枠組足場など古くなった足場を次世代足場「Iqシステム」へ再生

枠組足場など古くなった足場を次世代足場「Iqシステム」へ再生

【タカミヤ】休眠の枠組足場をリサイクルし、電炉材を使用した次世代足場「Iqシステム」へ再生

これまで、株式会社タカミヤ(髙宮一雅代表取締役会長兼社長)の建設業界における人手不足やコスト高、環境負荷などの課題を解決する統合ソリューション「タカミヤプラットフォーム」を足場業界の大きな動向として紹介してきた。

最近の中国地方の雄・「日建リース」のM&Aもその一環であり、今後、タカミヤは、プラットフォームを軸に様々な次の一手を打つ。今回は、その取組みの一環として、資源の循環と環境負荷低減を目的とした新プロジェクト「サステナブルプロジェクト」に注目したい。同プロジェクトにより、未稼働の足場の有効活用を促し、CO2排出削減と業界の持続可能な発展に貢献していく。

同プロジェクトは、稼働していない足場の循環を促進し、安全性の高い足場にリサイクルする取組み。不要な足場を顧客から回収し、それをリサイクルして電炉材を使用したエコな足場を新たに製造する流れを構築する。建設現場で不要になった足場が適切に回収・再利用する仕組みを作ることで、足場の循環を促進し、より環境価値の高い足場を普及させ、CO2の削減に貢献する。

回収した足場は、一部電炉材で作られた次世代足場「Iqシステム」へと再生する。電炉は同じく鉄を生産するための製鋼法の高炉に比べ、CO2排出量を約1/4に抑える効果がある。また、足場資源のリサイクルに協力されるなどの諸条件をクリアした顧客に対して「サステナポイント」の付与を実施。サステナポイントは、タカミヤプラットフォーム内のサービスである「OPE-MANE(オペマネ)」の利用時に使用できる。顧客の不要な枠組足場をタカミヤが市場価格で引き取り、さらにサステナポイントを付与することで、顧客が不要な足場をスクラップするハードルを下げ、さらなるリサイクルの促進を目指す。

今回は、サステナブルプロジェクトの責任者であるタカミヤの営業本部 事業開発部長の浅井敏夫氏に話を聞いた。

50%もの足場が休眠状態のワケ

インタビューに応じたタカミヤの営業本部 事業開発部長の浅井敏夫氏

――「サステナブルプロジェクト」を実施することとなった背景を教えてください。

浅井敏夫氏(以下、浅井氏) 足場レンタル費用は工事費全体では大きな建設現場で数パーセント、通常の現場では1%を要するといわれています。タカミヤも創業して55年が過ぎましたが、10年前に次世代足場を開発し、「Iqシステム」をリリースしました。一方で、古くなった枠組足場も依然としてあふれており、安全・環境面での建設業界の課題として残っていると考えています。

枠組足場は作業がしにくい欠点があったがIqシステムであれば安全性も高く作業員もスムーズに動ける

――古くなった枠組足場は東南アジアに流す実態もあるようですが。

浅井氏 ASEAN諸国でのODA工事を中心に古くなった足場を流出する現状は現在も発生していると思います。しかし、それ以上に問題なのが、山中に古くなった足場が放置されている現状です。皆さんも山道をクルマで走っていると、ツタが絡まった足場を見ることがあるかと思います。こうした問題を解決し、次世代足場の流通を盛んにするために何をすべきか検討した結果、「サステナブルプロジェクト」を推進することとなりました。

――今、足場の中古を販売する企業もいくつかありますがこの動きについては。

浅井氏 それについて否定はしません。実際、タカミヤグループの中に中古事業も展開中です。しかし、安い足場を買いたたき転売している事例もありますし、サビや曲がりが発生すると品質の保証ができなくなります。タカミヤとしても今後、中古事業をできる限り縮小する方針です。ただ、世の中全般では中古足場の販売事業がなくなるとは思いませんが、環境価値の重要性に気が付かれた顧客に関しては、当社の「サステナブルプロジェクト」の考え方に同意され、賛同者は増えていくのではないでしょうか。

――「サステナブルプロジェクト」の概要を教えてください。

浅井氏 前提として、枠組足場の稼働率は建設市場が盛んな時期でも約50%です。建設市場が悪化すると、稼働率は約40%に留まりますが、その際、足場業界では機材Baseに設置したままにしているか、スクラップ市場が好調な時期に販売するケースが多いのです。いずれにしても市場にある足場の50%は実際に使用されていないのではと仮定しました。

