TOTO株式会社は、システムバスルーム「SYNLA(シンラ)」を6年ぶりにフルモデルチェンジし、8月21日(水)に発売した。今回のフルモデルチェンジでは、“上質をつむぐ。心をほどく。”をコンセプトに、豊かな「癒し、居心地、ゆとり」をもたらす。日々を潤いで満たしていく浴室空間を提案し、上質感と心地よさを進化させたアイテムを搭載する。
機能的にも新たに注目すべき点があった。まず「スマートタッチ水栓」は、水の出し止めや流量・温度の調整などをタッチ式のリモコンに集約した操作性の高い水栓。「スマートタッチリモコン」は、浴槽に入りながら楽湯や照明などを操作でき、「スマートタッチ水栓」とデザインを統一しており、空間と調和する。
次に人間工学を応用した「カームベンチ」は、L字型の背もたれと広い座面で体を支え、腰掛けながら体を洗ったり、ボディケアをしたり、バスタイムの楽しみを広げる「コンフォートウエーブシャワー(3モード・ミスト)」には、「コンフォートウエーブ」「ウォームピラー」のシャワーモードに加えてウルトラファインバブルを含むミスト吐水「ナチュラルケアミスト」を搭載。やさしい肌当たりのきめ細かいミスト洗浄が汚れをしっかりと洗い流す。
浴室のカウンターは、エッジにメタルラインを施した「お掃除ラクラクアクセントカウンター」を品揃えし、光を透過するフロスト調の素材で、軽やかな浮遊感を演出する。床はパターンと全カラーを刷新、触れたくなるような質感の「布調」とトレンドの自然素材をモチーフにした「石調」を用意する。壁柄にも自然の素材感を取り入れ、凹凸やツヤのある柄を品揃えし、インテリアトレンドのブラウン系カラーを浴槽にも取り入れ、新色「エレノアマローネ」を追加した。このほか、「オーバーヘッドシャワー」や「コンフォートウエーブシャワー」の散水板にブラック色を品揃えし、幅広いコーディネートを実現する。なお、販売目標は、販売3年目で約1万8,000台/年を見込む。
浴室事業は日本住設事業の1/4を占める
TOTOの浴室事業は、1964年に誕生した、日本初のユニットバスルームを原点とし、進化を続けてきた。これは当時の東京五輪を控え、極めて短納期で納入してほしいとの施主からの強い要望があり、開発に至った。TOTOを筆頭に浴室業界が進化を重ねた結果、日本の浴室の9割以上がユニット化でスタンダードとなっている。まず、TOTO販売統括本部の鈴木雅大商品営業推進部部長は、「新商品投入の背景」をテーマに登壇した。
2023年度の日本住設事業の売上高は全体で4,731億円に対して、浴室事業は1,106億円(23.4%)で、規模では約1/4。中核事業ともいえる温水洗浄便座「ウォシュレット」は1,071億円(21.9%)、衛生陶器は999億円(20.5%)の売上規模よりも浴室事業が大きく、重要な位置づけとなっている。
浴室での売上は約1,106億円
1964年のホテル向けのユニットバスを開発して以来、1966年にはマンション・アパート向けに、1977年に戸建て住宅向け、2002年にはマンション用やさらには住宅用のリモデル向けに開発し、さまざまな用途へと拡大し、2024年2月時点では累計約1,200万台の販売数を突破した。クリーンアイテムを中心に業界初の商品も投入し、浴室業界の全体をけん引してきた。
一方、TOTOは生活実態調査を定期的に実施しているが、浴室は清潔に保ちたいとの要望は引き続いて高い。加えて、入浴スタイルの多様化で、「リラックス・リフレッシュ」の意識へも高まりを見せている。「入浴スタイルの多様化でお風呂の役割が変化・進化している」(鈴木氏)
「新商品投入の背景」を語るTOTO販売統括本部の鈴木雅大・商品営業推進部部長
2022年から2023年での市場は木や石など自然を感じる素材や黒をアクセントとしたインテリアがトレンドになり、海外展示会の傾向では自然から着想したカラーや素材を使用していることから、全体傾向では家の中でも自然を感じられるようなカラーや素材を取り入れることが大きな動きになっている。
この背景の中で「シンラ」のフルモデルチェンジ商品を投入したが、用途は住宅の新築やリモデル、マンションのリモデル向けの商品でユニットバスの商品の中ではフラッグシップと位置付けられている。
「シンラ」が産声をあげたのが、11年前の2013年までにさかのぼり、当時は「美しい時間」をコンセプトに、光と素材にこだわり、心地よい空間の提供がスタートだった。5年後の2018年には「上質で心休まる穏やかな時間を過ごす」をコンセプトに、テクノロジーの進化によりリフレッシュ・リラックスにこだわったアイテムを強化した。人間工学を応用した浴槽形状の“ファーストクラス浴槽”には楽湯(肩楽湯・腰楽湯)のような刺激を与えながらリラックスできる機能のほか、朝から夕日が沈むまでを光で表現して、くつろぎを感じられる調光調色システムなどの快適性能を2018年時点で取り込んだ。
「シンラ」はリモデルでも多くの採用事例も
