左から、スパイダープラスの鈴木雅人取締役副社長、伊藤謙自代表取締役社長、須藤正司プロダクト企画本部長

【スパイダープラス】施工・労務・資材管理などの課題を統合するプラットフォームを構築へ

建設DXサービス「SPIDERPLUS」を提供するスパイダープラス株式会社(伊藤謙自社長)は7月8日に、都内で今後のプロダクト戦略の発表の場「プロダクトロードマップお披露目会」を開催、従来提供してきたサービスや機能をプラットフォーム「SPIDERPLUS Workspace」への順次統合を発表した。

「「SPIDERPLUS Workspace」とは、これまでSPIDERPLUSが解決してきた施工管理(「コト」)に関する課題に加えて、多様な専門工事業者や職人の出入りによる労務・安全管理、コミュニケーションなどの建設現場ならではの「ヒト」に関する課題と、資材・機材などの管理にまつわる「モノ」にまつわる課題も解決する、全く新しい統合プラットフォーム。今後は、新たなプロダクトとサービス開発を進め、個別の機能を順次提供する。

今後、SPIDERPLUS Workspaceの独自の機能開発に加えて、顧客の自社システムとの連携や、他社製DXソフトウェアとの連携を進めていく方針だ。SPIDERPLUS Workspaceリリース以後は「現場の改革パートナー」として建設現場の課題に共に向き合いながら、機能の開発・改良を続け、建設現場の業務遂行に必要不可欠な「現場インフラ」として事業を展開する。導入効果としては、コスト削減、工期短縮、品質や安全性向上に期待がかかる。

伊藤謙自代表取締役社長

「プロダクトロードマップお披露目会」の席上、伊藤社長は、「建設DXは直近かなり進んでいるが、一方アナログの部分も残されている。今後、スパイダープラスが展開するロードマップで今後の進展を見て欲しい」と語った。

今回は、「プロダクトロードマップお披露目会」をもとにスパイダープラスが描く今後のプラットフォームの方向性をまとめる。

「ヒト・コト・モノ」の3分野の課題を統合し解決へ

建設投資額は増加予想だが、担い手は減少傾向のため、建設DXの需要がますます旺盛になる

建設業界では現場従事者の人手不足、建設工事の複雑化とそれに伴う効率性、紙資料や電話・口頭で行われる情報伝達の難しさが長く課題として続いている。現場の生産性・品質・安全性を守るには、デジタル活用による抜本的な業務プロセスの変革が必要だ。とくに、大規模な現場であるほど出入りする従事者は膨大な人数に及び、業務内容や立場を異にする関係者同士が、日々様々な調整を行う効率的な情報連携は、工事進捗や生産性を大きく左右する。

こうした現状に鑑み、スパイダープラスでは、現場の課題を「ヒト・コト・モノ」の3つで見つめ、それらの課題を統合して解決しながら抜本的な業務プロセス改革を目指すプラットフォームとして、サービス群を統合することになった。

鈴木雅人取締役副社長

「プロダクトロードマップお披露目会」では、SPIDERPLUS事業全般を統括する鈴木 雅人取締役副社長が登壇。今後、建設投資額が拡大の見込みが予想される一方、建設業の就業者数は、2020年を起点とすると2040年にはマイナス56%と厳しい予想とともに、建設業界の業務効率が求められていると述べた。建設DX市場の見通しでは施工管理サービスは増加傾向にあり、政府も公共工事でのBIM/CIMの原則化、働き方改革関連法、「i-Construction2.0」、アナログ規制撤廃、第三次担い手三法の取組みなどで追い風となっている現状を強調した。

SPIDERPLUSを提供するスパイダープラスでは、ビルやマンションなどの大規模現場で、膨大な図面の管理や、手間のかかる工事写真の整理など、現場監督の施工管理業務の効率化を展開中だ。スパイダープラスは保温断熱工事業「伊藤工業」を祖業とし、自らの作業を効率化することを目的に、建設DX事業を開始、2011年の初弾のSPIDERPLUSをリリース。2021年には東証マザーズに上場し、建設DX銘柄では史上初の上場となった。現在、SPIDERPLUSのユーザー数は2,000社超でゼネコン、専門工事業者のほか、デベロッパーやプラントメンテと幅広く採用されているが、今後の機能拡充により、さらに顧客の業種・職種のすそ野を広げていく考えだ。

大手ゼネコン・設備会社などはデジタル化に留まらず、施工プロセスの自動化で高度化が進展。BIMやAIなど多様なサービスも展開している企業も増えた。スパイダープラスは新たに、ビジョンとして「つくる人の“働く”を夢中にする、現場インフラ」を策定した。このインフラの意味は、電気、水道、Wi-Fiのようにあって当たり前で、ないと困るものと定義。そこに建設現場をターゲットとし、現場で働く従事者があって当たり前であり、ないと困るようなサービス提供を中期的なビジョンとした。

須藤正司プロダクト企画本部長

続いて、建設DXに精通し、直近では業界のデジタル化推進に貢献してきた須藤 正司プロダクト企画本部長が登壇。現場の複雑化と慢性的な非効率性と紙・電話・対面に依存した業務に限界を感じると指摘。スマートフォンも普及したこともあり、現場の生産性・品質・安全性を守るには、デジタルによる抜本的な変革が必要とした。

建設現場では元請け企業、一次下請け企業、専門工事会社、レンタル会社と多様なプレイヤーが活躍し、立場の異なる関係者の情報連携を効率よくまとめていくかが喫緊の課題だ。SPIDERPLUSはその中でも「コト」の分野に注力してきた。SPIDERPLUS Workspaceでは、『ヒト・コト・モノ』を網羅し、デジタル最適化を実現する流れのもと構成していく」(須藤氏)

