TOTOショールームの「和洋リモデル工法」

TOTOショールームの「和洋リモデル工法」

【TOTO】学校トイレの3割が”和式” 「95%洋式化」へ「和洋リモデル工法」をアピール

1990年代でオフィスや商業施設のトイレは和式から洋式へと変わり、快適性を増した一方、学校トイレにはまだまだ和式が残っている。トイレ関連6社による研究活動組織「学校のトイレ研究会」(鎌田元康会長、東京大学名誉教授)が2021年度に全国の公立小中学校職員を対象に、「学校で児童・生徒のために改善が必要と思うもの」についてアンケートを行ったところ、「トイレ」が62%と最も多かった。しかし、⽂部科学省「公⽴学校施設のトイレの状況について」(2023年9月)によると、洋式トイレは68%に留まり、未だ約3割が和式トイレだ。

内閣府が2025年度までに「95%の洋式化」の中長期目標を掲げたことで今後、洋式化の加速が見込まれるが、従来工法では和式トイレを洋式とするためにはおよそ7日間かかることがネックだった。そこで、TOTOでは2000年に開発した工期2⽇、1フロアで完結する「和洋リモデル工法」を2017年度より学校施設への導入を強化し、同工法は2022年度に約1.3万台もの学校トイレの洋式化工事に採用されている。

公立小中学校の洋式化率は”東高西低”

TOTOは非住宅のトイレ全般をパブリックトイレと定義している。新たな価値を提案し、さらなる「清潔で快適なトイレ文化」を実現し、世界に向けて発信していく方針だ。この新たな価値とは、クリーン技術、タッチレスとDXによる見える化の3点。このパブリック分野では、とりわけ学校トイレの洋式化工事が大きく伸びており、学校・大学などの学校施設への導入を強化する考えだ。

アフターコロナの今、商品に求められることは、タッチレス、トイレの洋式化といえる。文部科学省は公立小中学校のトイレの洋式化に注力しており、洋式化率は2016年度では約43%だったが、2023年度では68.3%へと7年でプラス約25%と伸長した。

年々洋式率が高まり2023年度の調査では68.3%に / 出典:文部科学省

政府は2025年度までに公立小中学校の洋式化率95%を目標にし、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づき、防災機能も強化、バリアフリー化やトイレの洋式化を支援している(ただし、この95%という目標数値は2025年までの達成は技能者不足もあり、2030年まで延長される可能性がとの観測もある)。

文部科学省データよりTOTO作成

ちなみに公立小中学校の洋式化率のトップは富山県の約86%だが、傾向としては”東高西低”でこれから西日本地方での工事が本格化することが想定される。


都道府県⽴高校の洋式化率はわずか36%

一方で、高校トイレはさらに深刻だ。学校トイレ洋式化を推進する議員ネットワークの調査(2017年4月)によると都道府県⽴高校(全国約3,200校)のトイレの洋式化率は36%に留まり、防災の避難所として指定された高校2,199校の体育館への多目的トイレの設置率は全校平均35.8%だ。小中学校は義務教育のため、国の補助予算が付く。しかし高校は地方自治体の全額負担となるため、洋式化が遅れている。

国が学校施設のトイレの洋式化に注力する背景には、和式トイレが便や尿の飛び散りにより、菌の拡大やにおいの原因となることがある。洋式トイレと比較し、和式トイレは格段に菌が多く、不衛生だ。つまり、和式トイレを1つ残すことがリスクにつながるのだ。加えて、災害大国の日本では、政府は災害が発生した場合、学校を中心とした公共インフラを活用する方針だ。災害避難場所となった学校での生活において最も困ることはトイレであり、その中でもとくに弊害となるのは和式トイレだ。学校のトイレを洋式化することは、防災の面でも重要な役割を果たす。トイレの洋式化改修工事に大きなビジネスチャンスがあるのは、このような背景もある。

そこで、TOTOは2000年に開発した「和洋リモデル工法」を本格的に導入していく姿勢を示した。和洋リモデル工法とは、和便をカットし、既存の排水を生かし、超速硬モルタルで埋め戻して床を作るため、工期が2⽇、1フロア施工で和式便器を洋式便器に取替えができるオリジナル工法で、様々な建築用途で累計約18万台の実績がある。

和洋リモデル工法はこれまで学校施設以外にもさまざまな実績がある。「成田国際空港旅客ターミナル」では、100ブース以上の和式トイレが残っていたが、これを洋式化。奈良公園東大寺大仏前公衆トイレでは、訪日外国人の増加に伴い、短工期での洋式化のために採用された。また、2019年6月のG20の開催場所だったインデックス大阪は、開業は1985年と古く、個室トイレ237室のうち38室に和式トイレが残っていたため、2億2700万円かけてトイレを一新したという。

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和洋リモデル工法の施工認定店は約500店

和洋リモデル工法は誰でも組めるわけではなく、施工はTOTOが認定した施工店のみが工事することが出来る。品質を確保するために専用部材を使用し、所定の方法による施工が必要になるためで、全国に認定施工店は約500社。認定施工店制度をスタートしたのが2003年。2010年から公⽴⼩中学校・管公庁関係に採用が拡大し、2021年には過去最高出荷を達成。リニューアル時代に伴い、和洋リモデル工法の需要がさらに増大している。

TOTO株式会社 販売統括本部・商品営業推進部・パブリック商品営業グループの高田勝一郎氏は、「TOTOで20年間モデルチェンジしなかった工法はありませんし、販売から20年後に一番売れた商品はこれまでありませんでした。そういう意味では、特異な商品と言えるでしょう。TOTOのヘビーユーザーは設備業者。そのため設備業者がラクに施工できる工法を開発したことが背景にありました」と語る。

