住宅設備の交換工事のあらゆるノウハウを学べる「交換技能アカデミー」開校

住宅設備の交換工事のあらゆるノウハウを学べる「交換技能アカデミー」開校

職人ではなく”交換士”に。住宅設備業界をクリーンでスタイリッシュな世界へ

住宅設備の交換工事を見積りから注文までネットで完結できるサービスを運営する株式会社交換できるくん(代表取締役社長:栗原 将)は、住宅設備の交換技術をマルチに学べる学校「交換技能アカデミー」を2024年11月1日に開校した。

同社は自社運営のECサイト「交換できるくん」で、給湯器、ガスコンロ、トイレなどの住宅設備とその施工サービスをセットで販売。現地調査はせず、顧客が送った写真をもとにスピーディで正確な見積り回答をし、年間5万件を超える工事を受注する。

住設業界でも少子高齢化や人手不足問題は例外ではなく、メーカーが優れた商品を開発・製造しても、それを施工する職人がいなければ、収益の確保は困難だ。また、単にデジタル技術の進歩に頼って解決できるものではなく、根本的な構造改革が求められていると考えた同社はアカデミーの開校に至った。

アカデミーへの入学後は、契約社員として給与を受け取りながら学ぶことで、生活を安定させて集中できる環境で交換技能を習得することができる。住設業界のこれまでのイメージを一新し、「クリーンでスタイリッシュ、高収入が実現できるサービス業」というブランド化を進めるために、さまざまな住宅設備の交換にマルチに対応可能な施工技術者を「プロフェッショナル交換士」と名付けた。

今回、「交換技能アカデミー」や「プロフェッショナル交換士」が目指す世界について、交換できるくんの吉田正弘取締役に話を聞いた。

住設の販売から施工までを一気通貫

今回、インタビューで交換士の未来とアカデミーの方向性について解説した、交換できるくんの吉田正弘取締役

――交換できるくんのビジネスモデルを教えてください。

吉田正弘氏(以下、吉田氏) リフォームの中のトイレ、給湯器、エアコンなど住宅設備の交換工事に特化したEC販売を展開中です。一般的なリフォーム会社やガス会社は、住宅設備の交換工事を行う際、通常は下見、見積り提出のあと、お客様と商談に入ります。

そこを交換できるくんでは、デジタルを活用することで不要な訪問プロセスをカットし、ネット完結に徹することでお客様に不要な時間とコストをかけずに対応できます。当社には20年を超えるネット見積り・住宅設備の交換ノウハウが蓄積しているからこそ、オンラインでも正確な見積りが可能です。

受注後の施工も、下請け会社に丸投げするのではなく、10年保証付きの自社の責任施工で行います。ECでも安心して工事を依頼できるよう、お客様が不安を感じる可能性があることに、ひとつひとつ向き合いながら地道にサービスを磨き上げてきました。

一般的に品質と価格はトレードオフの関係にありますが、住宅設備のチェンジ領域という新たな市場をつくるべく、ネットとデジタルを活用しながら、このトレードオフの課題を解決し、お客様にニーズの高いサービスの提供を目指しています。

――チェンジ領域ですが、具体的にはどの領域を指していますか?

吉田氏 リフォーム市場は、大きく分けて「リフォーム領域(中~大規模の修繕・改築)」「チェンジ領域」「リペア領域(水道修理等)」の3つに分類でき、そのうちチェンジ領域は、住宅設備全般の交換を指します。

水回りではトイレ、蛇口、電気設備ではエアコン、浴室乾燥機、食洗機、ガスでいえばガスコンロ、給湯器などで一般の家庭にある住宅設備ほぼすべてをカバーしています。

実はこのような単品交換工事に対して、一般のリフォーム会社は積極的な取り組みはしていません。大きなリフォームではシステムキッチン、外壁や屋根などの施工を含めて、500万円~1,000万円の売上になることもある一方、500万円のリフォーム工事も単品交換工事も、かかる手間は一緒だからです。単価が大きいほうがリフォーム会社は喜ぶのですが、単品交換工事となると売上・収益とも確保できません。