また、国土交通省の資料では、足場稼働率が約50%だと9万tの足場が休眠していると推定していましたが、当社ではこの数字は実態よりも少ないと受け止めました。足場は、当社や他の足場レンタル会社だけでなく、ゼネコンや鳶の会社も独自に保有されています。そう考えると、実際に稼働していない足場は9万tどころではなく100万t台か200万tあたりと予想しています。これらの足場を環境のサイクルに入れ込めれば、建設業とともに社会全般への貢献が可能になると思い、スキームを発表しました。

タカミヤ製品はCO2削減のため電炉材の普及を強化

――プロジェクトのスキームを教えてください。

浅井氏 これまで説明してきたように、機材Baseには一定の足場が稼働せず、それを新規の足場に変えたいとの顧客の要望が一定数存在します。顧客が保有している、今後とも使用しない足場をタカミヤが回収します。そして、回収した足場はタカミヤが責任を持ってスクラップし、電炉材で作られたIqシステムへと再生します。ですので、サステナブルプロジェクトの対象は、旧来の不要な枠組足場を持っている顧客に限定されます。

回収に当たっては、市場に基づいてスクラップ価格を顧客に提案し、それにプラスして「タカミヤプラットフォーム」に参加されている顧客に対して、サステナポイントを付与します。今の市場相場を仮に1t当たり3万円を相場とすると、3万円分のポイントを付与します。仮に古くなった足場100tを放出すると、通常のスクラップ価格であれば300万円ですが、これにサステナポイント300万ポイントを付与されるため、合計600万円相当を得ることになり、Iqシステムの購入の原資を確保できるようになります。(注釈:2025年8月時点でのスクラップ価格を参照)

「サステナブルプロジェクト」の全体像

――サステナポイントは、どのような場面で使うことができるのでしょうか。

浅井氏 サステナポイントは、タカミヤプラットフォーム内のサービスである「OPE-MANE(オペマネ)」の利用時に使えるポイントで、旧来の枠組足場からIqシステムに入れ替えるための購入時に使っていただくことになります。顧客の不要な枠組足場をタカミヤが引き取り、さらにサステナポイントを付与することで、顧客が不要な足場をスクラップするハードルを下げ、サステナブルプロジェクトのリサイクルをさらに促進することを目指しています。そのため、ポイント利用のためには、「OPE-MANE」利用は必須の条件ではあります。

当社としては、勢いのある鳶の専門工事会社、建設会社に対して未来志向で足場の組立・解体作業とともに、ビジネスを拡大してもらいたいと考えています。そこでこれらの企業に対して中途半端に回収する機材の金額を5~10%ポイントとして還元するのではなく、付与率100%の還元を決めました。

保管場所・管理・整備など、足場材周りの全ての負担を大幅削減する「OPE-MANE(オペマネ)」

――旧来の枠組足場から次世代足場に入れ替える大きなきっかけになりますね。

浅井氏 顧客にとって金銭的なメリットもありますが、これからも足場業界でビジネスを続けていく上ではより安全で、品質に優れたIqシステムの導入により、足場業界の課題解決につながります。枠組足場の稼働率が向上しない理由には、「足場の整備が追い付かないため、稼働が上がらない」「足場部材の種類が多すぎて、出番の少ない部材が稼働の足を引っ張る」「足場材そのものが古く現場で使えない」などがありますが、それをIqシステムの導入で解決できます。

ただ、これらの課題に加えて人の問題もあります。機材Baseや足場をしっかりと整備するためには人員が必要になりますが、これについては足場レンタル会社をはじめ、顧客全体が相当に苦労されています。「タカミヤプラットフォーム」では、顧客の経営課題の一つである人の問題を一手に引き受けます。顧客の足場を整備し、必要な時、量を同じクオリティーで提供するサービスを基本としています。この人の問題と合わせて経営効率について提案させていただいています。

「タカミヤプラットフォーム」の全体像

――経年劣化した枠組足場を大量に抱えている顧客にとってかなりの朗報ですね。

浅井氏 今、色々と顧客を回っていますとご指摘の課題にお悩みの方がかなり多いと感じています。稼働する足場を効率よく保有していれば問題ありません。しかし、事業を推進していくためには、ほとんど稼働していなくても必要な足場もあります。足場レンタル会社は、さまざまな足場を一式で保有していないと成り立ちません。規模によりますが1,000種類ほどのアイテムの足場を保有している足場レンタル会社もあります。ただ、さまざまな足場のアイテムを網羅して保有すると、経営効率は悪化します。「余分な足場は持ちたくない」「必要な時、量の足場を保有したい」のニーズは高いと思っています。