従来工法では、トイレを洋式化するために7日間かかる。階下トイレの封鎖、天井解体、既設便器の撤去、床の解体、排水管・給水管の立上げ、コンクリート打設、天井復旧(点検口取付)、床仕上げ,ブース手直し、器具取付けと、施工工程が多いためだ。和洋リモデル工法は専用部材を使って必要最小限の範囲で工事を行うことが大きな特長と言える。「足場を立てて床下に入る作業は危険。作業もラクなのものではありません」
「階下の既存排水管はそのまま流用するため、工事現場から出る廃材も少なく環境にも配慮した工法です」(高田氏)

週末工事も可能な和洋リモデル工法

和洋リモデル工法は、TOTOのさまざまな独自技術によって構成される。とくに3つの技術に注目だ。まず1つ目の「和便カット技術」では、均一に切る技術が求められる。TOTOはリムから一定の深さで水平に切削することが重要と考え、所定の位置で確実に切削可能で、施工品質安定と短時間施工・粉塵抑制を実現する「和便カッター」を開発。和⾵便器を破損、落下させない、最適なカット位置、方法を提案し、粉塵飛散を防止しながら短時間に、誰でも安定的に切削できる点が特長だ。

2つ目の「排水管接続技術」では、既存の和⾵便器の排⽔⼝に接続し、現場レイアウトに合わせた洋⾵便器の位置に排⽔⽴上げが可能な「専用排⽔管」を開発。3つ目の「埋め戻し技術」では、和便を破損させずに短時間で硬化する高強度の「超速硬モルタル」をセメントメーカーと共同開発。このモルタルは、硬化時の膨張・収縮が極めて少なく、既存の和⾵便器が割れない専用モルタル。硬化に時間がかかるという従来の課題を解決し、翌日には器具取付けが可能になり、工期短縮に貢献している。

従来工法の施工手順と和洋リモデル工法の活用と比較において。赤線は和洋リモデル工法(既存和風便器、排水管の活用)のため工事不要となる手順。赤破線は和洋リモデル工法・専用部材を活用して行える手順。

マニュアル通りに施工すればTOTOが保証

さらに、TOTOでは3つの安全・安心を提起している。1つ目の「床強度」は、荷重・衝撃試験を実施し、各試験に対し、ひび割れや破損がなく、建築基準法の床強度の2倍以上であることを確認。便器内にも充填し、便器と床を一体化した専用モルタルがコンクリートスラブで支持する点が大きく、「現在、床が抜けた事故は1件もありません」(高田氏)と、床強度を確保している。

2つ目の「認定施工店制度」では、「TOTOが定める標準施工を実施すれば、TOTOが工事品質を担保・保証する」点を強調している。つまり「TOTOが示すマニュアル通りに施工すれば、メーカーであるTOTOが保証する」と言い切ることで、地方自治体や経営者に「和洋リモデル工法」の採用を呼び掛けている。

3つ目は「耐火認定取得」だ。意外にも思われるが、学校で火災があったときに、とくに火が回りやすいのは「廊下」と「トイレ」だという。ある地方自治体からは「和洋リモデル工法も大臣認定を取得すべきではないか」との意見もあり、第三者認定機関で試験を行い、国土交通大臣耐火認定の取得に至った。


工事中のアスベスト飛散対策にも配慮

また最近、こうした工事でクローズアップされているのがアスベストによる健康障害問題だ。アスベストを原材料として使用した建材に関し、過去の使用状況、改修、解体時の取扱いなどに関心が高まってきている。そこで政府としては石綿関連で、「大気汚染防止法」「石綿障害予防規則」を改正し、一部を除いて2021年4月に施行した。

それに伴い、TOTOでは「和洋リモデル工事アスベスト対応TOTO販社ルール」を決めた。アスベスト作業レベル3の工事例としてのルールは、「石綿除去作業時の掲示」「防塵マスク・ゴーグル・防護服、ゴム手袋、シューズカバーの着用」「飛散防止壁養⽣の徹底」「飛散防止ブース養⽣の徹底」「飛散防止出入口養⽣の徹底」「湿潤(大気中)和便カット」「残材処理管理型(元請会社責)」をポイントとしている。

在来工法でトイレを洋式化する場合は工事階だけではなく下階でも綿飛散防止対応(隔離養生・負圧不要)が必要となりコストや工期がかかる。和式便器から洋式便器への改修工事で工事する階下の天井・配管に石綿が含まれている場合、石綿飛散防止対応が必要となる。そこでTOTOは、石綿含有建材の処理は費用もかさむことから、1フロアで工事が完結する和洋リモデル工法の採用を進めている。

2022年4月1日から、建築物等の解体・改修工事を行う施工業者は、大気汚染防止法に基づき工事の石綿含有建材の有無の事前調査結果を都道府県等に報告することが義務づけられた。報告は、厚生労働省が所管する石綿障害予防規則に基づき、労働基準監督署にも行う必要がある。その内容は、①解体部分の床面積が80m2以上の建築物の解体工事、②請負⾦額が100万円以上の建築物の改修工事が対象だ。また、2023年10月から一般建築物石綿含有建材調査者による調査義務化した。

TOTOグループで和洋リモデル工事を請負う際の法令順守及び和洋リモデル認定店へのアスベスト対応情報発信を継続して実施する。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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