施主はお客様だけど、神様じゃない

施主はお客様だけど、神様じゃない

お客様は神様か?

設計者やゼネコン施工管理者として、施主の話に何度も耳を傾け、施主が言葉で表現しきれない想いや気持ちを精一杯汲み取り、満足いくような提案を繰り返す。それこそがプロの仕事だ。

施主がお金を払って建築するのだから、客の意向は無視できない。これは当然のことだ。ただ、いくら客と言えども、建築に関しては所詮素人だ。

プロとしての自信がない人や組織ほど、「お客様は神様です!」と言わんばかりに、なんでもかんでもハイ!ハイ!と二つ返事で首を縦に振り、施主の言いなりになる。

それは客を大切にしているからではなく、後で施主からなにか言われたとしても「お客様の意向に従っただけ。こっちの責任ではない」と責任逃れするための布石に過ぎない。

このような無責任な設計者やゼネコンは日本にもたくさんあるが、私がいた海外の建築現場でも同じ経験をしたことがある。

海外で経験した、お客様は神様の失敗例

当時所属していたのは日系のゼネコン。その会社はなんでもかんでも施主の言いなりになり、その結果信じられないことが起こった。

あろうことか、客が勝手に現場に作業員を送り込み、勝手に石膏ボードにコンセントやスイッチなどの開口を開けはじめたのだ。しかも、それらの位置が本当にその位置でいいのか?と思われる位置に開口が開けられ、さらには開口の高さが揃っておらず、これどうすんだ?という状態に。

現場の施工管理者に聞いても首をかしげるばかりで、ラチがあかない。こんなこと許されるのか!と怒っても、客の要望だから仕方ないという雰囲気で、そのスタンスに情けなさすら感じた出来事だった。

いくら客とはいえ、そんな身勝手を許して、自由にやらせること自体おかしい。最後は全部、仕事を請け負った元請のゼネコン側が責められるのは明らかだ。

勝手にやるほうもやるほうだが、やらせるほうも無責任すぎる。ここまでくると、会社としての方針どうこうではなく、現場に関わる人間たちの気持ちに問題がある。ちゃんとした建築をつくろう!という気持ちがなさすぎるのだ。

建築に関わる人間として、全ての根底に建築に対する愛情と客に対する思いやりがなければ、いいモノづくりはできない。人間同士、誰に対しても、どんな時でも、まずは自分が本音をさらけ出す覚悟がなければ、いい設計、いい現場管理などできるはずがない。

似たような状況の会社は日本にもたくさんある。「お客様は神様です!」なんて言ってるうちは、一生その境地には辿り着けないだろう。

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アジア、アフリカなど海外の建築現場で長年、施工管理に従事している。世界中で対日感情が良好なのは、先人たちの積み重ねである。日本人として恥ずかしくない技術者でいたい。
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