「見える人」のショートショート怪談
世の中には「(霊が)見える人」がいるそうです。次のようなショートショート怪談があります。
ある「見える人」が道の向こうから若くて髪の長い女性の霊が歩いてきていることに気づきました。しかし、逃げたり引き返したりして追いかけられると怖いので、そのまま知らないふりをして通り過ぎようとしました。
するとすれ違いざまに女性の霊が耳元で言ったそうです。
『どうして、わかったの?』
…また、以前に筆者が勤務していた広告制作会社の新入社員の男性は、見えないのですが「(霊の存在が)わかる人」だったようです。
一人暮らしを始めたマンションの部屋に”何か“がいました。日に日に気配は濃密になります。ある日、コンビニに行こうと部屋を出てドアに鍵をかけ、ふとノックをしてみたら、ドアの向こうの室内からノックが返ってきたそうです。
彼は福岡の実家に戻り、氏神様の神社でお札をいただいて貼ってみても効果がなく、とうとう引っ越しをしました。その”何か”は、ついてはこなかったそうです。「どうやら、不動産付帯物件だったようです(笑)」と報告してくれました。
また、マンションでは「空き家のはずの隣家から壁をどんどん叩く音がする」と聞いたことがあります。しかしこれはマンションの怪談というより、騒音問題かと思います。
マンションでの悩みのトップは”騒音”
国土交通省の『マンション総合調査』によると、居住者間のトラブルで最も多いのが生活音です。裁判になるケースは、騒音が「受忍限度」を超えていると判断される場合です。受忍限度とは、社会生活上我慢できる騒音のレベルを指し、どこまで我慢できるかは人によって異なりますが、一般的には、昼間は55デシベル以下、夜間は45デシベル以下が目安とされています。
参考:国土交通省 マンションに関する統計・データ等ページ『マンション総合調査』
上階の子どもの騒音に対する損害賠償請求事件の判決を紹介します。
■原告の訴え
- 平成16年2月頃から平成17年11月17日まで、マンション上階の子どもが廊下を走ったり、跳んだり跳ねたりする音が21か月ほど継続した。
- その程度は、50~65デシベルのものが多く、午後7時以降、時には深夜にも及ぶことがしばしばあった。
- 原告の妻は咽喉頭異常感、食欲不振、不眠等の症状が生じたため同年10月7日、内科クリニックで通院加療を受けた。
子どもの親が話し合いに応じないことも受忍限度を超える要素であった。
■判示
- 被告は原告に慰謝料として30万円を支払え。
被告は原告に弁護士費用として6万円を支払え。
(平成19年10月3日 東京地方裁判所)
天井を棒で突っつくのはやめておきましょう
ちなみに、上階住民に対して「ちょっとうるさいですよ」の意思表示として、「天井を棒で突っつけばいい」と言う人が、意外に多くいるそうです。それは、やめたほうがいいようです。こちらとしては、単なる合図だと思っていても、された側は、攻撃されていると受け止める場合があるためです。
マンションの騒音や悪臭など、公害に関する問題で困った場合は、総務省の公害等調整委員会が相談を受け付けています。電話やFAX、メールで相談できるそうです。
参考:総務省 公害等調整委員会
また、各自治体の公害苦情相談窓口にも相談できるようです。
空き家のはずのマンションの隣家から壁を叩く音が…
空き家の隣家から壁を叩く音がした場合、別の部屋で壁を叩いた音の”固体伝搬音”だと思われます。
固体伝搬音は、音源から発生した振動が壁や床などの固体を伝わり、別の場所で再び空気中に放射されて聞こえる音です。空気伝搬音では考えられないほど遠くまで伝わり、また、構造体の中を様々な方向に伝わるため、伝搬経路が複雑化して、下階に騒音源があるのに上階の天井から音が聞こえる場合もあるようです。
騒音による損害賠償請求をするなら、お化けではなく、まずどこの部屋から発生している騒音なのかを特定する必要があります。
別記事「夏の暑さに対抗策はない」の訂正とお詫び
施工の神様の記事「賠償金は1010万円か40万円か? RC造築23年の雨漏り騒動、責任問題迷走中」において、『伝統的な日本家屋の設計思想は「夏を涼しく」です。冬の寒さは衣類や寝具、火で対抗できますが夏の暑さには対抗できなかったからです。』と書きましたが、間違っていました。
対抗策はありました。怪談です。訂正してお詫びします。日本では、ぞっとして、涼しくなるために、夏に怪談を楽しむ習慣があります。アメリカでは怪談のシーズンはハロウィンだそうです。
ところで、後輩社員が何かにノックを返されたお話も、もしかしたら偶然のタイミングでの固体伝搬音だった可能性はあると思います。でもせっかくの面白い(?)お話なので、本人には伝えておりません。