大洋建設が取り組む「建築現場の働き方改革」とは
建築業をメインとする大洋建設株式会社(本社:横浜市戸塚区)に取材する機会を得た。同社は、働き方改革(週休2日の確保、残業削減など)の実現に向け、建築現場業務のデジタル化を軸にしたDXに積極的に取り組んでいるらしい。同社が取り組む建築現場の働き方改革とはどのようなものなのか。
三浦 浩二さん 大洋建設株式会社 執行役員 営業本部 副本部長
大塚 望生さん 大洋建設株式会社 管理本部 労務部部長 兼 財務経理部副部長
大森 真央さん 大洋建設株式会社 管理本部 労務部
内勤に比べ、現場の休みは年間11日少ない
――まず、大洋建設の特長を教えていただけますか。
大塚さん 弊社の主な事業としては、総合建設業、不動産販売業、不動産賃貸業の3つがあります。中小ゼネコンでありながらも、さまざまな用途の建物を手がけられる総合力があることが特長だと考えています。公共施設や福祉施設、共同住宅や集合住宅、個人住宅まで手がけています。
三浦さん 公共と民間の割合は2:8ぐらいです。
――社員の勤怠管理はどうなっていますか?
大塚さん 会社カレンダーで管理していて、1年に1回内勤と現場と別々のカレンダーで運用しているカタチになります。
大森さん 会社カレンダーでは、内勤の年間休日が112日、現場の年間休日は101日になっています。現場の休みが少ないのが現状ですが、現場の休みを増やそうとしているところです。
ICT施工は遅れているものの、安全書類などのデジタル化を推進中
――現場の話で言うと、施主によって異なると思いますが、週休2日を考慮した工期の確保はできているのですか?
三浦さん 公共工事の場合は、最初から週休2日と謳われている現場がありますので、その場合は週休2日でやっていますが、民間工事の場合は、臨機応変に対応しているのが現状です。やはり収益物件が多いので、施主さんからは「なるべく早く」とのご要望をいただくわけですが、私どもとしては週休2日を確保するため、なんとか対応しているということです。
――土木に比べると、建築はICTなどのDXの導入を進めにくいという話を聞いたことがあるのですが、DXの導入はどうなっていますか?
三浦さん 建築でも当然、ICTなどを導入してDXを進めようという動きはありますが、建築工事は細かいところがあるので、土木に比べて導入が遅れていると思っています。弊社の取り組みとしては、安全書類の管理、品質管理、在庫管理といった分野でデジタル化に取り組んでいるところですが、本格的なICT機器などの導入も進めようとしているところです。
リアルタイム勤怠管理、現場ヒアリングなどを通じて、残業を減らす
――会社としての働き方改革への取り組みの進捗はどうですか?
大塚さん 就業規則の見直しをはじめ、会社カレンダーや勤怠システムの変更など、2024年問題に向けていろいろなことに取り組んでいるところです。
大森さん 2021年4月に新しい勤怠システムを導入しました。それまでは、社員の勤怠管理は事後申請だったのですが、このシステムを導入後、リアルタイム打刻で管理するようにしたわけです。以前は5分単位での打刻でしたが、1分単位で打刻するシステムです。これによって、勤怠の状況を把握することができるようになりました。
大塚さん 今も状況把握を進めているところですが、勤怠システム導入から2年が経過して、やっと十分なデータが集まりつつあるところです。これから残業をどう減らしていくかという段階に入っていくことになります。
――現場の残業も含めて減らしていくということですか?
大塚さん そうですね。残業が多いのはやはり現場なので。
三浦さん 各社員が持っている携帯電話で勤怠管理しているわけです。場所も把握できます。残業が多い社員に対しては、ヒアリングを行なって、場合によっては人を増やしたりすることで、残業を減らしていっています。
部下を休ませるのも上司の仕事
――いわゆるヤミ残業問題についてどうお考えですか?
大塚さん 確かに起きかねない問題ですが、当社の場合は、各社員が使用するパソコンがシャットダウンされた時間と勤怠時刻の差異をチェックできるようにしています。そういうことが起きないよう取り組んでいるところです。
――有休の取得率はどうなっていますか?
大塚さん ほぼ100%です。会社として、各職場に対して有休を取得するよう積極的に促していますので。
大森さん 各職場から有休取得表を提出してもらっています。
三浦さん 10年ほど前から雰囲気がガラリと変わりました(笑)。
大塚さん 部下を休ませるのも上司の仕事という考え方でやってもらっています。
――会社として、現場所長さんに対してそういう指導をしているということですね。
大塚さん そうです。ただ、本社にいると、実際に現場で起こっていることがわからないので、私たち労務の人間も現場に行くことにしています。当事者に会って、どういう理由で休めないのか、どういう理由で残業が増えているのか、直接ヒアリングした上で、対応を考えるということです。
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事務員が現場に常駐し、安全書類などの書類全般の業務を担当する
――聞くところによると、事務員さんが現場に常駐し、安全書類作成業務に当たっているそうですが、これは大洋建設オリジナルの取り組みなのですか。
三浦さん とあるJVの現場で、他社の事務員さんが定期的にいろいろな現場を回っているのを見て、それを参考にしました。ただ、現場の安全書類をはじめ、事務作業全般を担当する事務員を常駐させるというのは、当社のオリジナルです。
当社には、学校で建築を学んだ事務員が現在4名ほどいまして、彼らに現場に常駐してもらい、安全書類の作成といった業務を担当してもらっています。常駐する現場のほか、複数の安全書類管理も担当してもらっています。安全書類以外の施工管理や図面修正、品質管理に関する書類業務の管理もやってもらっています。
普通の事務員さんは、請求書業務のみとか、業務が限定されていることが多いです。当社の事務員が書類業務全般を担当できるのは、ある程度建築や現場に関する知識を持っているからこそだと思っています。
男性社員の育休も取得済み
――大洋建設の働きやすさについて、どうお考えですか。
大塚さん 当社では、育休取得にもチカラを入れています。男性社員も3名が取得済みです。現場ではまだ取得実績がないのですが、現場にもしっかりアピールしていきたいと考えています。
大森さん 私は入社3年目なのですが、とにかく休みが取りやすいので、良い会社だなと思っています(笑)。
三浦さん 上司であっても話しやすい環境がある、アットホームな雰囲気があると思っています。