すっきりとした浴槽まわりとシックカラーがバスルームの質を高めるVNシリーズ Dタイプ(1620サイズ) / 出典:TOTO説明会資料

すっきりとした浴槽まわりとシックカラーがバスルームの質を高めるVNシリーズ Dタイプ(1620サイズ) / 出典:TOTO説明会資料

【TOTO】日本初のユニットバス誕生から60年。”デザインとテクノロジー”が融合した新商品を発表

TOTO株式会社(清田徳明社長)は、ホテル向け洋風ユニットバスルーム(トイレ洗面付き3点タイプ)をフルモデルチェンジし、2023年12月から発売を開始した。今回、発売したホテル向け洋風ユニットバスルームは、リモデルに求められる短期間の工事に配慮、くつろぎ感 を向上した。

宿泊者はホテルを選ぶ際、「水まわり」を重要だと考えていることから、新商品では、「浴槽の形状」「洗面・トイレ空間」「出入り口段差・浴槽またぎ」によりくつろぎ感を向上、宿泊者の満足度を高める。リモデルに最適な短期間の工事に配慮した3分割構造は、部材が小さいため搬入しやすく、少ない解体範囲での作業が可能だ。ユニットバスの組立や客室の仕上げや解体・撤去作業をまとめてリモデルすれば、効率的な改修工事が実現する。

TOTOは、1964年に日本初のユニットバスルーム(JIS規格)をホテルに納入。その後様々なニーズを採用したユニットバスルームを提供してきた。「きれいと快適」「環境」を両立するTOTOらしい商品を「サステナブルプロダクツ」と位置付け、国内だけではなくグローバルに普及させることで地球環境に配慮し、豊かで快適な社会の実現に貢献する考えだ。このほどTOTOバスクリエイト株式会社 本社・佐倉工場で開催された「ホテル向け洋風ユニットバスルーム新商品説明会」の内容をリポートする。

ユニットバスは今や建築業界では必須の工法

説明会では、橋口裕昭氏(TOTO浴室事業部事業部長兼TOTOバスクリエイト株式会社 社長)がTOTOの浴室事業の解説から開始した。

TOTOの浴室事業は1958年にFRP浴槽「トートライトバス」の発売からスタート。6年後の1964年に日本初のユニットバスルームを納入。その後拡大を続け、国内の浴室の売上は2022年度では1079億円に達し、日本住設事業の中でも売上高の約1/4を占めるほどの重要な商品に成長した。

TOTO日本住設事業での浴室事業は売上高の1/4 / 出典:TOTO説明会資料

1964年は東京五輪を控え、各ホテルで建設ラッシュ。その中で施主から求められた性能は第一に工期短縮だった。「当時短い工期の中で1000室以上の浴室を納入しなければならず、そこでユニットバスが誕生した」(橋口氏)

他にも防水性や軽量化に優れており、初代ユニットバスルームは今でも完成度の高い商品と言える。

TOTO浴室事業について解説する橋口裕昭氏(TOTO浴室事業部事業部長兼TOTOバスクリエイト株式会社 社長)

東京五輪時の60年前は、在来浴槽が主流であった。ユニットバスは当初、ホテル向けだったが、アパート・マンション、戸建て住宅、マンションリモデル向けと様々な用途に拡大し、業界初の商品も投入し、けん引。2018年3月には累計1000万台も突破した。

「我々がイノベーションを重ねてきた歴史の中でユニットバスが浸透し、今やユニットバスは9割に達し、多くの用途で導入され、国内建築業界にとって必須と言えるほどの工法に成長した」(橋口氏)

ユニットバスルームは建築躯体に依存しにくいので在来浴槽よりも工期短縮が可能 / 出典:TOTO説明会資料

デザインとテクノロジーの融合により新機能が追加

ユニットバスルームのラインアップとしては、戸建て・集合住宅向けに機能を充実した「シンラ」、戸建て住宅用にはデザインに優れた「サザナ」などを発売している。浴室商品の最新アイテムでは、「デザインとテクノロジーの融合」がキーワード。ファーストクラス浴槽では、人間工学などを活用し、脱力できる入浴感を数値化し、構造に反映した。デザインも曲線美が光る商品に仕上げているが、製造的には困難であっても妥協せずに実現した。

