短期間で変更されまくる図面
前の現場が無事終了し、1か月ほど前に今の建築現場に着任した。現場は中層ビルで、上階が分譲マンション、1・2階が店舗や駐車場、倉庫になる予定で、工事は整地が終わったばかりで、これから杭打ち、基礎へと進むところだ。
私は必要に応じて施工図と施工管理を兼務する役割だが、今はサブコンから出てきた施工図のチェックなどを任されている。図面に関する業務を任されてるのは私の他に3人いて、全員私より少し年上の人たちだ。
3人ともこの現場に来てから2か月ほどにも関わらず、すでに何度も図面チェックを繰り返しているという。聞いた話では、短期間で図面が随分変更されたそうだ。
その証拠に、ほとんどまっさらな意匠図や構造図の縮刷版が「廃棄」と書かれた段ボール箱に入れられ、私が来てからもこれが最新版だ!とまた新たな図面が配られた。
以前の図面とどこがどう変わったのか確認する暇もなく、古い図面は見るな!と指示されたが、たかだか1~2か月の間に3回新たな縮刷版を作るような変更はいささか変更が多すぎる。これでは図面に沿った施工図チェックが役に立たず、また最初からになってしまう。
以前からいる3人に話を聞くと、変更変更の繰り返しの中身が伝わってこず、同じようなチェックを再三繰り返しているそうだ。しかも、その都度施工図のチェックバックを送っているので、最新の図面に沿った施工図の同じような図面の確認が繰り返され、3人とも混乱し始めていると嘆いていた。
事務所の中の施工管理者たちは、まだ始まったばかりだと楽観視していて焦るそぶりはないが、全ての基本の図面がこの状況はかなりマズイ!と言わざるを得ない。
施工図作成と施工図チェックの違い
施工図チェックをする場合と施工図を描く場合とでは、図面に取り組む姿勢がやや異なる。その違いは何か?
施工図を描く際は、ある程度設計の意図を読み取ってデザインを考えながら施工図を描いていくが、できてきた施工図をチェックする側にまわった時は、はっきり言ってデザインが変だろうが使い勝手が悪かろうが、施工図で描かれた形や寸法を尊重し、チェックの段階では大きく間違っていない限り、その施工図を勝手に直すことは基本的に許されない。
施工図チェックの役割をしていて、そこが一番ツライところで、明らかにこれは変だ!と思われる図面を前にしても、描かれた施工図の寸法や形など書き換えることは許されない。そこをしっかりわきまえておかないと施工図チェックの仕事は進まない。それが施工図作成と施工図チェックの大きな違いだ。
勾配が一定じゃない屋根
ここ最近、鉄骨構造体全体のチェックを始めたのだが、一番最初にこれは変だな!これでいいのかいな?と感じたのが、屋根の勾配が途中で一寸変わり、屋根が折れ曲がる寸法設定になってることだ。
現場成型の折板屋根を使うので、水勾配方向はシームレスだが、棟の頂点に近づく少し手前から勾配が急激に緩くなり、棟付近はほぼ水平に近い。勾配の数値などの明記はなく、ただ通り芯の交点ごとの高さが記載されてるだけで、パッと見た目にはほとんど気づかず、実際の現場でも目立つ箇所ではないが、建築の常識としては変だ!と感じる。
これは描かれた施工図が間違ってるわけではなく、元々の設計図がそんな寸法設定になっているのだ。設計としては圧倒的にオカシイ!と思うが、施工図チェックの立場上、設計図に記載されてる寸法通りであれば施工図が間違ってるとは言えず、設計図通り描かれているのだから施工図は正しい!と判断される。
図面のそれぞれの段階で関わる人間が、オカシイ!と感じたことを率直にフィードバックできるような体制になっていれば、こんな違和感もすぐ解決し、ひいては建築の品質を向上させることに繋がっていく。
それが風通しの悪いゼネコンだとなかなかそうはいかない。私が今チェックしてるのは鉄骨のサブコンが描いてきた図面だ。私のいる元請けの描いた鉄骨図を基に描かれているが、元の図面の表記の仕方が非常に分かりづらく、どこに何が描いてあるのかやっと分かってきた段階だ。
どんな建築でも一番大切なのは大本の建築図面で、その段階でどこまで考えられた図面が描かれているかで、その後の施工図の出来栄えも変わってくる。今更ながら、やっぱり基本図面が一番大切だよなぁ!と感じている。さてこの現場は、この先どうなるのだろうか。
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