昭和の常識=令和の不適切
各種ハラスメントが次々と”発明”される令和時代には、昭和の常識が不適切とされることが多々あります。官製談合については、戦後復興・高度経済成長時代には容認されていたという伝説があります。
しかし、平成14年、官製談合防止法が制定されました。正式名称は「入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律」(平成14年法律第101号)です。北海道庁農業土木談合事件が、同法律制定のきっかけとなりました。北海道庁が、道内の各業者の年間受注目標額を設定し、落札予定者と予定価格を業界団体に伝えていた事件です。
北海道開発局現元職員13人が逮捕・起訴されて注目を集めました。
「モーニングがいい喫茶店」でのうっかり問題
「モーニングがいい喫茶店」。このフレーズに心当たりのある方は多いかと思います。判断基準としては、まずコーヒーのテイストがあります。次に、トーストかミニサンドイッチか、あるいは飛び道具のホットドッグか。ゆで卵は、ほぼ付いているでしょう。ミニサラダにひとひらのフルーツが付属していると健康への心遣いを感じたりもします。微妙な価格設定も大切です。
電子入札の時代以前は、入札担当者が朝早くに役所に集まりました。役所近辺には必ず(?)「モーニングがいい喫茶店」があります。入札担当者はどうしても、この喫茶店に集まります。お互い顔見知りですし、会話もします。ここでうっかりとやってはいけないのは、指を立てて数字を示すことだそうです。
官製談合裁判での家族の役割
ただし、官製談合の有罪判決は多くの場合、執行猶予が付されています。
ここでは、判決に書かれている”奥様”の役割について紹介します。
■裁判結果(平成28年12月14日 神戸地裁)
有罪
■犯罪事実(抜粋)
- 被告人Xはa県b市建設局道路部道路建設課建設第一担当課長補佐として職務に従事してきた。
- 被告人Yはa県b市に事務所を置き、土木工事請負業等を営む有限会社cの代表取締役として同社の業務全般を統括掌理していた。
- b市が執行する制限付一般競争入札に際し、被告人Xは、b市役所敷地内から被告人Yに電話をかけ、設計金額を教示して(中略)公正を害すべき行為をした。
- 被告人Yの有限会社cは平成25年10月23日〇〇道路改良工事、平成27年7月31日●●道路整備工事を落札した。
- 被告人Xは有限会社cの事務所で平成25年10月21日ごろと平成27年7月29日、被告人Yから現金30万円の供与を受けた。
■主文(全文)
被告人Xを懲役2年6か月に、被告人Yを懲役2年に処する。
被告人両名に対し、この裁判が確定した日から5年間、それぞれの刑の執行を猶予する。
被告人Xから60万円を追徴する。
■量刑の理由
この種犯罪を抑止するためには厳しい処罰が必要であるとも考えられる。しかし、被告人両名とも罪を認めて反省の言葉を述べ、それぞれの妻が監督を誓約した(中略)。それぞれの刑の執行を猶予することにした。
・・・この判決では、奥様の役割は「監督」でした。期限は執行猶予期間の5年間だと思いますが、もしかしたら一生「監督」が続く”終身刑”かも知れません。
別の判決も見てみましょう。
■裁判結果(令和元年6月14日神戸地裁)
有罪
■犯罪事実(抜粋)
- 被告人Aはd県e市土木局道路公園部道路建設課副主査として設計、施工管理、竣工検査等の職務に従事していた。
- 被告人Bは土木工事業等を営むf株式会社の技術管理部長として積算業務等に従事していた。
- e市が平成29年5月29日に入札を執行した「西第g号線道路改良工事」の事後審査型制限付き一般競争入札に関し、被告人Aは被告人Bにスナック「C」において設計金額を教示し、f株式会社は最低制限価格である6,685万6,200円に近接した6,686万5,000円で入札して落札した。
■主文(全文)
被告人Aを懲役1年6か月に処す。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
■量刑の理由
本件犯行は被告人が飲食接待を受けるなどして業者と癒着する中で行われたものではあるが(中略)被告人の母が出廷して監督を誓約していること、本件により公務員の地位を失うことになることなどの事情もある。そこで、今回はその刑の執行を猶予することが相当であると判断した。
・・・この判決では、お母様が出廷までしてくれたおかげで、執行が猶予されました。
「官製談合防止法」理解度チェックテストでうっかりを防止
公正取引委員会のサイトに「官製談合防止法」理解度チェックテストがありました。全部で10問ですが、2問だけ抜粋させていただきます。
問題文を読み、適切なものに〇、適切でないものには×をつけるテストです。
問6
発注方法を随意契約から競争入札に切り替えることになり、現場では混乱が生じるおそれがあったことから、事業者に対し、年間の発注計画に基づき、混乱しないように事業者同士で受注を調整するよう指示した。(〇か×か?)
問10
特定の事業者Aから、「今回の入札案件の予定価格はこのくらい(指3本を立てて示す)でしょうか」と尋ねられた職員は、「そこまではいかないですよ」と応じた。(〇か×か?)
答えはどちらも×でした。
問6…✕
事業者による入札談合等を行わせる行為は、入札談合等関与行為の1つである「談合の明示的な指示」(第2条第5項第1号)に該当します。
問10…✕
(前略)本問のように事業者から示された(積算)金額に対し、予定価格が当該(積算)金額に比して高額又は低額であることを教示することは、「発注に係る秘密情報の漏えい」に該当します。
サイトには10問ありますので、気にかかる方はチェックしてみてください。理解度がアップすれば、うっかりは減少すると思われます。
参考:公正取引委員会「「官製談合防止法」理解度チェックテスト(問題)」
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