左から、古家信之氏(スパイダープラス社)、廣川修一氏(MODE)

左から、古家信之氏(スパイダープラス社)、廣川修一氏(MODE)

【スパイダープラス×MODE】業務提携でプラント領域のDX支援を本格化

スパイダープラス株式会社(伊藤謙自社長)は、シリコンバレー発スタートアップのMODE,Inc.(MODE社)と共同で9月29日、プラント・製造業従事者を対象に「設備保全の未来を変える!業務効率化ツールとIoTの組み合わせで実現する次世代のメンテナンス」と題したセミナーを開催した。

スパイダープラスは2023年7月に現在展開している「建築工事領域」に加え、「プラント領域」への展開を強化することを発表、プラント業界出身者を責任者とした専門部署を設立した。今後、プラント専門部署による営業やカスタマーサポートの提供に留まらず、プラント領域の活用に合わせた、図面・現場管理サービス「SPIDERPLUS」のアップデートや新サービス開発を行う。また、アライアンスやM&Aも組み合わせた積極的な事業展開を予定。プラント領域におけるDXマーケット・リーダーとしてのポジションを早期の獲得を目指す。

こうした背景もあり、スパイダープラスは同月にMODEとプラント事業向けで業務提携した。設備機器などの稼働状況のデータをリアルタイムに計測、解析、可視化することに強みを持つMODEとの技術を組み合わせることで、社会インフラを支えるプラントの安全維持や効率的な運用をDXで支援することが早期に実現可能であると判断した。MODEのサービスは建設会社向けの導入実績も複数あり、プラント領域のDXに留まらず、建設会社向けのDXサービスでも活用可能だ。今回はそのセミナーの内容をリポートする。

プラントの老朽化で業務効率化が課題に

セミナーでは、スパイダープラスの営業部部長の古家信之氏とMODEセールスディレクターの廣川修一氏が登壇した。

古家氏は、プラントメーカーで中近東エリアの海外営業を担当。アメリカに駐在し、プラントメンテナンスの拠点立ち上げに従事するなどの経験を持ち、その後スパイダープラスへ参画。現在はプラント・製造業向け専門部署を統括している。一方、廣川氏は15年間メーカーでの国内外営業、新規事業企画を経て、2018年にソフトバンクへ入社。クラウド部門で、主に物流業、製造業の顧客へのDX提案や導入支援や事業企画を歴任し、MODEへ入社している。まず第一部では、古家氏が「プラント業界の課題」を解説した。

直近10年でプラントの保全費用は増加傾向 / 出典:スパイダープラス社・MODE社の合同セミナー資料

重化学工業通信社が発表しているデータによると、直近10年でプラントの保全費用は増加傾向にある。今後は設備の老朽化という問題を抱えているため、保全費用が増加するトレンドは今後も続くと予想している。次に設備の老朽化が進んでいることでトラブルをいかに未然に防止するかが課題だ。回答として多かったのは、「故障の再発・未然防止」「高経年設備の対応」の両点。予期せぬトラブルや計画外停止をいかに回避できるかがプラント業界の課題と言えた。

プラントの設備の老朽化が進行しているため、トラブル防止に大きな関心 / 出典:スパイダープラス社・MODE社の合同セミナー資料

定期修繕の業務改善は多岐にわたる

また、プラント業界での定期修繕で非効率と感じる点についてアンケートを取ったところ、「着工承認待ち・着工手続き」「仕様確定待ち・指示待ち」「提出資料の作成」「工程変更・計画不足」などの回答があった。今後、定期修繕で業務の効率化は必要との意識が高まっていることが分かった。

業務効率化の対策は、「業務のシステム化」の回答が最も多かった。次に、「関心のある設備管理IoT化の技術分野」への問いに対しては、「現場用タブレット端末」の回答も多く、「AIによる故障予兆監視・予測」が続く。

アンケート結果によりプラントの定期修繕にはいくつか業務改善の余地があることが分かった / 出典:スパイダープラス社・MODE社の合同セミナー資料

プラント業界のDX化で働き方改革を

スパイダープラスの「SPIDERPLUS」は、1,700社・6万3,000人以上に利用され、建設業界のほかプラントメンテ、プラント工事、プラントメーカーでも導入が拡大している。

プラント現場では、まだ紙ベースでの点検表を持ち歩きながら日常点検をするケースも多い。紙ベースで入力した値をエクセルや社内の基幹システムに転記をすることも手間がかかり、また転記ミスをする課題がある。しかし、「SPIDERPLUS」を導入すれば、現在使用中の帳票を、見た目そのままでデジタル化や、入力データがクラウドに蓄積されるため、シームレスに情報共有可能だ。

実際に導入した株式会社コベルコE&Mからは、「さまざまな機能があるため、SPIDERPLUSで完結できる、クラウド経由で情報共有ができるため、現場と事務所をいったり来たりすることが不要になった」との感想が寄せられた。結果的に非効率であった業務が減少し、仕事の終わる時間も早まったという。最後に2024年4月1日から「働き方改革関連法」が建設業に適用されることから、一刻も早い「SPIDERPLUS」の導入を呼びかけた。

プラント業界も業務システム化に注力 / 出典:スパイダープラス社・MODE社の合同セミナー資料

スパイダープラス×MODEの業務提携の狙い

セミナーでは、スパイダープラスとMODEは社会インフラを支えるプラントの安全維持、効率的な運用を両社のサービスを連携し、実現する方針を示した。古家氏と廣川氏の両者がトークセッションで「日常点検のさらなる効率化」「トラブル発生時の初動対応の迅速化」「定期修繕計画の精度向上」の3点について連携することでより効率的なサービスの可能性を探った。

しかし、建設業界と同じようにプラント業界でも個人や年齢層によりITリテラシーの格差がある。頑なにITに関して拒否反応を示すケースもあるようだ。これについて古家氏は、「サービスの導入で終わりではない。当社は顧客と伴奏しながらサービスを社内にどう組み込むかの提案や業務ヒアリングを行うカスタマーサクセスという専門部隊を抱えており、それを活用することが一つの方法。次に社内で抵抗勢力が多い中、サービスを全社導入できるに至った経緯を聞いてみると、社内で推進者がいることがポイントだ」と語る。廣川氏は、「使える内容を可視化していくことが肝要。データを見える状況にして比較してみてもらうことが踏み出す一歩と言える。我々は現場に強いので現場で使えると思っていただける方をいかに増やすこともポイントといえる」と述べた。

最後に古家氏は、「スパイダープラスはMODEと組み、プラントメーカー向けにより使いやすいようにプロダクトを進化させていく」、廣川氏は、「当社は顧客のDXやIoTの支援を展開しているため、スパイダープラス社と連携し、ワンストップで提案していきたい」とそれぞれこれからの提携の方向性について決意を述べた。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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