りのことはやり遂げたいと思っています。橋の基礎に関する知識は、他の橋にも応用できると思うので、今後に活かしていきたいと思っています。

ただ、上部工に関しては、まだまだ勉強が足りていないと感じているので、今の職場にいるうちに吸収できるものはドンドン吸収していきたいと思っています。

いろいろ経験した後、最終的に設計に特化するのが理想のルート

――今後やりたい仕事はありますか?

川田さん 阪神高速にはジョブローテーションという仕組みがありますが、会社としての強みだと思っています。どんな職場に行っても、フレッシュな気持ちで仕事に取り組みたいと思っています。やりたい仕事については、いろいろな職場を一通り経験した後、10年後ぐらいに改めて考えたいです。とりあえず、次の職場では今の仕事と全然違う仕事をしたいとは思っています。

服部さん 将来的には、設計という仕事に特化したいと思っています。そこに至る過程として、ジョブローテーションしながら、施工管理などのいろいろな分野を経験しておくというのが、ボクにとっての理想的なルートなのかなと思っています。

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基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
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