女子学生が建設現場にやって来た!「建設会社のインターン事情」とは?

女子学生が建設現場にやって来た!「建設会社のインターン事情」とは?

女子学生が建設現場にやって来た!「建設会社のインターン事情」とは?

建設現場に女子大学生がインターンシップ

建設業に少しでも興味のある大学生たちは、夏季休暇などを使い、ゼネコンや建設コンサルタントなどにインターンシップしている。私の現場にも、先日、女子学生がやって来た。

他の現場や会社ではどうしているのかわからないが、私の現場では今の状況をできるだけ包み隠さず、この女子学生に見せていたのがとても印象深かった。

事故も隠さない建設会社のインターンシップ

うちの会社としては、喉から手が出るほど、その女子学生に入社して欲しいと思っている。しかし、所長はあえて「来て欲しい!」とは言わなかった。「ウチの現場を見て感じたことを大切にして欲しい。そのうえで、建設業っていいな、現場って面白いな、って思ってもらえたら嬉しい」と、その女子学生に語っていた。

限られた期間ではあったが、女子学生には、様々な作業を体験してもらっていた。測量や道路中心線設置、写真撮影・整理、図面の編集などなど。配筋検査や型枠検査、事前検討会にも出て、実際に検査立ち合いなどもやっていた。朝礼や昼礼にも参加してもらっていた。

タイミング悪く、あまりよくない出来事が起きていたが、それも見せていた。何が起きたかというと、重機の転倒事故だ。実際に、女子学生をそこに連れていって、転倒している様も見せたのだ。

土工の工事中、盛られた土の上を移動していた重機がスっ転んでしまった。当然、現場事務所はあわただしくなる。クライアントへの報告、会社への報告、労基署への報告・連絡・相談、クライアント立会いの現場確認、周知会の開催、再発防止策の検討と検討会開催、などなどバタバタしていた。この事故では人的被害が無かったのが不幸中の幸いだった。

その女子学生の面倒を見ていた職員も、「現場ってこういうことが起こるし、想定外のことも起こるんだよ」と隠そうとはしなかった。現場にトラブルは付き物で、できるだけ見せたくないものだけど、こういうことも見せることが大事なのだ。あらかじめトラブルが起こるものだと思って建設業界に来るのとそうでないのとでは、天地の差があると思う。

土木が面白くなる建設会社のインターンシップ

その女子学生は休憩時以外、職員と一緒にずっと現場に出ていた。作業員が何をやっているのか、現場管理とはどういうものなのかを、できるだけ包み隠さず見せた。測量作業も体験させた。実地では測量はどうやっているのか、学校の実習が現場でどう役立っているのかを体験できる良い機会だ。

暑い夏の日差しの下、ずっと屋外で現場管理をするのは思っている以上に大変だと体感しただろう。測量では自分で現場を歩き回り、器械を据え付け、計測する。一ヶ所終わったらすぐに次、次と移動する。結構キツいものだが、そういう面もできるだけ学生に体験させた。しかし、その女子学生は活き活きとして、こちらが思っている以上に精力的に動き回っていた。屋外での仕事が好きなのかもしれない。

もちろん、土木の現場には、楽しい面もたくさんある。モノが少しずつ形になり、出来上がっていく様は、他の業種ではなかなかお目にかかれない。土木の現場ではそれを実際に眺めることができる。

また、学校での座学が現場でどう使われているのか、コンクリートはどうやって打つのか、学校で勉強した実験は実際の現場ではどうなっているのか、構造力学や土質工学などは現場でどんなことに役立つのか、などがわかってくると、土木はどんどん面白くなってくるものだ。

建設業にマイナスのインターンシップ

しかし、企業は学生に対して、とにかく良いところとか楽しそうなところを中心に見て欲しいと考えがちである。会社とか業界が発信する情報は、キラキラしたものや光が当たっているところがとても多い。人手不足の折で、建設業界では「猫の手も借りたい」という状況を各所で実感できるようになっているので、そういう面を見せたい気持ちはよくわかる。

