改正建築基準法の施行で工事写真を重視化
2025年4月の改正建築基準法の施行によって戸建て住宅の完了検査において、撮影を要する工程が増えています。求められる工事写真も膨大になります。とくに、完成後に隠れてしまう部分の施工状況を記録することで、工事写真には設計図書との整合性や施工品質を証明する役割があります。工事写真は今後、ますます重視されると思います。
公共工事写真の加工はNG
2005年、土木分野で「工事写真の改ざん」が問題になりました。国土交通省九州地方整備局が発注した道路工事の受注者が、デジタルカメラで撮影した法面の見栄えを良くしようと写真に手を加えたことが発覚しました。
国土交通省はこの出来事を受けて、「写真の信憑性を考慮し、写真編集は認めない」と、デジタル写真の回転や明るさ調整までも禁じる厳格な改ざん防止策を翌2006年に講じました。
それ以来、下記の加工はすべてNGとなっています。
- 画像を回転させる。
- 影になった部分が見えにくかったため、明るさを調整する。
- 全体がぼんやりして見えたため、コントラストを調整する。
- 黒板の文字が間違っていたため、ソフトを使って修正する。
- 対象物が小さすぎたため、必要な部分のみを切り抜くトリミングをする。
参考:国土交通省『営繕工事写真撮影要領(令和5年版)』
参考:国土交通省『デジタル写真管理情報基準』
工事写真を撮り忘れた場合の対処法の研究
工事写真の撮影は工程の学びも兼ねて新人が担当することが多いようです。うっかり撮り忘れることもあるでしょう。対処法としては、まずは撮影だと思います。
可能な限り早い段階で撮影を試みる
まず最も基本的な対応は、気付いた時点で可能な限り早く撮影を行うことでしょう。施工が進んでしまっている場合でも、まだ現場に手を加えられていない部分や工事の一部を記録できる場合があります。証拠能力を高めるためにも、撮影日時や撮影の理由を記録しておくと万全です。
以前に撮影した写真を探す
どんなに遠くからでもいいので、その場所が写っている写真がないかを探します。
他の人が撮影していないかを徹底的にヒアリング
工事写真の撮り忘れに気付いた場合は、すぐに、あらゆる工事関係者や協力業者などに確認を取りましょう。他の方が写真を撮っているかも知れません。施工管理をしている人がいる場合は、撮り忘れた箇所の工事写真を撮影している可能性もあります。自身の仕事の出来栄えを写真に納めている誇り高い職人がいるかも知れません。現場に写真がありましたら共有させてもらいましょう。ここは責任を持って、全力で泣きつく局面です。また、発注者にも正直に連絡をして、現場を訪れた際の写真があるか確認させていただくことも必要でしょう。
監視カメラの位置をチェック
現場に設置している監視カメラや、作業中に撮影した動画に映っていたら、該当部分を切り出して写真にできる可能性が高いです。
手戻りでも撮影を実施する
元の状態に戻せる段階であれば、作業の手戻りが発生しても撮影するという判断もあるかと思います。作業の手戻りによって工程が遅れる可能性があるものの、施工完了後に発注者や監督者に指摘されて再施工するよりコストを抑えられます。また、コストだけではなく発注者や協力会社からの信頼低下を未然に防げる可能性があります。
報告書を作成して正直に報告し、補完方法を模索する
- どの場所の写真を撮り忘れたのか
- どの工程の写真を撮り忘れたのか
- 写真を撮り忘れた理由
- 過去に類似した工事を行った場合は、その過去データを元に説得力を持ちそうなデータを作成する
- 工事前後の施工計画書、検査記録、作業日報、材料納品書、現場の記録メモなどの写真や資料、スケッチで補完できないかを模索する
トラブルへの備え
法律によって工事写真の提出が義務化されている工事の場合は、トラブルに備える対策も必要です。写真の撮り忘れが原因で、契約違反や補助金の不承認、報酬の減額などに直面した場合は、法律の専門家に頼ることも視野に入れます。特に大規模な工事や公共工事においては、大きなトラブルに発展する可能性もあるため、早めに備えることが重要です。
他にも良い方法や許諾を得られたケースがありましたら、お教えください。よろしくお願いします。