発注者支援業務の「お家事情」。天下り発注者OBが出禁になった珍事件

発注者支援業務の「お家事情」。天下り発注者OBが出禁になった珍事件

私の職場(発注者支援業務)には、毎年数名の発注者OB(天下り)が入ってきます。各部署全体の総括監理者として職場で活躍しているAさんも、その1人です。

今回は、発注者OBでもある総括監理者のAさんが、発注者に意見しすぎて出禁になった話をしたいと思います。

出禁になった発注者OB

なぜ発注者OBが出禁になったのか。事の発端は、積算依頼の流れを発注者に指摘したことでした。

積算業務は、本来、主任照査技術者などから管理技術者に依頼するのが正しく、発注者支援業務共通仕様書や特記仕様書にもそう記載されています。それが近年では、資料作成業務(技術員)から積算依頼されることも多くなりました。本来はいけないことです。

それを見ていた総括監理者Aさんが、発注担当課の課長に「資料作成業務(技術員)からの依頼は先走りであり、本来のするべきことではない」と指摘しました。

それ以降、本来の流れで積算の依頼がくるようになりました。この時はまだ、まさかAさんが出禁になるなんて誰ひとり思ってもみませんでした。

発注者支援は「何でも屋さん」じゃない

発注者支援業務は、資料作成、積算支援、品質管理など、業務範囲は多岐にわたります。中には、私たちのことを「何でも屋さん」と勘違いしている人もいます。

設計成果の間違いが多すぎる

橋梁工事やトンネル工事では、設計成果で図面と数量計算書がリンクしていないことが特に多いのですが、そういった修正をやることもあります。

積算担当者からは、確認の時点で設計成果品の修正に近しいぐらい作業をして、本業の積算まで回らず、残業や休日出勤をしないと間に合わないなど、悲痛な叫びがあちこちであがっていました。

(例1) 橋梁工事(鋼橋)

  • 鋼橋ではボルト締めの箇所で、本数が図面と数量計算書がリンクしていない
  • ボルトの数だけワッシャーやナットがあるが、数量計算書に反映されていない

(例2) 橋梁工事(PC橋)

  • PCケーブルの長さが、図面と数量計算書でリンクしていない
  • 桁架設の方法について現場条件と違いがあり、貸与成果からでは桁架設の方法の見直しが必要
  • 道路橋の改定で、成果品が現行の設計基準ではない

発注者からの無理なお願い

無理なお願いをされることもあります。トンネル工事で、当初は発破工法を採用していたにも関わらず、ドリル工法に変更してくれと発注者から言われたこともありました。

本来そういった内容は、設計会社と発注者が打ち合わせをして設計コンサルが対応することで、発注者支援で対応することではないと伝えたものの、そっちでやってくれないかと言われ、やむなく変更することになりました。

職場では、「発注者支援に仕事を投げたらなんでもやってくれる」という発注者の甘い考えがはびこっています。

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発注者OBが激怒!発注者にクレーム

本来の発注者支援業務(積算業務)から、上記に挙げたことまで色々と対応させられていたことで、ついに発注者OBである総括監理者Aさんが激怒。発注担当課の課長にこうクレームを入れました。

「積算業務は設計コンサルタントの尻ぬぐいをする仕事ではなく、本来は設計成果が完璧に出来上がり、そこから全体の成果品から工事対象になる箇所の成果の抽出をして、予定価格を算出するのが目的だ」

その場では何も言えなかった発注担当課の課長からは、後日メールにて謝罪がありました。

「もう顔を出さないで」 まさかの出禁に

その後も総括監理者のAさんは、気になったことを発注者に指摘し続けました。その結果、発注者の副所長からある日こんなことを言われたそうです。

「Aさんがくると、課長以下、全員が委縮して言いたいことが言えなくなってしまう。打合せをはじめ、こちらには顔を出さないでください。」

それを受け、「今後の入札に影響する」と会社は判断し、発注者の言うことに従うことに。結果、総括監理者Aさんは発注者への出入りが禁止になりました。

――今回は、私の職場で実際にあった、いわいる「お家事情」を記事にしてみました。発注者支援と聞くと、天下り先だからとか、批判を受けることもあります。ですが、実際は、発注者支援として真面目に働いている人がいることも事実です。

確かに発注者OBの中には、呑気にお茶を飲みながら新聞を読んで1日を過ごしている、有給休暇を使いまくり平日にゴルフばかりしている、なんて人もいますが、全員が全員そうというわけではありません。

皆さんは、発注者や発注者OB(天下り)、発注者支援業務をどう見ていますか?

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