次に、浴槽のお湯を循環させて、肩や腰にお湯を当ててリラックスができる機能「楽湯(肩楽湯+腰楽湯)」では、快適性は言うまでもないが、吐水の美しさにこだわりながら製造した商品。調光調色システムでは、6段階で照明の色温度・明るさを変化させ、日の出から日没後までの1日の光のイメージを表現。最新の機能では、「おそうじ浴槽(自動で浴槽を洗う機能)」「床ワイパー洗浄(浴室の床のきれいが続く機能)」、あるいはIoT商品では外出先や家の中からでもスマートフォンやスマートスピーカーで楽に入浴の準備ができ、入浴中だけではなく入浴前後の快適性も追及している。

こうした浴室商品の進化により、TOTOの調査によると、「シンラ」購入のユーザーの声では95%が「満足」であり、高い評価が挙がった。

提供する新商品は3シリーズ / 出典:TOTO説明会資料

前述したとおり、ユニットバスルームはホテル向けが原点であり、著名ホテルに納入してきた歴史がある。著名ホテルでは性能要求が高く、TOTOも集合住宅向け商品などで培ってきた技術や快適なアイテムを搭載し、ホテル向け商品にも継承してきた。今回の新商品は「VN」「VP」「VH」と洋風ユニットバスルームでは3シリーズを提供している。

宿泊施設の改修ニーズは回復基調へ

そして、鈴木雅大氏(TOTO 商品営業推進部部長)は、インバウンド回復などの情勢変化を受けたホテル市場の現在の動向を解説した。

今回の新商品はビジネスやシティホテル向けに納入するが、鈴木氏によると「比較的コストパフォーマンスを重視するホテル向けにつくられた商品」だという。現在、ビジネスマンがホテルの中でくつろぎたい想いが高まる一方、シティホテルで宿泊するファミリー層も同様な想いも強いことから、日本でのビジネスやシティホテルの区分がかなり曖昧になり、ビジネスユーザーや国内外の観光客の客層も多様化している。

ホテル市場に目を向けると、延べ宿泊者数は2019年の595.9万人をピークにコロナ禍の2020年には331.7万人、2021年の317.8万人と激減したが、コロナが終息した2022年には454.8万人、2023年(1~8月の第2次速報値を合算)では385万人と、コロナ前の水準に戻りつつある。アフターコロナ後にやりたいことの第1位が「国内旅行」(出典:新型コロナウイルスの影響拡大を受けた消費者の行動・意識変化 株式会社ヴァリューズ調べ)となったアンケート結果もあり、今後は国内旅行がトレンドになることが想定される。

政府も2023年3月に閣議決定した「観光立国推進基本計画(第4次)」では観光を成長戦略の柱、地域活性化の切り札と位置付け、持続可能な復活を目指している。

TOTOホテル向け浴室商品出荷状況指数 / 出典:TOTO説明会資料

TOTOのホテル向け浴室商品出荷状況指数によると、2019年度を100とした場合、新築向けは2020年度が52、2021年度は38、2022年度が35と下落が続いた一方、リモデル向けでは2020年度が51、2021年度は40であったが、2022年度は66と回復傾向に向かった。

「完全回復とは言えないが底を尽きつつ、しっかりと戻りの傾向になっている。これは観光需要が活発になり、施設を改修するニーズが高まっていることの表れといえる」(鈴木氏)

宿泊業の人手不足については、「人手不足に対する企業の動向調査」(帝国データバンク)の調査により分析した。コロナ前の2019年7月では正規が70.8%、非正規が61.9%と人手不足感が強かったものの、コロナ禍では正規・非正規とも10%台まで下がった時期もあったが、コロナ終息後はコロナ禍以前の水準を超え高止まりとなり、旅館・ホテルにとって業務効率化は大きな課題の一つと言える。

鈴木雅大氏(TOTO 商品営業推進部部長)

一方、物流業や建設業の人手不足は、「2024年問題」を控え、さらに深刻化だ。輸送能力の不足、工期、建設費の増大の影響が懸念されているところだが、TOTOとして施工者に対し省施工の製品を提供し、製品を効率的に運んでいくために、望ましいものづくりを提案する。