一方で、2016年(平成28年)と少し古いデータですが、リフォームを検討する方のうち、実に7割の方が単品交換というリフォーム形式を希望すると回答されていました。しかしリフォーム工事会社はこの単品交換工事に積極的ではなかったため、需給のバランスにギャップが生じていました。

このような背景の中、当社は創業以来、マーケットリーダー不在のチェンジ領域という市場の開拓につとめてきました。

――ECサイトはどのような経緯で活用に至ったのでしょうか。

吉田氏 当社の出発点はリフォーム会社のような形態で、水回り部門に強い会社でした。2000年くらいにさまざまな業種でネット部門が強くなる中、ネットでの可能性を見出し、ネット見積りで工事を受注するECサイトを業界に先駆けて構築しました。今でこそ同業他社でもECサイトを整えていますが、当社はこの業界におけるECサイトのパイオニアである自負があります。

――ECサイトが一般化した当時には、工事一式も含む住宅設備分野にまで伸びるとは思いませんでした。

吉田氏 昔のビジネスであれば、お客様は営業マンを呼ぶか、またはいろんな店舗会社を回ってサービスを比べていたのですが、今はネットでキーワードを検索し、サービスを選ぶ形式が普及しています。ただ、日用品などの日常領域の商品はそれで問題ないのですが、住宅設備のような専門領域の商品の選択は簡単ではなかったのです。

その課題に対して、「交換できるくん」では各商品の詳細なご紹介をはじめ、住宅設備の選び方や比較情報など、お客様が知りたい情報を分かりやすくまとめたコンテンツを充実させています。対面での接客と同等以上の情報を提供することで、お客様は時間や場所に制約されることなく、自分のペースで幅広い選択肢の中から希望の商品を選ぶことができます。また、メールや電話でのご相談にも、各設備の専門知識を持ったスタッフが対応します。

取扱い商材は多岐にわたりますが、蓄積してきたノウハウをシステム化して共有することで、未経験の営業スタッフでも即戦力としてお客様をサポートできる体制を整えています。

一般的な店舗では担当者のスキルによって接客品質にばらつきが生じることがありますが、当社ではどの営業スタッフが対応しても、正確かつスピーディなご案内が可能です。その結果、「ネットでリフォームを頼むのは不安だったが、思った以上にスムーズだった」「こんなに簡単ならもっと早く依頼すればよかった」といったお声を多くいただいています。

「交換できるくん」は20年以上にわたってサービス品質を磨き続け、住宅設備の交換工事を安心して依頼できるサービスとしてお客様の信頼を集めることで、高いリピート率を誇るECサイトへと成長しました。

――このチェンジ領域のニーズはどのようにとらえていますか。

吉田氏 リフォームは今後とも増え続けるでしょう。これから新築着工は年々減少していくでしょうから、不動産業界の戦略では中古住宅の流通を活性化する動きにシフトします。欧米では実際、中古住宅の流通量は多く、100年住宅でも普通にリノベーションして活用されています。実際、米国不動産業では中古住宅をメンテナンスし、価格を上げ消費者に提供する戦略が30年前から確立されているのです。

日本の高度成長が終わり、成熟社会に突入した今、今後中古住宅の流通をどのようにスムーズに進めるかへの関心が高まるにつれ、チェンジ領域への着目も増えニーズもさらに高まると考えます。

――このチェンジ領域の需要の伸びと住宅の高寿命化長寿命化はリンクしていると考えます。

吉田氏 政府も長寿命化の住宅には補助金を付与し、新築住宅は以前よりも長寿命化しています。長寿命住宅が進展すると、リノベーションのターンが長くなります。以前は築20年後にリノベーションしていたものが、30年へと伸びていくでしょう。一方で、住宅設備の寿命は一般に約10年といわれています。住宅の建屋は問題なくとも、中の住宅設備をチェンジする必要に迫られるので、このチェンジ領域は拡大していくと思います。