「シンラ」では自動洗浄機能として、「床ワイパー洗浄(きれい除菌水)」「おそうじ浴室(低水圧対応)」、 IoTを活用した機能として、 スマートフォンの専用アプリや、スマートスピーカーの音声操作で入浴準備等が行える「つながる快適セット」などのアイテムを投入し、浴室をより快適してきた。シンラのエンドユーザーからの評価は、「満足」との回答が97%と非常に高い。今回の「シンラ」は自然素材の美しさを取り入れたデザインの進化により、浴室で過ごす時間をより上質なものへと進化した。
自然素材の美しさを取り入れたデザインの進化に注目
現在、TOTOの浴室全体では新築約3割、リモデル訳7割とのこと。「今回発売するシンラは、この割合よりももう少しリモデルの割合が高い。一度浴室を使って、さらに自分のニーズにしたいことに近づけたいというエンドユーザーはよりシンラを選んでいることがこの比率に表れている」(TOTO)
そこでリモデル市場では、「ターゲットでは50~60代が大きなボリュームゾーン。人口減少時代ではあるものの、対象となる方々は、大きく変化していないと捉えている。リモデルについてはいかに水回りに目を向けていただいて、リフォームへの意欲向上を促進するためにも、TOTOのショールームなどを活用し、提案していくことを考えている」(TOTO)
続いて、TOTO浴室事業部の大橋隆弘・浴室商品統括部部長が「新商品の特長」を解説した。フルモデルチェンジのポイントは、リラックス・リフレッシュの意識の高まりを受け、心地よさを追求したアイテムの進化、自然を感じるカラー・素材・モチーフを取り入れ、上質感を進化させた。具体的にはスマートタッチ水栓、スマートタッチリモコン、カームベンチ、コンフォートウエーブシャワーなどを用意。
「新商品の特長」を語るTOTO浴室事業部の大橋隆弘・浴室商品統括部部長
スマートタッチ水栓では操作部をカウンターから分離させスッキリしたデザインとした。LEDリモコンで操作性、視認性も向上する。また、配管に残っている冷たい水はカウンター下から吐水し、すぐに温かいお湯が使用できる「温水準備機能」も追加した。
次のスマートタッチリモコンは、楽湯や調光調色システムなどの機能操作を行う。浴槽横に配置された操作部で、スマートタッチ水栓の操作部と共通の形状とし、空間に調和するデザインとした。入浴中の手元に近く、操作性が良く、バックライトによる視認性も向上した。3番目のカームベンチは、人間工学を応用して 心地よさを実現し、接触面積を増やして身体にかかる負荷を分散し、体重を分散する形状で包まれるような座り心地となった。素材にもこだわり、丸みのあるカタチに合う、温もりのあるファブリックのような、座りたくなる表面仕上げとしており、床でおなじみの親水パワーで清掃性も向上した。
シンラのフルモデルチェンジは2点に集約
「シンラ」のフルモデルチェンジのポイント
「コンフォートウエーブシャワー(3モード・ミスト)」では、心地よい刺激のある浴び心地と節水を両立した「コンフォートウエーブ」、体全体を包み込む「ウォームピラー」に加え、ウルトラファインバブルを含む「ナチュラルケアミスト」を搭載し、洗顔・クレンジングなどの洗い流しに使える。「粒径」「流量」「流速」のバランスを配慮し、相乗効果で最適な浴び心地を実現した。
また、「上質感の進化」では、「自然を感じるカラー・素材・モチーフの取り入れたい」とのニーズに応えるため、3つのポイントを進化した。第1の進化はフロスト調カウンターで、自然の穏やかな光を再現する、パールや半透明の素材感にこだわり、光をまとったやさしい質感に仕上げた。各カウンターの天板部分を薄くし、軽やかな浮遊感を演出している。
第2の進化はやわらかく、乾きやすい「お掃除ラクラクほっカラリ床」。自然の要素を取り込むために、「布調」「石調」へ刷新した。凹凸や柄を変化させた試作を100個ほど実施し、浴室空間にベストな意匠を生み出している。布調と石調という質感の違いや、色の違いに合わせて表面素材を微調整し、水に濡れた使用シーンで最も美しく見えるようにこだわった。不規則な凹凸と不規則な柄とを組み合わせて、手編みのラグや自然の石のような印象を生み出した。
第3の進化では、ブラウン系のカラーを見直した「マローネ」色。デザイントレンドでは、自然からの着想によるサステナブルな素材色は継続傾向にあり、自然を感じさせるカラー、ブラウン系は前年より明るく変化している。新たに品揃えした「マローネ」色では、温かみのある光の色の変化を表現し、照明との相乗効果によるラグジュアリーな輝きで、穏やかさと洗練さを両立したトレンドの空間を表現した。
おうち時間増えたことでリノベーションに熱い視点
コロナ禍などを経て、世界的に家の中で過ごす時間が増えており、改めて自宅のインテリアや水回りをより快適にするというリノベーションの機運が高まっている。特に30代前半あたりで一度、新築住宅を購入した夫婦が20年や30年ほど経つと、不具合も見えてくる。
今の50~60代がリフォームに意欲的な理由はこのような背景があるが、お風呂についてもこだわりが強くなっている。特に心地よさの追求や上質感を求める傾向が高い。その意味で、「シンラ」のフルモデルチェンジに投入は、時節に即した商品と期待が込められているだろう。