「マムシが出た!」仕事中に大便をガマンできなかった話

「マムシが出た!」仕事中に大便をガマンできなかった話

福島原発の建設現場で「マムシ問題」に直面した話

ゼネコンや地域によって建設現場の風習や工事の進め方はそれぞれ異なります。東日本大震災が発生する前、私は東京電力福島原発の建設工事に参加しており、そのとき初めて「マムシ」に遭遇しました。

大便を「マムシ」と呼ぶのは、この現場が最初で最後。しかし、どこの現場でも「マムシ問題」に直面すると思いますので、その対処方法をお教えします。

どこの現場でも「マムシ」は出る!

ある日、「出たッ!マムシが出たぞ!」という鳶職人の叫び声が聞こえてきました。当時、職長を任されていた私は、鳶40人を手配していたので、怪我人でも出たら大変だと思い、慌ててマムシが出没した現場へ向かいました。鳶職人に聞くと、マムシが出た場所は、建物の地下2階部分。1階のスラブ(鉄筋コンクリート製の床)を強度が出るまで受けておくための足場(支保工)の2段目約3.5メートルの位置だと言うのです。

そんな場所にマムシが出るわけがない。だって山や渓流の近くでも遭遇するヘビといえば、シマヘビ、ヤマガカシ、青ダイショウなどで、マムシは滅多に見ることはありません。しかも、ここは福島原発を建設する建設現場で、太平洋に面した場所です。

しかし、鳶職人とその仲間4人は、危険すぎてこれ以上の仕事はできないと言い張ります。この日、4人の作業手配はその部屋の支保工の解体でした。職長としては、作業員の安全確保のため、危険を排除するのも仕事の一環です。私はマムシ退治のため、棒を片手に意気揚々と立ち向かいました。

すると鳶職人たちは「マムシは誰かが捨てた軍手の下でトグロを巻いている」「押さえつける棒なんかはいらないよ、それよりゴミ袋と、雑巾のようなものが必要だ」などと、なにやらニヤニヤしています。そして、困惑している私の顔を見てみんな大笑い。

そう、マムシというのは、危険な異物という意味で、職人が仕事中に我慢しきれなくてやむなくしてしまった大便のことでした。すぐに処理しなければ、仕事にならないのは同じことです。私は颯爽とマムシ退治に行き、キレイに危険を排除しました。

他の現場における「マムシ秘話」

大便をマムシと呼んだのはこの現場だけでしたが、その後も私は何度かマムシに遭遇しました。現場の仲間からも様々なエピソードを聞きます。

◎Eさんの経験

トイレに向かっている途中、結局、間に合わなくて出てしまい、しかも、七分(職人がはいている幅広の作業ズボン)の膨らんだ部分に落ちたままで、後処理に大変困った。

◎Kさんの経験

昼の弁当に当たり(食中毒)、腹痛を我慢しながら仕事をしていていたが、すぐピークに達して垂れ流し。そのまま病院に担ぎ込まれた。

私自身も作業開始後1時間もしないで、脂汗をかきながらトイレに駆け込んだことが何度もあります。建設業は体を動かすことが多いゆえ、特に朝などは急激に腸の働きが活発化してしまうのです。

建設現場とトイレの問題。そして職長としての心得

建設現場によっては、その規模のわりには、トイレが作業場所の近くに設置できない場合や、「大」の便器数が少ない場合などがよくあります。トンネル深部や、ビルの高層階などで作業している場合には、間に合わないこともあります。

マムシがいる場所に手配を受けた職人の立場から言うと「ふざけるな!」といいたい気持ちになるのもよくわかります。また、やむなくマムシを排出した本人の気持ちをわかろうと思える人が少ないのも現状でしょう。

私は、マムシ出現の報告を聞くと、今まで顔色ひとつ変えずに「マムシ退治」を、みんなが働く環境づくりの一環として当然のように受け止め、素早い処理を心がけています。

「奴はすでに死んでいるマムシだ。噛み付くわけでもない」多少のことは手をよく洗えば済むはず。それより処理しながら思うことは、「この人も苦しかったんだろう、仕事に夢中になって間に合わなかったんだろうな」と思える自分になることが大事だということです。

「鳶が人のしたウ〇チの処理ができるか!」などと言う人がいるかもしれない。確かに職人にそれは無理かも知れない。しかし職長という名の付く責任職では無理とは言えないのです。人が嫌がる仕事も率先してやってこそ職長の責務であります。

「鳶は現場のはながた」というのはある意味表現されない時代になりました。昔の鳶は誰もが怖がる高い場所で華麗に仕事をこなし、みんなから賞賛され現場のけん引役。昔の鳶は現場運営や段取りに関しても、意見の言える立場で他職からも尊敬されていたと記憶しています。

しかし、これからの建設業界は、もっと幅の広い意味でのけん引役で「みんなに安心をあたえる」「何でも相談できる鳶」として変革していかなければならない時代だと考えます。

「笑顔は本物の力の象徴」です。周りの人に気を使わせているのは本物の力ではありません。

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鳶職です。職長経験多数。かつて建設現場の花形と言われた鳶に思いを馳せながら、激動の建設現場を渡り歩いています。
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