右から、徳久さん、中山さん

右から、徳久さん、中山さん

【三重防護事業とはどのような事業なのか?#3】ケーソン製作・須工ときわ編

きたるべき南海トラフ巨大地震に伴う津波への備えとして、国土交通省(高知港湾・空港整備事務所)と高知県が進めている三重防護事業。

その現場取材2発目として、防波堤ケーソンの製作を担当する須工ときわの現場を取り上げる。製作に当たり、苦労したこと、工夫したことのほか、須工ときわの魅力などについて、現場代理人の徳久勝さん、中山永遠さんにお話を聞いてきた。(取材時期は2024年1月下旬)

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重さ1,800トンのスリット付きケーソンを製作

徳久 勝さん 須工ときわ株式会社 工事部長(現場代理人)

――こちらはどういう現場ですか?

徳久さん 津波防波堤のケーソン1函を製作しています。工期は2023年9月から2024年2月までになっています。ケーソンの大きさは、幅11.9m、長さ13.2m、高さ13.2m、重さ1,800トンです。

――進捗はどうなっていますか?

徳久さん コンクリートの打設はすべて完了しており、あとは止水蓋を6枚付ける作業などが残っています。

――ケーソン製作の内容としては、一般的な現場なのですか?

徳久さん 一般的と言えば一般的ですが、スリットケーソンなのが、一つの特徴です。スリットは、航行する船舶への水流による影響を低減するために入れています。スリットがないと、船の航行によって、波が跳ね返ったり、ウズを巻いたりして、航行に支障が出るおそれがあります。スリットは、そういった航路への影響を低減させるためのものです。

スリット部分

枠プレートの固定、ボルト穴の位置合わせに苦労した

――施工管理上、苦労したことはなんでしたか?

徳久さん コンクリートを打設する際に、ステンレスの枠プレート(幅365cm×高さ420cm)を入れるのですが、この現場は海風が強いので、風に揺られて、プレートがひずむんです。このプレートをどう固定するかに一番苦労しました。あとは、型枠をボルトで固定するのですが、ボルトの穴の位置を合わせるのも苦労しました。

――作業ヤードは十分に確保されている感じですか?

徳久さん 今はかなり余裕がありますが、工事が始まったころは、ここで鉄筋や型枠の作業をしなければならなかったので、ヤードはいっぱいいっぱいでした。

3Dプリンターでケーソン模型を制作

3Dで制作したケーソン模型

――いわゆる働き方改革への対応はどうですか?

徳久さん この現場は週休2日でやっています。

――近年は職人さんの確保が難しいという話を聞きますが。

徳久さん ここの現場はすべて直営でやっているので、あまり問題はありませんでした。ウチの会社には、ケーソン専門の班があるので。ただ、ケーソンに慣れた鉄筋の職人は少なくなっています。

――いわゆるICTの活用はどうなっていますか?

徳久さん 平面の設計図をもとに、われわれのほうで3Dに起こして、3Dプリンターでケーソンの模型をつくりました。スリットケーソンというものがどういう構造なのか、作業員を含め全員で共有するためです。というのも、スリットケーソンは初めてという者もいたからです。すべての打ち合わせに模型を使いました。安全面でも役に立ちました。

東日本大震災の堤防復旧にも参加

徳久さん

――須工ときわとして、高知港湾以外でも仕事をすることはあるのですか?

徳久さん ありますね。須工ときわは、特殊なコンクリートミキサー船を2隻持っているので、沖縄や北海道に船を持って行って、港湾関係の仕事をしています。東日本大震災のときは、堤防の復旧作業のため、船プラス作業員も現地に行きました。

――徳久さんご自身は、須工ときわは長いのですか?

徳久さん 長いですね、37年ぐらいになりますね。専門学校を出て、2年ほど測量コンサルで働いた後、当時のときわ建設に入りました。会社合併して須工ときわになりました。入社以来、高知港湾の現場、海の現場を長らくやってきましたが、ここ数年は、会社の全体的な仕事をしていました。現場代理人に出るのは3、4年ぶりです。

――なぜ、ふたたび現場に出たのですか?

徳久さん 技術者が足りないもありますが(笑)。今回、通常のケーソンではなく、特殊なケーソンなので。経験豊富な技術員が必要であり、熟練な技術者も少なく、この現場は自分がきました。

――会社として、人が足りていない感じですか?

徳久さん 足りてないですね。とくに30才代がいません。

――20才代の若手はいるのですか?

徳久さん 5人います。この現場にも中山という若手がいますよ。

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県民の命を守る仕事に携われることにやりがい

――この現場について、どう感じていますか?

徳久さん 三重防護事業という、県民の命を守る仕事に携われることにやりがいを感じています。1月に能登半島地震が発生しましたが、人ごとではありません。モノ自体がわりと大きいので、防波堤が完成したときは達成感も感じられるだろうと思っています。

――須工ときわという会社の魅力はなんですか?

徳久さん 港湾のほかにも、陸の仕事もやっているところです。海と陸両方の仕事ができるのが、魅力だと思っています。

すべてイチから教えてもらえるので、未経験でもイケる

中山 永遠さん 須工ときわ株式会社 工事部 技術員

――中山さんにもお話を伺います。入社何年目ですか?

中山さん 4年目です。

――学校では土木の勉強をしたのですか?

中山さん いえ、普通高校のスポーツ科でした。サッカーをやっていました。

――須工ときわに入社した理由はなんだったのですか?

中山さん とりあえず、カラダを動かしたいということで、入社しました。あと、親父が建設関係で働いているので、興味があったというのもありました。

――入社してからどのようなお仕事をしてきましたか?

中山さん 現場の施工管理です。最初の現場は堤防工事の現場でした。

――最初は知らないことばかりだったと思いますが、大丈夫でしたか?

中山さん わりと大丈夫でした。先輩などに優しく教えてもらったので。

――こちらの現場ではなにをしてきましたか?

中山さん 主に写真を撮っています。あとは、出来形管理です。仕事にはだいぶ慣れてきました。

――こういうスキルを身につけたいとか、この資格を取りたいというのはありますか?

中山さん まずは2級土木施工管理技士を取りたいです。2024年から取れるようになったので、早く取りたいです。2級を取ったら、1級を取りたいです。

現場を回したい、現場所長になりたいという思いが強いです。現場代理人は1回経験させてもらいましたけど、ちょっとモノ足りなかったので。やっぱり、所長として、現場を回して、工程を組んで、お金も管理できるようになる、というのが目標です。

――こういう現場をやりたいというのはありますか?

中山さん とくにはないですけど、港湾の現場ばかりでやってきたので、道路やトンネルの現場も経験してみたいというのはあります。

ケーソンをチェックする徳久さんと中山さん

――須工ときわに入社してどうですか?

中山さん 先輩がスゴく優しくしてくれると言うか、見捨てないでくれるのが、ありがたいですね。イラつくこともあると思うんですけど、それでも見捨てずに、一人前に育てるために、しっかり面倒を見てくれるのが、良いところだと思っています。

――ゼロベースでもなんとかなるということですか?

中山さん そうですね。すべてイチから教えてもらえるので、未経験でもイケると思います。

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基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
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