現場では元請け・一次請け・専門工事業者などの多様や多くのヒトが出入りを繰り返しており、場内外でのヒトの管理が非常に複雑なため、非効率な業務が多く発生している。「ヒト:労務・安全管理の高度化」として、SPIDERPLUS WorkspaceではKY・出面管理などの紙で行われてきた業務をデジタル化し、安全とコンプライアンスを現場で担保する仕組みづくりをラクに実現する。

SPIDERPLUS Workspaceの概要

建設現場ではミス防止と品質向上を目的に品質や管理監督の証跡を残し、様々な情報を管理。その情報量は膨大であり、情報収集プロセスのほとんどがアナログな手法で行われるため、収集・入力・出力・提出・管理に非効率な業務が多く発生している。「コト:業務と情報の効率化」として、SPIDERPLUS Workspaceでは是正指示や検査を図面上で同時進行し、コミュニケーションと移動コストの大幅削減で、業務と情報の効率化を実現する。

建設現場では機材や資材など、モノの出入りが繰り返され、場内外でのモノの管理が非常に複雑なため、非効率な業務が多く発生。「モノ:機材・資材の最適管理」として、SPIDERPLUS Workspaceでは発注から返却、補償までを一元管理し、現場と業者双方が共通の資材・機材の循環モデルのもとで効率的な管理を実現する。

この「ヒト・コト・モノ」の課題解決に関する活用履歴をサーバに蓄積し、将来的にAPI連携・AI活用による業務最適化のためのデータ資産として昇華させ、工程精度や収益性の向上、将来学習への活用で、未来の建設現場業務の当たり前の姿を、顧客とともに構築を目指す。

顧客からは、従来のSPIDERPLUSの強化の要望もあり、次の4点を最優先に開発を進め、実装する。そこで、①図面メモの共同編集②仕上げ検査機能のエンハンス③黒板関連のエンハンス④承認機能⑤UI・UXのエンハンスの既存領域を深堀りし、既存のSPIDERPLUSを強化する。

「そこでSPIDERPLUSは、工程・進捗管理する『S+Project』、専門工事業者との情報伝達を改善する『S+collabo』、デジタル化した帳票で業務効率を向上につなげる『S+Report』」の機能を強化する」(須藤氏)

チャットにより、企業間での情報連携をスムーズに

秋にリリースする予定の、現場コラボレーションを加速する「S+collabo」

今回、新たな機能として、「S+collabo」をリリースする方針を示した。毎日の報告・連絡・共有をアプリで完結する。情報共有、図面、日々の報告を現場監督と協力会社とのやり取りをアプリでスムーズに実施。このアプリは企業間のやり取りを効率化する効果がある。現場では、電話、FAXでのやり取りが多く、情報も雑に散乱し、それが「言った。言わない」のトラブルに発展し、最新図面も共有化されず、誤った仕様がそのまま施工に入り、手戻りとクレームなどのトラブルになる場合もある。「S+collabo」であれば、チャットとフォームでやり取りを完結、記録を一元管理でき、いつでも最新の図面を現場内で共有でき、現場の連携はさらにスムーズに進む。

「最近、建設業界では人の構成が変わったと感じる。昔は、『チャットはしない。電話が中心だよ』との現場からの声があったが、チャットを起点としてSPIDERPLUSならではの図面を共有していくちょうどいいタイミングだ。そこで新サービスとして、『S+collabo』を世に出そうとしている。」(須藤氏)

紙の記録をデジタル帳票へ

「紙の記録」をDXする、デジタル帳票「S+Report」

もう一つの機能では、紙のイメージのまま情報入力し、現場での帳票作成を解決。詰所に行って紙に書く作業の手間を省くため、リリースを予定しているのが、「S+Report」だ。紛失、汚れ、かさばるなど、大量の紙ベースの帳票管理は保管に大きな手間がかかっている。そのため、現場では帳票作業には大きな労力がかかる。その紙の帳票を容易に電子化するのが、「S+Report」。今、使用中の帳票書式をそのままデジタル化し、誰でも簡単に入力でき、一元管理が可能だ。

「スパイダープラスの顧客はデータの利活用を意識されている。しかし、紙のままでは当然のことながらデータの利活用はできないわけで、『S+Report』のリリースによりデータの利活用の入り口になることが望ましい。現場での帳票の見た目からデータを入力するフローは、電子化を進展しやすくなるため、この機能を重点的に展開していきたい」(須藤氏)

SPIDERPLUS Workspaceの概略

「今後は、顧客のDXにコンサルできるようなアプローチを採用しつつ、改革のパートナーとして取り組む」(須藤氏)

SPIDERPLUS Workspaceの大きな狙いは、これまでの大きなユーザーはゼネコンとサブコンであったが。「職人レベルまで取り込む」ことを考えており、機能の使用者のすそ野を広げることに大きな意味を持つ。SPIDERPLUSは現場全体で企業間での採用が多く、「SPIDERPLUS Workspaceもみんなが使用してこそ便利になっていくため、可能な限りシェアを獲得していきたい」と鈴木副社長は意気込む。

スパイダープラスとしては2025年下半期から2026年の上半期にかけて様々なプロダクトなどをリリースする方針だ。さまざまな機能を個別で使用するよりは、一つの構想の中ですべてが含まれるようなシンプルな設定での利用がより効果を生むと提案する方針だ。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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