これまでTOTOは宿泊施設利用に関する調査を行った結果、ホテル運営側には、「短工期で工事完了」「解体・搬入・設置・組立の効率化」「客室スペースと浴室を有効に取り合う」「清掃時間、清掃員の作業効率化」、ホテル利用者には「ゆったりして入れる浴槽」「使いやすい洗面・トイレ空間」「出入りしやすい浴槽」「きれいで清潔な浴室空間」の双方のニーズを満たすアイテムを搭載した新商品を発売した。

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バスルームがホテルの価値を向上させる

新商品の内容は、山田達矢氏(TOTO 浴室商品企画グループ)が説明した。コンセプトは「このバスルームが、ホテルをより魅力的にする」で、ユニットバスルームからホテルの価値をアップグレードすることを目指した。

浴槽を快適空間とするため、浴槽内が広く見える角丸形状とし、広々とした浴槽底面で心地良いバスタイムをサポート。足元も従来製品は935mmからサイズによって異なるが1,062mmへと拡張した。カウンター周りでは圧迫感を軽減する配置にした。トイレの足元も広々とし、身長が高い男性でも動作しやすい設計だ。また浴室の出入り口を広げたほか、段差の低減も実施し、WEB調査結果を踏まえ、浴槽には動作しやすい手がかりを設置するなど高齢者や障がい者に配慮するバリアフリーを施した。

デザイン性の向上にも配慮し、従来の11柄から19柄に増加し、目引き感やトレンドを把握し、ホテルや設計者の要望に応えた。

丸みを帯びたデザインで使い心地のよい洗面スペースがやわらかな雰囲気を醸し出すVPシリーズ Mタイプ(1418サイズ)

新商品では躯体から見直し、3分割構造を採用し、運搬・組立性が向上し、出入り段差や必要設置寸法を低減することでリモデル性が高まった。分割構造により、サイズ・重量が低減し、従来搬入が困難だった場所にも対応可能だ。

従来品では作業員2~3名での運搬で周囲を確認しづらい欠点があったが、新商品では搬入に必要な寸法が約40%減り、重量も約半分になるため、1人での運搬も可能となる。このほか、部材サイズダウンにより組立時の客室の解体範囲も最低限になる可能性もある。

新商品を説明する山田達矢氏(TOTO 浴室商品企画グループ)

リモデルによりランニングコスト削減に効果

そこでTOTOは今後、ホテルオーナーに向けて、ホテルの魅力を高めるために、リモデルの提案を強化する。客室の水回りは宿泊する顧客にとって重要なポイントであることはすでにTOTOのアンケートにより明らかになっているが、ランニングコスト削減でも効果がある。コンフォートウェーブシャワーでは従来品に比べ年間約135万円、トイレではVNシリーズでは約40万円削減できる。ユニットバスをリモデルする際、ホテルは宿泊者の受け入れはストップすることになるが、1フロア(20室)の浴室工事を行えば、内装工事(家具移動・解体・復旧)や設備工事(電気・給排水・空調)を加えても約3週間(改修工程モデルプランの場合)で取り換えが可能になる。

施工体制では、TOTOは組立認定制度を設け、認定を受けた外部の施工パートナーがユニットバスなどの組立を行う。「TOTOとしては1つの浴室を改修するよりもまとめて改修することを想定し、約4名で搬入し、組立は各班に分かれて約5名で実施する考え」(山田氏)

シャワーでは年間約135万円削減効果を見込む

一時期、宿泊業はコロナ禍で大打撃を受けたが、終息後国内旅行への喚起が強まっている。そこでユニットバスルームをより快適にする流れも生まれている。問題は工期だが、今回TOTOが短工期でリモデルに最適な洋風ユニットバスルームを提案した意義は大きい。

TOTOの資料によると、発売3年目で年間約7,400台を見込んでいるという。政府も観光立国を成長戦略と位置付けており、ホテル需要が今後も高まっていく中で、洋風ユニットバスの戦略が今後TOTOの将来に向けての成長の一助になることを期待したい。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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