注文者の子どもの過失で  建築中の建物が全焼したら? 

引渡し前に施主の子どもが家を全焼させたら? 施工会社の『再築義務』と『報酬』の行方

引渡し前の火事、施工会社の責任は?

工事中の建物が全焼した場合、民法の原則として施工会社に完成させる義務があるため、ハウスメーカーや工務店が再建築の費用を負担することになります。夜間は無人になる建築現場での火災はとくに心配です。

注文者の子どもの過失で全焼したら?

では、注文者の子どもの過失で全焼した場合はどうなるでしょうか。

まず、注文者は子どもの親権者として子どもを監督する義務を問われます。失火の原因に、注文者が子どもの監督を怠ったなどの過失があり、不注意の程度が著しい重過失の場合は、注文者は民法709条により、請負人に生じた損害を賠償しなければなりません。

請負人は注文者に対して建物再築に要した費用相当額を賠償請求できます

■民法第709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

失火につき子どもに重過失がある場合は?

また、子どもに重過失がある場合は、注文者の責任で建物完成義務が消滅したものとされます。

民法536条2項が適用され、請負人は建物の完成を免れ、報酬全額を注文者に請求できます

■民法第536条

2項.債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。(後略)

失火につき子どもにも注文者にも重過失がない場合は?

では、失火について子どもにも注文者にも過失がないか、過失が軽度の場合は建物完成義務が請負人、注文者のいずれにも責任がなく消滅したものと処理されます。

この場合には民法536条1項が適用され、請負人は建物を再築する義務が消滅し、報酬の請求ができなくなります

■民法第536条

1項.当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

重過失がもたらす重大な影響

通常の「失火」であれば、失火責任法により、延焼した隣家への損害賠償責任は免除されます。失火責任法は、明治32年に制定され、「失火(不注意の過失による火災)の場合、重大な過失のあるケースを除き、損害賠償はしなくて良い」といった内容が定められています。

火災における重過失とは、わずかな注意をすれば火災を防げたのに、それを漫然と見過ごした「故意に近い著しい不注意」です。

重過失があると「重過失失火罪」(刑法117条2項)が適用され、全額賠償責任を負うことになります。刑事罰は3年以下の禁錮または150万円以下の罰金です。火災保険についても、重過失の場合は保険金の支払いが制限されたり、全額支払われないリスクがあります。

重過失の判例

重過失に該当するかどうかを定める明確な線引きは存在しませんが、参考までに判例を紹介します。次のAからEのうち3件が重過失とされ、2件は重過失ではないとされました。

以下のうち、重過失とされたものはどれでしょうか。

A.仏壇の蝋燭が倒れて失火した。

B.寝たばこの危険性を認識しながら、対応策を講じないまま喫煙を続けて火災となった。

C.かんな屑が集積放置されている裏庭で、火災注意報等が発令されている状況下で焚火をしたところ、火の粉がかんな屑に着火して火災になった。

D.自宅の庭で燃やしたゴミの火が枯れた芝生に燃え移り、消火作業に努め、相当な時間現場にとどまって消火を確認したものの、約1時間以上を経過したのちに再燃して近隣の建物を延焼させた。

E.ガスコンロに天ぷら油の入った鍋をかけ、台所を離れたため、てんぷら油に引火し、火災が発生した。


子どもによる火事は親の重過失というのが判例です

判例は、下記のとおりです。

重過失とされた判例

B.寝たばこの危険性を認識しながら、対応策を講じないまま喫煙を続けて火災となった。(平成2年10月29日 東京地裁)

C.かんな屑が集積放置されている裏庭で、火災注意報等が発令されている状況下で焚火をしたところ、火の粉がかんな屑に着火して火災になった。(昭和58年1月28日 京都地裁)

E.ガスコンロに天ぷら油の入った鍋をかけ、台所を離れたため、てんぷら油に引火し、火災が発生した。(昭和57年3月29日 東京地裁)

過失だが重過失ではないとされた判例

A.仏壇の蝋燭が倒れて失火した。(平成7年5月17日 東京地裁)

D.自宅の庭で燃やしたゴミの火が枯れた芝生に燃え移り、消火作業に努め、相当な時間現場にとどまって消火を確認したものの、約1時間以上を経過したのちに再燃して近隣の建物を延焼させた。(平成16年12月20日 さいたま地裁)


子どもによる火事で親に重過失がなかったと証明された例はほとんどないようです。

建物は建築主の夢の塊、火事には人命も関わります。子どもは火遊びが好きなものですから、この際、マッチやライターは裁判所が認めてくれるであろう金庫などで厳重に管理した方がいいかも知れません。

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関西をベースに広告コピー、取材記事、農家レポートなどさまざまな原稿を執筆しています。ギターはスケールに挑戦中です。
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