――今、プラットフォームにはどのような企業が参画されていますか。

浅井氏 プラットフォームに参加されている企業は114社です(2025年3月期)。たとえば、ゼネコンでは機材Baseを所有していますが、今後は処分する方向に向かっています。しかし、足場は必要ですから、そこでプラットフォームに加盟し、全国どこからでも出せる足場の運用をタカミヤに委託する会社が増えています。鳶の専門工事会社は、鳶職人はいますが、足場を整備する人が少ないため、プラットフォームに加盟して機材Baseの運営を任されています。

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足場業界にも広がるサーキュラーエコノミー

――地方の足場レンタル会社を回っていると、枠組足場が主流な会社は少なくありません。

浅井氏 ターゲットはまさに今、指摘された地方足場レンタル会社がメインになります。プラットフォームに加盟される顧客が安心して提供された足場を整備できるよう、タカミヤの品質を前面に押し出しています。表現は難しいですが、地方足場レンタル会社の中には、品質を担保されていない、旧来の枠組足場に依存しているところもございます。これを安定して利益をもたらしているという見方をすることも可能ですが、いつかは限界が来るものです。先を考えたときに、より安全で優れた品質の足場を安定的に供給する仕組みを顧客に伝えていきたいです。

――環境面から見た、Iqシステムの優位性を教えてください。

浅井氏 環境に優しい電炉材はCO2の削減に貢献し、排出量を約1/4に抑制することができます。タカミヤでは年間4万tの鉄材を購入し、製品を製造していますが、Iqシステムの一部も電炉材を使用して製造しています。ただ、4万tのうち電炉材は約5,000tに留まっており、さらなる環境面への配慮には電炉材比率を向上させていかなければなりません。また、当社の鉄材の購買だけで電炉材比率を向上させていくのでは片手落ちで、根本的には建設業界全体の課題として、顧客とともに解決を目指していくことが必要になります。具体的には、5,000tの足場を回収して電炉材に置き換えることができれば、合計で約1万tが電炉材となり、比率にすると約25%が電炉材となります。

当社としても、環境に取組む製品としてブランド価値も向上しますし、このブランド価値は顧客やプラットフォームに加盟されている企業にも同様に与えられます。今、スーパーゼネコンをはじめ各企業では、建設のリサイクルでは解体から再利用までどのようなサイクルで循環し、それを数値化する活動に熱心です。とくに、サーキュラーエコノミー(資源経済)の概念が広がり、資源を効率よく循環させながら、経済的な価値を最大化する社会経済システムの実現に注力されています。

タカミヤは、この建設業界のサーキュラーエコノミーについてプラットフォームによってジョイントしていくつもりです。ここでは顧客をゼネコンと想定していますが、ゼネコンとともにさらにその先の顧客、つまりデベロッパーにも環境価値を訴求できる企業でありたいと考えています。

――ゼネコンからのお問い合わせはありましたか?

浅井氏 リリース後、スーパーゼネコンをはじめとする各社からサーキュラーエコノミーに関するお問い合わせをいただくことは多く、関心の高さはうかがえました。足場は建築物の完成後は残りません。そのため、顧客のサーキュラーエコノミーには入りませんが、足場での環境価値を数値化し、顧客自身がサーキュラーエコノミーや環境数値に加えたいゼネコンが少なくないことがリリース発表後のお問い合わせではじめてわかったことでした。

――発注者やゼネコンには、どのようにアピールしていきたいですか?

浅井氏 経営効率を強め、常に足場を品質や安全に優れ、最新のものを持ち続けたいと考える顧客にとって、サステナブルプロジェクトは必ず刺さる仕組みだと考えています。自社の不要な足場を持て余している顧客にとってはメリットにしかなりません。ニーズのある顧客は必ず強い関心を寄せると思います。

タカミヤが提案しているタカミヤプラットフォームにより安全と品質を保証し、全国に点在する「機材Base」からいつ、どこからでも足場を安定供給し、継続して行えることが最大のPRポイントだと考えていますが、これにプラスして自社の商品の最大限の電炉化を目指し、環境負荷の軽減を図っていきたいです。

関連サイトOPE-MANE(オペマネ)

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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