大きなリノベーションであれば1,000万円以上かかりますが、チェンジ領域では少額リフォームといわれる50万円以内の予算におさまるので、当社のようなチェンジ領域に商機があります。リフォーム会社やガス会社などに少額リフォームを依頼されると、企業体力が大きいので訪問などの下見もありコストがかかります。そこで企業規模がミニマムで、ECを活用して効率的に動く当社の出番がもっと増えてくると確信しています。

――御社では、住宅設備の交換業務を行う「プロフェッショナル交換士」の呼称を提唱されました。

吉田氏 2024年11月に開校した「交換技能アカデミー」とともに、住宅設備を交換する方を社内で「プロフェッショナル交換士」(以下、交換士)と呼称するようになりました。お客様からしたら、汚れた作業着を着た職人よりも、スタイリッシュでスマートな、サービス精神にあふれた職人を家の中に招き入れたいと考えるのは当然のことです。住宅設備は各メーカーが製造していますが、施工・設置する業者がいなければ売れませんので、各メーカー様からもサポーター企業として交換士の育成を応援いただいています。

サポーター企業はいずれも大手のメーカーが並ぶ

そして、長期的には、交換士が憧れの対象となり、誇りを持てるような仕事になってほしいと考えています。世の中の憧れの職業の中には、たとえば士業があります。建築士、税理士、司法書士や行政書士などです。

今すぐには無理ですが、将来的には士業と肩を並べる仕事になってほしい。交換士になりたいという方が増えれば、業界全体の仕事の質が高まっていくと考えています。

年収1,000万円も夢じゃない?

――交換士の業務領域は?

吉田氏 さまざまな住宅設備をマルチに交換できる職人をプロフェショナル交換士と呼んでいます。少し乱暴な区切りですが、住宅設備はガス、電気、水回りと三つに区分できます。しかし、水回り、電気、ガスではそれぞれにスペシャリストがいて、誰もがマルチに交換できる世界はまだ到来していません。

対応できる領域が限られているとどうなるか。たとえば寒くなるとガス製品の受注は増加しますが、夏になると仕事は多くありません。逆にエアコンは夏に売れますが、エアコンの業者は冬には仕事が少ない。要するに、仕事の量や収入に波があるので生活が安定しないのです。

職人のマルチ化・多能工化が広がれば、仕事自体に困ることがなくなります。そうなればプライドを持って仕事をこなせますし、それに伴い、収入や社会的ステータスが向上していきます。

――もし通年で仕事があれば、もしかすると1,000万円くらい稼げるようになるのではないでしょうか。

吉田氏 サラリーマンで年収1,000万円を目指すとなると、銀行員や商社など職種や役職も限られてくるだけでなく、そのような立場にあっても、定時に帰宅できず深夜まで働いてようやく1,000万円に到達する、という方も多いのではないでしょうか。

しかし、マルチ職人として活躍する交換士の中には、実際に夕方までに仕事を終え、週休2日で、年間に長期の休暇も取りながら、年収1,000万円を実現できている人もいます。

満員電車での通勤もなく仕事はほぼ住宅の中で行われるので、寒くなく暑くもない環境で作業ができるため、満足度の高い仕事を実現できます。

交換士をみんなの憧れの職業とするためには、「安定した収入」の確保、「ワークライフバランス」は必須です。がむしゃらに働いてようやく1,000万円を確保するのではなく、しっかり休めてたまには家族サービスができて、はじめて憧れの職業になります。

たとえばこれまでエアコンをメインに施工されている方が、水回りやガスにも対応できるようになれば、夏に集中して稼ぐために無理をする必要はなくなり、年収1,000万円を実現したうえで、ワークライフバランスにも配慮できるようになります。これからそうした成功体験を持つ方を増やしていきたい。草の根運動でプロフェッショナル交換士の認知度も高めていく方針です。

――交換士は個人事業主が多いのでしょうか?

