ゼネコンやハウスメーカーでの長年の現場経験を経て、ベルテックスで現場を率いる高橋光輝氏

なぜ不動産投資会社が自ら「つくる」のか。”ゼネコン機能の内製化”の裏にある、一人の熟練現場監督の情熱

投資用マンションの企画・開発から賃貸仲介・管理までをワンストップで手がける総合不動産会社の株式会社ベルテックス(梶尾祐司社長)が今、業界でも異例の「ゼネコン機能の内製化」を加速させている。

その狙いは、ゼネコンの利益相当分の中間マージンの圧縮だけでなく、自社施工だからこそ実現できる「妥協なき品質」の追求にある。その鍵を握るのが、ゼネコンやハウスメーカーの現場監督として30年以上キャリアを持ち、同社品質管理本部建築部建築課の部長代理として現場を率いる高橋光輝氏だ。

なぜ不動産会社が自ら「つくる」ことにこだわるのか。ゼネコンやハウスメーカーの現場監督として30年以上キャリアを積んできたベテラン技術者の高橋氏に、不動産会社が施工を内製化する意義とこれまでの取組みについて話を聞いた。

ゼネコン時代の確かな経験が、不動産会社の内製化を支える

――まず、ベルテックスの事業概要についてお聞かせください。

高橋光輝氏(以下、高橋氏) べルテックスは、不動産コンサルティングから土地・物件の売買、自社ブランド開発、賃貸管理までを垂直統合で提供する総合不動産会社です。現在は東京23区を中心に、1K・1DK・1LDKの新築・中古物件を取り扱っており、オーナー様と入居者様双方の高度なニーズに応えるコンサルティングを軸としています。自社ブランド「VERXEED(ベルシード)」や、コンパクトマンションシリーズ「VERXEED STAIR(ベルシードステアー)」などの開発・管理も積極的に展開中です。

不動産投資において、収益性はもとより「入居者の満足度」と「建物の堅牢性」は欠かせません。長く住み続けていただける価値ある物件を提供するため、当社では自社で用地を取得し、設計・施工までを手がけています。ベルシードシリーズの入居率は99.5%(2024年11月現在)という極めて高い水準を維持しています。その中で、私は現在、施工部門を担当しています。

――高橋さんは現場監督としてのキャリアが非常に長いとうかがっています。

高橋氏 1989年(平成元年)にマンション主体のゼネコンに入社したのがキャリアのスタートです。当初はファミリー向け分譲マンションの現場監督・施工管理に携わり、その後は公務員宿舎などの公共案件で現場施工のチェックを担当しました。その後、賃貸住宅に強みを持つハウスメーカーへ移り、地主様とともにマンションを作り上げるという経験を積みました。賃貸物件は分譲に比べれば規模は小ぶりですが、ものづくりの本質は変わりません。こうした歩みを経て、縁あってベルテックスに入社することとなりました。

――ゼネコンやハウスメーカー時代の具体的な仕事内容について教えてください。

高橋氏 ゼネコン時代はファミリー向け分譲マンションが中心でした。お客様にとっては一生に一度の大きな買い物ですから、非常に厳格に検査を行っていました。とくに製造業などに携わるプロの視点を持つお客様などは、一日かけた内覧で細部を確認されることもありました。常に「お客様の立場」に立ち、たとえ微細な傷や汚れ一つでも徹底的に対応してきました。最大で14階建て460世帯の大型案件や、20階建ての高層マンションを担当したこともあります。

ハウスメーカー時代には、RC造マンションだけでなく木造2×4(ツーバイフォー)の集合住宅も数多く手がけました。RC造では工期の長さや近隣とのコミュニケーション、安全確保に苦心した記憶があります。また、木造の現場では同時に4物件を巡回管理することもあり、移動だけで時間を取られる中、品質を担保するために優先順位を瞬時に判断し、フットワークを軽くして現場を回る管理能力が鍛えられたと感じています。

旧知の協力会社と共に踏み出した、内製化への第一歩

――ベルテックスへの入社の決め手は何だったのでしょうか?

高橋氏 エージェントを通じてベルテックスを知り、「開発事業主が自ら施工管理を行う」という形態に強く興味を惹かれました。面接時、梶尾社長から「ゼネコン部門を内製化したいが、できるか?」と問われたのですが、現場一筋でやってきた自負がありましたので「できます」と即答しました。ゼロからの部門立ち上げは、自分のキャリアを最大限に活かせる挑戦だと感じましたし、何より社長の人柄に惹かれたのが大きな理由です。

――内製化に着手されてからの経過はいかがですか?

高橋氏 徹底した準備期間を経て、入社から1年後に自社施工の第1号案件を完遂しました。現在は内製化3年目に入り、当初の計画通り5階建ての小規模物件で着実に実績を積み重ねています。2025年12月末には3棟目の竣工を迎え、建築部のメンバーも増員されました。2026年2月からは4棟目の物件も着工しており、規模も徐々に拡大しています。

内製化後、1棟目施工物件の「ベルシードステアー東日暮里」

――不動産投資会社が自ら施工を担うことへの手応えはありますか?

