アルミ手摺と水抜穴。知識を図面に反映する難しさとは?

知識だけを図面に当てはめても、現実では通用しない!

原理は分かっている。図面にも反映した。でも、何かが欠けていて、最終的には意味をなさないものになって失敗してしまう。

そんな経験をしたことはありませんか?

何だか抽象的ですが、私の経験上、建設現場ではそんな失敗が少なくありません。

私の失敗談をお聞きください。

品質にうるさい所長と現場で問答

まず、「水抜穴」ってみなさんはご存知ですか?

そう、万が一、製品内に水が侵入してきたときに不具合にならないように、水を製品内から外へ排出するための穴です。製作金物や金属製建具をはじめ、建築現場では色々な箇所で見ることが出来ます。

そこで、私自身の話に戻りますが、初めてガラス入りのアルミ手摺のチェックをしていた時のことでした。昔、先輩に言われた「水抜穴のサイズは8Φ以上でないと、水がたまってしまう」という助言を思い出し、水抜穴の入っていなかった図面に、2つ水抜穴を設置しました。

「これで完璧」

しかし、その後、竣工時の社内検査の際に、他の現場の所長から、ある質問をされたのです。

「アルミ手摺に水抜穴を設置している?」

私は自信満々に

「設置しています」

と答えました。

凄く品質にも安全にもこだわりのある所長なので、質問に的確な回答を返すことができて安心しました。

他の部材も合わせて考えろ!

しかし、そんな私のことなどお構いなしに、その所長はアルミ手摺の下端を指でなぞって、さらに私に質問をぶつけてきたのです。

「水抜穴なんで2つにしたの?」

この質問は予想していませんでしたし、質問の意図がさっぱり分かりませんでした。そこで、

「1つだと何かの拍子に詰まるといけないから」

と答えると、私にとって衝撃的な質問がきました。その質問によって「なぜ2つか?」という質問の意味も理解できました。

その質疑回答とは、

「ガラス手摺のガラスのセッティングブロックって、普通何個使うかな?」

「2個です」

「だったら何個の領域に分かれるの?」

「3個です」

「だったら水抜穴って何個必要?」

「3個です」

「だよね」

つまり、私に欠けていたのは他の部材も合わせた考え。最終型をイメージ出来ていませんでした。

知識だけを単純に図面に当てはめても、現実では通用しないことは意外に多いのです。

最終型をイメージしながら、トータルで品質を検討して、トラブルを防ぐという「全体を通したものの見方」が、いかに大切かを思い知らされた失敗談でした。

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大学工学部を卒業後、大手ゼネコンに入社。駅前再開発工事や大型商業施設、教育施設、マンションなどの現場監督を担当している30代の1級建築施工管理技士。新人時代の失敗で数千万円の損失を出した経験から、日々の激務に追われながらも、新人教育に熱意を燃やしている。現場でのケンカの回数は30回ほど。
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