吉田氏 当社の社員もいますが、個人事業主でやられている方が多いです。ただ、「交換技能アカデミー」の開校を機に、法人としてアカデミーの卒業生を受け入れるルートも実現していくつもりです。

アカデミーでは客先の自宅を再現し、住宅設備の交換を実践

――「交換技能アカデミー」はどのような役割を担っているのですか?

吉田氏 まだ世間一般で住宅設備の職人がどのような職業なのか認知度が低いため、まずは当社で交換士の募集や育成を通じ、活躍する方を増やしていく場になります。住宅設備の交換業務を行う方は業界全体で高齢化しつつあるので、若手に入職を促していきたい。そして、マルチスキルを持ったプロフェッショナル交換士を増やすため、アカデミーで実技や座学を学んでもらいます。

「交換技能アカデミー」の外観

――「交換技能アカデミー」ではどのようなことを学ばれるのでしょうか。

吉田氏 現在は、若い交換士を増やしていくために、未経験向けのコースが中心です。まず「住宅設備とは?」から始まり、使用工具や工事内容の「イロハ」から学びます。簡単な内容から始めますが、水回り、電気、ガスの各種住宅設備の交換ができるようになります。これらの工事を行うには国家資格が必要となるため、取得に向けた勉強が必要です。資格が取れ次第、現場での研修も実施していくカリキュラムです。

ちなみに、電気工事では電気工事士2種、ガス接続では、ガス機器設置スペシャリストやガス可とう管接続工事監督者などの資格取得が必要になります。

横浜で開校した「交換技能アカデミー」では様々な実技ができる環境が整っている

――実技の研修内容は?

吉田氏 疑似的にお客様の自宅を再現し、水回り、電気、ガス一式を練習できる環境を整えています。アカデミーの母体は当社ですから、現場も数多くあるので、十分に研修を重ねたあとは実際のお客様先の現場で組み立て施工します。

交換工事と接遇に専念し、営業する必要がなくなる

――イメージ的にこれだけ仕事が多いと、交換士は御社からの発注を待つだけで営業する必要がなく、技術を研鑽することに専念すれば生計が立つように思いました。

吉田氏 そうですね。交換士は交換工事とお客様への接遇に専念してもらえます。集客や仕事の受注、日程調整などの工事以外のやりとりはすべて当社が行います。仮に専任になっていただければ、当社がマネージャー業務を行います。たとえば、「今年は1,000万円稼ぎたい」という申し出があれば、その目標に向けたマネジメント業務を行います。若いうちから交換士の経験を積めば、将来的に大きな収入の確保につながります。

ただし、交換士の仕事はある意味で接客業です。お客様とのコミュニケーションは必ず発生するので、商品知識があるだけでなく、たばこ臭くなかったり、清潔感のある服装、笑顔での対応や挨拶をしっかりすることは必須です。

――これからの「交換技能アカデミー」の方針は。

吉田氏 若手育成のプログラムはスタートしました。それが一巡すれば、ガス、水回り、電気の専門家向けコースを2025年内にも開始するつもりです。今後は、当社単体ではなく、メーカー、同業他社との連携を通じ、教育体系や資格認定制度なども整備し、業界全体の活性化に貢献できればと考えています。

短期的には更にチェンジ領域を深堀りしていきます。当社がリサーチ会社に委託して調べたところ、ネットで住宅設備を購入する方は10%にも満たないようです。これからデジタルネイティブ世代が世帯の主役となり、それに伴い住宅設備購入もネットが主流となっていくことで、大きな販売数の増加が見込めます。

住宅設備をリーズナブルに、かつ安心してネットで買えることが当たり前となる世界へと変わっていく中で、他社と比較されたときに「やっぱり、交換できるくんが一番いい」と選ばれる存在であり続けるために、必要ことはすべて取り込んでいきたいと思います。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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