2024年4月から働き方改革関連法が建設業にも適用される「建設業の2024年問題」が目前に迫っている。
建設業界では人材採用の強化、人材派遣によるアウトソーシングの活用などとともに、建設DXサービスの定着強化を急ピッチで実施している。しかしゼネコンの施工管理者の建設DXサービスの活用は若手が中心で、場合によっては所長クラスでも「若手に任せよう」と及び腰になるケースもある。
各ゼネコンでは生産性向上や時間外労働削減が待ったなしの状況でどのような取組みを展開しているのだろうか。株式会社植木組(植木 義明社長)は9月22日に、東京・千代田区の同社東京本店で「デジタルツール導入勉強会」を開催した。
建設業の施工管理者は年齢が高くなるほど、従来のアナログ文化に依存する傾向にあり、人によりITリテラシーの格差があるのが実情だ。今回の勉強会では、デジタルが得意ではない所長級の技術者にもわかりやすく、デジタルに順応するための場となった。
上に立つ人の意識を変え、アナログ手法からの脱却を
植木組は1885年(明治18年)に創業し、新潟県柏崎市に本社を置くゼネコン。2代目、3代目長生橋をはじめとして、上越新幹線、関越自動車道など新潟県での数々の大型事業に関わってきた。また、信濃川の防災対策、日本初の消雪パイプ設置工事を成し遂げた功績もある。1973年に新潟証券取引所に株式上場し、1984年に東京証券取引所第一部上場、2022年より東京証券取引所スタンダード市場に移行した。
植木組本社は、JR柏崎駅前に位置し、敷地面積約7700m2に本社ビル・テナントビル、遊歩道を保有する。
植木組の働き方改革は、一般社団法人日本建設業連合会(日建連)が2017年12月に公表した「週休二日行動計画」などの動きに歩調を合わせたところから開始。そこでさまざまな施工管理のシステムやアプリ試行し、2019年からはスパイダープラス株式会社の国交省電子納品対応の建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を本格導入し、施工管理者の生産性向上につとめてきた。
植木組 本社建築企画部長の大橋芳樹氏は「実は各現場所長はいろんなソフトを利用し、またデベロッパーからの指定ソフトもあり、混在利用していた状況であった。後に本社で各ソフトの有効性を確認し、さらにサポート体制も含めて検討した。そこで当社が一番マッチしているのがSPIDERPLUSだったため採用した経緯がある。若い施工管理者はツールにすぐ慣れて使いこなせるが、本日集まった所長、主任クラスになるとこれまでのやり方があり、その手法にこだわっていたため普及が遅れていた。しかし、2024年4月から働き方改革関連法が建設業にも適用され、時間外労働の削減に迫られる必要があり、上に立つ人の意識を変える必要がある」と勉強会の狙いについて語る。
植木組本社建築企画部部長の大橋芳樹氏
時間外労働削減には発注者の理解も必要
植木組は、都心部を中心にマンション工事で多くの実績を持つ
しかし、こうしたソフトだけでは時間外労働の削減が実現できないことも実情で、発注者の理解が重要だと大橋部長は説明する。発注者に対しても建設業にも働き方改革関連法が適用することを周知している最中で、この周知徹底により、本当の改革につながるとの意識を示し、働きやすい現場環境の整備を展開中だ。
勉強会に出席した現場技術者からは、「従前から会社がICT技術を導入している中で、年齢や立場もあり、本来は取り組まなければならないことを若手に任せてきたが、今回の勉強会を通じて自分でも現場の品質向上につながり、時間外労働削減にも有効だと感じたため、本格的に活用していきたい」との感想があった。
とはいえ、全体として変わりつつあるものの、「意識改革についてはまだ途中」(大橋氏)だという。同社ではさらに手間を減らし、仕事を進める意識を共有し、労働時間の削減に本腰を入れる方針だ。