千葉県・千葉市の工務店・木村建造株式会社を経営し、サッシや断熱材等を一体化した「木造大型パネル」の委託製造などを行うウッドステーション株式会社にも籍を置く木村光行氏が呼びかけ人となり、全国から大工が30名以上集まった「大工の会」。集まった大工の多くは、木村氏とSNSなどを通じて知り合ったという。
開催の目的を「大工志望者の間口を広げ、仕事も増やしたい」と語る木村氏に、その思いについて聞いた。
“大工の価値”が下がっている
――「大工の会」を設立された背景は。
木村光行氏(以下、木村氏) 私は幼稚園の頃から大工になりたいと夢を持っていたのですが、私が大工になった頃には、プレカット工法などの”プラモデル”のような住宅建築工法が主流となっていました。それによって、本来大工が持っていた技術の対価が見えにくくなり、大工人口の減少とともにその価値も下がっているように感じていました。
こうした根本の問題について大工自身がみなで考え、解決しようと集まったのが「大工の会」です。今回は、新築やリフォーム大工の垣根を越えて30名以上が集まりました。ビジョンには、大工になる間口を広げ、大工希望者を増やすことを掲げています。
――木村さんが考える「これからの大工像」とはどのようなものでしょうか?
木村氏 これからの大工には、戸建て住宅だけでなく、CLT建築や大規模木造、非住宅木造の分野にも大きな可能性があります。この中でも、非住宅木造を施工できる職能を保有している大工は多く、大工の潜在的なスペックをフルで活用すれば、非住宅木造建築でも十分活かせるのではないかと考えています。
――中大規模木造建築に大工はどう関わっていくべきですか?
木村氏 計画段階から関わり、発言権を確保することが大工の価値につながると考えています。今回、あるプロジェクトに計画段階から入らせてもらったのですが、これまでは木に触ったことすらない、ビスも打ったことがないような方が上流の部分で物事を決め、それを大工におろして「あとはよろしく」とだけ言われるようなこともありましたが、これではいけないと思います。
また、CLTについても、2016年に建築基準法で告示され、中大規模建築では設計要綱で「CLTを使うべきだ」とされるケースも増えてはいますが、CLTを使っている事業者の多くはゼネコンで、大工はまだまだCLTを使っていません。CLTについては、ゼネコンと大工で文化の違いを感じているので、これを整理していく必要があります。
CLTといえば特別な木材のように聞こえがちですが、海外では身構えることなく普通に使われているので、日本でも今後10~15年で同様に広まると予想しています。そのために大工も今から準備をしていかなくてはいけないと考えています。
まちと大工の距離を縮めたい
――木村さんが携わっている「木造大型パネル」も増えていくとお考えでしょうか。
木村氏 激しい気候変動により、予想もしないスコールのような豪雨が全国で降り、コロナ禍も続いている。つまり、これからは気象災害やコロナなどによって、しばらく現場が稼働しないというような不確定要素が住宅業界に増えていきます。こうした中で”確定要素”を増やしていくには、ギリギリまで屋内や工場での業務を増やさなければなりません。今お話した通り、これからCLT建築や中大規模木造が普及していきますから、ユニット化は自然の流れであり、木造大型パネルの普及も必然だと考えています。
――業務範囲の拡大という観点では、木村さんは松戸市のまちづくりにも携わっていますね。
木村氏 千葉県松戸市の松戸駅前で行われている、民間企業によるまちづくりプロジェクト「MAD City」というものが展開されており、私も参画しています。私自身は、大工もまちづくりに大きく関わっていくべきだと考えています。現場は足場と養生シートで囲われているので、昔よりも大工とまちの人々の距離が遠くなっていると思います。先に話したように、私のテーマは「大工になる間口を広げること」ですから、そのためにはまちに大工がいることをもっと身近に感じてもらわなければなりません。われわれ大工は空き家問題やDIYなど、様々な手法でまちとの距離を縮めていくべきです。
それ以前に、人と触れ合う大切さを若い大工にも感じてほしいし、それはものづくりに通じることだということを理解してもらいたいという思いもあります。お客様としっかりと対話し、望まれる家を建築していくことに喜びを感じることができるのが、大工という仕事をですから。
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大工なんてヤンキーばっかの連中と関わりたくないです。