一方で、学生はバカじゃない。私たちが思っている以上に賢い。私が考えている以上に周りを、世の中を見ている。ネガティブな面を隠そうとしたって、すぐバレる。キラキラしたところをたくさん見せたって、「そんなことばかりじゃないよね」ってなるのである。

先ほどのような事故とかトラブルなんて、見せたくないだろう。会社に対してイメージダウンにつながりかねないからだ。だからこそ、見せるべきだということも言えるのではないだろうか。

インターンシップは、実は至高の情報発信だ。言葉だけでなく、実際に自分の目で見て、耳で聞いて、そして考えながら接することができるからである。学生はなぜ、インターシップに来るのかというと、建設業の良い面だけじゃなく、良くない面も見たいからじゃないか、と私は考えている。実際に就職した際、「こんなはずじゃなかった」という想いを抱くのを嫌っているように思うのだ。

どの業界、どの会社であろうが、良い面があれば悪い面もある。光があれば影があるように、必ずしも「それってチョット」って感じることはいくつもあるものだ。それを隠してしまうのはとてももったいないことだし、それが建設業界の情報発信に表れているように思える。

それは会社のホームページや建設専門紙を見てもわかると思う。わが社はこれだけ女性技術者を採用してます!福利厚生、これだけ充実してます!男女平等に育児休暇制度、導入してます!というアピールはよく見られるが、実際に行動に起こしている人がどれくらいいるか。制度だけあって活用はさせない!なんてことになっていないか、現場管理ってほんとに女性でもできるのか、というのは、そこに飛び込まないとわからないことだ。

建設業はインターシップでもっと情報発信を

実際、制度を利用させないように仕向けている会社もあると聞く。直に本人に言わなくても、間接的に心理的な圧迫感を与えて、制度を利用しないように本人を動かしている企業もあると聞く。

こちらの記事にも、その一端が紹介されている。
■24歳女性現場監督の葛藤「現実を隠してでも、女性を採用すべきか?」

私も建設業界にいる人間だが、建設業界はその影を隠して情報発信をしているように見えるのだ。それを払しょくするために、インターシップを活用するのも一つの手だ。多くの会社では2週間ほどの期間が多いようだが、もっと長期間やってみるのもいいと思う。

たとえば、学部4年の10月~2月の間、5か月ほどをインターンシップにあてて、企業で実務体験させる大学もある。これだけの期間を会社で過ごせば、いやがおうにもポジティブな面やネガティブな面が見えてくるものである。しかも業界が繁忙期の時期にやるインターンシップなので、業界にとってもっともキツイ・厳しい期間を過ごしてもらうことで、実情をありのままに知ることができるのだ。

聞くところによると、この5か月間で社内の様子や仕事の進め方が見えてきて、インターンシップでお世話になった会社に就職する人も結構いるようである。これはインターンシップがもたらす情報発信の効果の一つと言えるのではないか。

もっとも、「この忙しいときに学生の面倒なんて見られるか!ボケ!」なんて人もいるかもしれないが、それは自分で自分の首を絞めるだけである。そんなこと言っておきながら「若い人が来てくれない。まったく今どきの若いやつは」と言っているのだ。

インターシップは素晴らしい情報発信の手段である。人材採用に苦戦している企業は、インターンシップを活用して情報発信をしてみるのも一つの手だと思う。ブログとかホームぺージで発信することも大切だが、現場をライブで見せることも立派な情報発信だ。

事故が起きたってトラブルが起きたって隠さず見せてやればいい。そこでちゃんと対応していることを見せればいいのだから。

建設業界の情報発信の質が、もっともっと向上していってくれることを願ってやまない。

この記事のコメントを見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
24歳女性現場監督の葛藤「現実を隠してでも、女性を採用すべきか?」
「現場の雰囲気が良すぎ!」北陸出身だったら、村中建設に入社してたかも
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
ぶっちゃけ、現場事故で「最初に気になる」ことは何?
女性建設技術者の「草分け的存在」が告白する逆境・出産・仕事術とは?
トヨタよりゼネコンがいい?QUOカードを貰える「建設業就職説明会」に参加した就活生の“本音”
大手建設会社に勤務する30代の建設技術者。 工事費1000億円超の現場で、計画・設計等を担当しています。
モバイルバージョンを終了