突然「ボンっ!」「ピピピー!」コンクリート打設時の型枠トラブル3連発

コンクリート打設時の型枠トラブル

コンクリート打設は、建設現場の大イベント。何もなかった空間にコンクリートを流し込むことによって、新たな形をつくる行為は、建設業の醍醐味でもあります。

そして、コンクリート打設は泣いても笑っても一発勝負。できるだけトラブルのないように準備を進めますが、いつも上手く打設できるとは限りません。

私が経験したコンクリート打設の型枠トラブルをお伝えします。

型枠大工がいつも正解とは限らない

ところで、みなさんはコンクリートを打設する時、「一度に打設すると側圧がかかりすぎるため、何回かに分けて打設する場合」はどうしていますか?

きっと、これまでの経験や計算に基づいて、打設順序と打ち上がりまでの回数を決定すると思いますが、最終的には型枠大工さんに「3回に分けて打設するけど大丈夫?1回目はここまで打設しても良いよね」などと確認しますよね?

実際に型枠を組み立てた人間の経験と勘に頼る部分は決して少なくないはずです。

だけど、いつも型枠大工さんの感性が正解であるとは限りません。最終チェックミスや周囲の予想外の状況変化で「許容範囲内」が一気に「許容範囲外」になることもあります。

基礎・地中梁のコンクリート打設日に突然「ボン!」

あれは基礎・地中梁のコンクリート打設日のことでした。

私は作業員さんたちと事前にコンクリートの打設計画を練ってから、当日のコンクリート打設に挑みました。型枠大工さんは「そのくらいだと全然余裕だよ」という感じだったのですが、世の中は思い通りにいかないものです。

とある基礎を打設中、もう少しで既定の高さまで達する直前に、突然「ボン!」という大きな音がしました。慌てて確認すると、基礎の型枠が大きく膨れていたのです。その場にいた全ての作業員さんが予想外のことに慌てふためきました。

その原因はすぐに分かりました。基礎の型枠の補強で掘削法面からついていたパイプサポートが、なんと土の中にめり込んでいたのです。パイプサポートの反力を失った型枠が膨れてしまっていました。

型枠大工さんは真っ青な顔をして修復作業に当たりました。数本のパイプサポートと足場板を使って、土に埋まったパイプサポートの回りを補強して、さらに型枠を押し戻そうとしました。

すると、徐々に型枠が戻っていき、最終的に「まあ、基礎だからこのくらい戻れば良いや」という状況まで戻ったのですが、かなり焦った瞬間でした。

スラブ段差がフラットになった!

次は上階の躯体コンクリート打設時の話です。

コンクリート打設の型枠大工さんの合番の人数は大抵1~2人程度です。さらに、打設階にいる型枠の「たたき」を行う人たちもそんなに多くはなく、大抵は打設している箇所に張りついて作業しているので、必然的に「目の届かない死角になるエリア」が発生します。その「死角」でトラブルが起こりました。

あるマンション現場のコンクリート打設で、その日に打設する工区は吹き抜けの梁など、少し複雑な建物形状の工区でした。下回りにいる作業員さんは建物の内外部を忙しく動き回っていました。

それから、しばらく経って私がスラブ上から打設状況を確認していると、なかなかコンクリートが上に上がってこなかったのです。「おかしいな」と少し感じながらも状況を見守っていたその時でした。

「ピピピー!」と下の階から笛の音が聞こえたのです。笛の音でコンクリート打設は一時中断。慌てて下の階へ行くと、みんなが1ヶ所へ集まっていました。そこで見た光景には驚きました。

あったはずのユニットバスのスラブ段差が、フラットになっていたのです。つまり、かなりの量のコンクリートが、型枠の隙間から吹き出していたわけです。しかも、吹き出した場所が打設場所から5mくらい離れていて、みんながいた場所の反対側の壁から吹き出していたので発見が遅れました。

それから、作業に支障のない人たちを集めて、吹き出してしまったコンクリートの搬出作業が始まりました。土のう袋に少しずつスコップで手分けをして詰めていきます。吹き出る汗とは裏腹に詰めても詰めても減らないコンクリート。途方に暮れながらもコンクリートが硬化してしまったら最後なので、フラフラになりながらも土のう袋にせっせと詰めていきました。

そして、コンクリートが詰め終わりそうになったとき、ふとあることに気がついたのでした。「この土のう袋たちをどうやって下ろすのか?」ということです。100袋以上はあったであろうコンクリート入りの土のう袋をロングスパンエレベーターで降ろす元気は、私も含めてみんなにも残ってませんでした。

その時、先輩が「鳶さんにステージを盛り替えてもらってクレーンで降ろそう」と言ってくれたので、近くに設置されたステージからワイヤーモッコに土のう袋を載せて降ろすことが出来ました。何とか水平移動だけで済みましたが、本当にヘトヘトになりました。

高強度コンクリートのデメリットを知ったトラブル

3つ目のコンクリート打設時のトラブルは、分かっていても止められなかった話です。

超高層という部類の現場に携わっていた時の事です。その現場はPCではなくRC造でした。そして、その時に打設していたは高強度コンクリートでした。

しかも、高強度コンクリートの品質がスランプ管理ではなく、フロー値での管理であったため、一般的な普通コンクリートよりも粘りはあるがドロドロというイメージのもの。吹き出しなどのトラブルがあると、とめどなく流れ出しそうなので、前日に型枠の足元の間詰めを行ったはずでした。しかし、いつも上手くいくとは限りません。何フロアか上手くいっていたので、何となく安心していたある日に、事件は起こったのです。

その日もいつもと同じように前日に間詰めを行ってましたが、何かの拍子に外れてしまったのでしょう。バイブレーターをかけるとわずかな隙間からドロドロのコンクリートが、あっという間にスーッと流れ出したのです。とっさにバイブレーターをとめてコンクリートが漏れた所を塞ぎましたが、すでに柱の足元にはコンクリートの山が出来ていました。

フロー値が大きくて自己充填性が良いので、ジャンカなどの品質トラブルが普通コンクリートに比べ、圧倒的に少なくて良いと感じていた高強度コンクリートのデメリットを経験した瞬間でした。

現場監督をしていれば、大なり小なり同じような経験をされていると思いますが、コンクリート打設のトラブルは、実際に遭遇すると「マジか~」と思わず声が出てしまうような状況になります。そして、2度と同じ状況にはなりたくない、と心から思いますので、みなさんもくれぐれもご注意を。

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大学工学部を卒業後、大手ゼネコンに入社。駅前再開発工事や大型商業施設、教育施設、マンションなどの現場監督を担当している30代の1級建築施工管理技士。新人時代の失敗で数千万円の損失を出した経験から、日々の激務に追われながらも、新人教育に熱意を燃やしている。現場でのケンカの回数は30回ほど。
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