マンション購入者を怒らせる魔法の言葉は「○○ですよ」

建築現場で裁判沙汰にならないために

建築現場では、いくつもの裁判事例がある。品質的に不具合があり、誰かが怪我などをした場合には、責任の所在を求めて度々裁判が起きている。

普段の現場管理で、ちょっとした対応のマズさが裁判の「引き金」になってしまう可能性もある。 「裁判なんて私には関係ない」と思っている建築施工管理技士は多いが、決して他人事ではない。

裁判沙汰に巻き込まれれば、建築施工管理技士としてのキャリアに傷が付き、余計なストレスにさらされることにもなる。

ステンレスは錆びる?錆びない?

十数年前、私は現場所長からこのように尋ねられたことがある。

「ステンレスは錆びる?錆びない?」

あまりの突拍子もない質問に、当時、現場に入って間もなかった私は何も答えられなかった。私の困った顔を見て、所長はこう言った。

「ステンレスは錆びない、ではなく、錆びにくい。そこの言い回しを間違えて裁判になったことがあるから気をつけろよ」

知っている人もいるかもしれないが、あるマンションの内覧会で、マンションの購入者から「ステンレスが錆びているのでは?」と聞かれた若い職員が「ステンレスは錆びません」と答えたことから、言い争いになり裁判沙汰まで発展したという。

所長が言いたかったのは、「購入者と話す時は気をつけろ」「間違った情報を提供することで信頼を一気に失う」という内容だった。


マンション購入者を怒らせる魔法の言葉

中でも特に、購入者を怒らせる魔法の言葉がある。

マンション購入者の怒りを一気に買うのが、「そんなもんですよ」という言葉だ。

マンションの購入者は「人生で最大の買い物」をするために、夢いっぱいで内覧会に訪れる。そこで初めて見る自分の部屋の出来栄えに納得いかない場合、「このクロスの仕上げはこんなものですか?」と質問することがしばしばある。

「やや失望したけど、もっと綺麗にしてほしい」という気持ちで出た言葉だと想像できるが、そこで「ええ、そんなものですよ」と答えてしまうと一気に逆上するケースが多い。これで最終的に裁判の一歩手前まで行った、ケンカになったというような話はちらほら聞く。

何気ない一言が災いを招くという典型的な例だろう。建築施工管理技士が購入者と話すときは、慎重に言葉選びをしなければならない。

「放ったらかし」「言いなり」で後悔するな

現場で防げたかもしれない裁判も多い。後悔先に立たず、という問題だ。

例えば、「タイルが落下して怪我をさせてしまい、瑕疵かどうかが問われている」という事例。こうした事故は、裁判にまでは至らなくても、多かれ少なかれ建設現場で発生している問題だ。

タイルの落下事故が起きた場合、建築技術者たる者、少なからず胸に思い当たるふしがあるのではないだろうか。

  • 施工中に「そんなやり方では駄目だ」と気付きながらも、設計事務所や上司に言われ、シブシブやってしまった。
  • 本来はしっかり現場を管理しないといけない立場なのに、忙しさに紛れて「平気だろう」と放ったらかしにしてしまった。

という状況は私にも経験がある。こうした状況の現場で、誰にも怪我をさせていないのは、偶然と思ったほうが良いかもしれない。

裁判への落とし穴は、現場のすぐ近くに潜んでいる。毎日忙しく仕事をしていると、どこで遭遇するか分からない。特に人手不足で、厳しい工期に追われていると、放ったらかしにしてしまうことも出てくる。

後悔しないためには「現場であの時きちんと話し合っておけば良かった」「あの時しっかり管理しておけばよかったな」とならないように行動することが大切だ。

建築施工管理技士の皆さんには、過労やストレスだけでなく、裁判沙汰や事件事故からも自分を守っていただきたい。建築施工管理技士が裁判に関わらないで済むことを心から願っている。

ちなみに、ステンレスはstainless steelと英語表記するが、stainlessとは「錆びない」「錆びにくい」という意味で、一応「錆びにくい」という表現も含有しているらしい。さすがだ。

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大学工学部を卒業後、大手ゼネコンに入社。駅前再開発工事や大型商業施設、教育施設、マンションなどの現場監督を担当している30代の1級建築施工管理技士。新人時代の失敗で数千万円の損失を出した経験から、日々の激務に追われながらも、新人教育に熱意を燃やしている。現場でのケンカの回数は30回ほど。
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