改修工事は、新築工事より難しい

改修工事は「図面通り」じゃ通用しない

改修工事はある意味、新築工事より難しい。

改修工事で一番神経を使うのは人が住みながらの施工だが、人が住んでいない場合でも、改修工事には改修ならではの難しさに、建築本来が持っている施工上の難しさが加味される。

「改修工事+新築工事」などと書かれている案件が一番面倒だ。

図面はあるものの、ほとんどの寸法が既存の新築時の図面から引っ張りだしたモノで、本来現状を実測しなければいけないのだが、それは現在、ほとんど当たり前のように省かれることが多い。

臨機応変に調整しなければいけない部分が多く、かと言ってそれらを勝手にやる訳にはいかず、その都度責任者や施主の了解を得なければ先に進まない場合も日常茶飯事だ。

「既存部分の実測なんてしないよ!」と当たり前のように思っている施工管理者もたくさんいるが、そんな手間暇を省くことばっかり考えていると、施工管理者の質、技術力がドンドン低下する。

中には、「図面に寸法が書いてあるから、その通りにやればいい!」などと平然と言い張る人がいるが、改修工事の意味が全く分かっていないとしか言いようがない。図面を理解し、その寸法の主旨は何か?その意味を考えなければいけないからだ。

また、図面を描く人間も往々にして、キリの良い寸法でお茶を濁すように寸法を書き入れるが、現地の実際の寸法は元図面の寸法から必ずと言っていいほど、数ミリから数センチほどズレていることが当たり前だ。

何故、実寸法を測りに行こうと思わないのだろうか?また、それを言いだしもしない、指示もしない上の人間も大いに問題だ。

本来は、実測して図面通りの寸法なのか、変更されてないかを実際に現地に行き、計測して確認するのが当たり前で、その寸法に合わせて改修する部分の寸法を決め、確信を得ながら現場の施工を進めるのが当然だ!

確かに、きっちりした寸法でなく半端な寸法になったりして面倒なのは分かるが、それをしっかり把握して図面を描き、施工する管理者に自信を持って指示できることがいかに大切で、最終的にどれほど有益か考えれば、決して無駄にならないどころか、十分おつりが来る。

時間がないから、遠いからなどと言い訳をし、そんな面倒なことはやりたくない!というのが本音なのだろう。だが、分かっていてやらない人がいる間はまだ救いがあるが、今のままだとそれが当たり前になってしまう。

事実、改修工事で現状寸法の確認を省略すると、後で必ずしっぺ返しが来る!痛い目に会う!それは多くの人が経験してるハズだ。

最終図面がどれだか分からない

以前私が関わっていた改修工事も危なかった。

図面が現状の寸法や形を把握していないために、改修部分だけ独自に寸法を決めていて、既存部分との取り合いが一切考慮されていなかった。それではまずいと、何故誰も思わないのか不思議でならなかった。

現状寸法に合わせ、改修部分の寸法を調整しなければいけないという意思が図面に何一つ反映されていない。素人だって、それでいいのかと思うだろう。

さらに追い打ちをかけるように図面が何種類もあり、どれが最終図面が分からなくなっていた。私の持っている図面と打ち合わせで来たサブコンの人間が持ってる図面が違う、なんてこともあった。

図面には承認印もサインの類も何もなく、大丈夫かいな?と思っていたが、やはり大丈夫じゃなかった。要は、改修工事に伴う現状の把握だけでなく、基本的な図面そのものの完成さえおぼつかない状態だったのだ。

よく図面を見ると、寸法に括弧が付いてる部分があり、その数字が現場寸法合わせの部分じゃないか?と推測したのは、私自身が現場の寸法を計って変だなあと感じたからだ。こんな調子では、施工に役立つ図面には到底ならない。

図面が現場の基本で、施工の唯一の拠りどころになる。にもかかららず、現場を助けるハズの図面が、現場を混乱させ、逆に脚を引っ張っているような状況だった。

図面の描き手に文句を言いながらも杓子定規な描き方しか知らない人、もしくは新築のいつも同じような図面を描いてるとこうなってしまう。

改修工事が技術者を進歩させる

こんなことになるのは、与えられたものに何一つ疑問を持たず、もっと現場の施工者が分かりやすいように工夫しよう!ちゃんとした建築を造ろう!という、図面が本来果たすべき役割を残念ながら分かっていないからだ。

決まり切った平面図、断面図だけを描いて終わりだと思っているのだろうが、図面の中に完成の3次元の姿図を入れたり、展開図の代わりにパースを描き入れるなど、いくらでも表現方法はあるはずだ。

基本が大切だが、その上にさらに何かを付け加えていくこと。もっと上手く表現する方法はないか?と常々考えていれば、ドンドン色々なアイデアが湧いてくるはずだ。

既成概念だけに凝り固まっていては、現状は打破できない。多くの先輩がいて、とてもそんな冒険はできないよ!と言う人もいるだろうが、それを言うなら一度でもそんな提案を先輩にしたことがあるのかどうかを聞きたい。言っておくが、そんなに難しいことではない。

改修工事は面倒だが、図面を描く立場であろうと、現場の施工管理の仕事であろうと、間違いなく建築技術者を進歩させる。

どんなに経験豊富な技術者でも、100%の確信が持てないことはたくさんある。そんな時は、できるだけ現場に出向くことで、解決策に導いてくれることが多々ある。

自分で考え、実践してみることが進歩の近道だ。若い人には是非、挑戦してほしい。

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アジア、アフリカなど海外の建築現場で長年、施工管理に従事している。世界中で対日感情が良好なのは、先人たちの積み重ねである。日本人として恥ずかしくない技術者でいたい。
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