高橋氏 投資用ワンルームの世界で、ゼネコン機能を内製化している企業を私は知りません。当社にとっても大きな挑戦でしたが、幸いにも前職まででご縁のあった協力業者の方々に助けられました。一から協力業者を探すのではなく、長年信頼関係を築いてきた業者の方々に声をかけたところ、「ぜひ協力したい」と快諾いただけたんです。

ICTやDXによって昔よりも施工は容易になりましたが、どれだけ技術革新が進んでも最終的には「人」が作るものですし、協力業者なくして成り立たないのが建設業界です。信頼できる協力会社と共にスタートを切れたことで、内製化は大きく前進しました。

内製化を開始したばかりということもあり、現在はまだ小規模な物件が中心ですから、協力会社の方々からすれば、決して大きな利益が出るような案件ばかりではないはずです。それでもベルテックスの将来性を信じてお付き合いいただいていることに、本当に感謝しています。

2棟目施工物件の「ベルシードステアー西早稲田」



内製化率100%を目指し、施工体制のさらなる充実へ

――現在の建築課の体制について教えてください。

高橋氏 建築課は現在、本部長を含め計11名体制です。RC造の施工を担うため、一級建築士や1級建築施工管理技士といった有資格者が私を含め5名在籍しています。今後の内製化強化に向けて、有資格者の採用は最優先事項です。しかし、建設業界全体の人材不足は深刻で、スーパーゼネコンを含めた争奪戦となっています。エージェントの活用など、あらゆる手法を駆使して人材発掘に注力している段階です。

――組織づくりの上で配慮されていることはありますか?

高橋氏 いまは建設業を職業として選ばれる方がとても少ない時代です。とくに土曜出勤や連休取得の難しさは業界として大きな課題です。ですので、当社ではワークライフバランスの向上に努め、働きやすい環境を整えることで、選ばれる組織を目指しています。労働環境を改善しなければ、将来的に人が集まらなくなるという危機感を持って取り組んでいます。

――若手の育成についてはいかがでしょうか。

高橋氏 営業職として採用した幹部候補生に対し、研修の一環として「ものづくり」の工程を教えています。座学での土地仕入れから竣工までの流れに加え、建材メーカーのショールームやエアコン工場の見学なども実施しています。とくにエアコン工場には品質管理や安全対策の粋が詰まっており、非常に学びが多い。私が引率し、多角的な知識を身につけてもらうよう住設関係の研修に努めています。

――これまでの内製化実績と、今後の物件動向を教えてください。

高橋氏 2024年5月に竣工した1棟目の「ベルシードステアー東日暮里(5階建て・14戸)」を皮切りに、同年7月に竣工した2棟目の「ベルシードステアー西早稲田」(地下1階、地上3階建て・15戸)、そして2025年12月に竣工した3棟目の「べルシードステアーα西日暮里」(地上5階・14戸)へと繋げてきました。3棟目は当社内製化物件初のIoT対応物件で、スマートロックや遠隔操作可能な設備を備えた先進的な住環境を実現しています。

3棟目の「べルシードステアーα 西日暮里」

2026年2月には練馬区豊玉で新たに着工し、5月には江東区亀戸、7月には足立区綾瀬と、着工予定が続いています。基本的には「駅から徒歩10分圏内」という高い立地条件を前提に、地域特性に合わせて1Kや1LDKを展開しています。こうした立地へのこだわりが高い入居率の源泉だと考えています。

――今後の展望をお聞かせください。

高橋氏 中期経営計画では、施工の内製化率100%を目標に掲げています。年間最低4棟を自社施工するため、今期中に有資格者をさらに3~4名確保し、8名体制を目指します。現在は一部の物件を外部ゼネコンへ発注していますが、体制を整え次第、完全に内製化できる体制に移行したいと考えています。

また、物件の大型化にも挑戦します。2月に着工した練馬区豊玉のマンションは5階建て・19戸ですが、江東区亀戸の5階建て・22戸、足立区綾瀬の8階建て・34戸と徐々にマンションの規模も大型化しています。私自身としてはさらに大規模な案件を手がける自信もあるので、より大型物件を自社施工で手がける日が楽しみですね。

どれだけ機械化が進んでも、最後は「目視」が基本

――最後に、高橋さんがマンション工事において最も大切にされていることを教えてください。

高橋氏 どれだけ機械化が進んでも、最終的には人の手でつくり上げ、人の目で確認するものです。個別の検査データももちろん不可欠ですが、やはり基本となるのは『目視』です。目視を怠れば、それが重大な事故や不具合に繋がりかねません。今後、物件が大型化して確認の工程が増えたとしても、施工管理はこの原則をおろそかにしてはいけません。

私は常に、「20戸のうち19戸に問題がなくても、確認しなかった最後の1戸に不具合があるかもしれない」という危機感を持って現場に臨んでいます。だからこそ、最後の1戸まで、手を抜かずに細部にわたって検査を尽くすことが大切です。

ものづくりに携わるということは、最後まで責任を取り切るということです。時間がかかっても、最終的に自分の目で納得できるまで確認し、完璧な状態でマンションを引き渡す。それが、施工を担う私たちの果たすべき役割だと思っています。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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