大赤字を招いた土木工事の現場監督者
土木工事の現場監督者は、常に仕事の段取りを把握し、仕事師(土木工事従事者)の作業が止まらないようにする必要があります。仕事師の作業が止まれば、仕事師たちの利益率にも影響が出るし、監督者自身も、月末に提出する工事履行報告書の進捗率が上がらず、役所や検査官から白い目で見られることになります。
が、しかし、現場管理がずさんな監督者がいるのも事実。あまりにも現場管理がテキトーだった監督者Yは、大赤字を招くという大失態を演じました。監督者Yの失敗事例を反面教師にして、いかに現場管理の仕事が重要か再認識していただければ幸いです。
近所への挨拶回りを怠った現場監督者
工事を行う際、近隣住民に事前に挨拶に行くことは、現場監督者として当然の仕事です。しかし、監督者Yは事前の挨拶や、近隣住民とのコミュニケーションを怠りました。
現場は道路沿いで、急傾斜工事のために撤去したブロックの復旧工事。現場の道幅は非常に狭く、ブロックを復旧すると、軽自動車以外の車は侵入できない現場でした。
そのため、近隣住民は「自動車が通れないから、現状のままか、ブロックの境界を50cm程下げてほしい」と要望。しかし、その土地の地主は、車両が入ってくることをなるべく避けたいので、元通りにブロックを復旧してほしいと希望し、双方の意見はまとまりませんでした。
本来なら、ここで住民と地主の間に入って、ベストな施工法を導き出すのが現場監督者の仕事ですが、監督者Yは間に入って話を進めようともしません。
そんなこんなで具体的な施工方法が決まらず、ブロック積みの境界の位置決めもできないまま、1週間も現場の仕事が止まってしまいうハメになったのです。
遅すぎたブロックの材料搬入
一方、仕事師はブロック積みの施工が決定した後、すぐに必要なブロックの材料数を確認し、監督者Yにオーダーをかけるよう頼みました。ところが、監督者Yはこの話があった1週間後に、ようやく材料のオーダーを行うという怠けぶり。
オーダーが遅れるだけならまだ良かったのですが、施工現場が遠いなどの諸事情から、ブロックの材料屋は、一日3トンダンプ1車分しか、ブロック材料を搬入できない、という事態になりました。
仕事師はブロック積みのプロなので、3トンダンプ1車分の材料なんて、半日も必要としません。ブロック積みが完了しても、もうその日は材料の搬入がないわけですから、仕事師の仕事も止まり、工事進捗率も伸び悩むことになります。
元請会社も仕事師たちも赤字に
結局、この現場でブロックを完全につき終えたのは、工期が過ぎた1週間後でした。もちろん、現場の純利益は上がるはずもありません。さらに、元請だけの赤字ならまだしも、施工を担当した仕事師たちの会社も赤字になってしまいました。
その結果、下請け業者は烈火のごとく怒り、監督者Yの現場では、もう仕事を受けてくれなくなってしまいました。
今考えれば、最初から近隣住民と円滑にコミュニケーションを図り、位置決めと測量をスムーズに行っていれば、1週間早く施工に取り掛かることができた現場でした。また、材料オーダーをあらかじめ逆算して搬入することが出来ていれば、仕事師の仕事のペースからして3日もあれば終わる現場でした。
最終的には大きな赤字を招く結果となりましたが、そもそも監督者Yには、現場管理以前に、人間としての意思疎通能力が欠けていたのかもしれません。
近隣住民への対応をナメると、のちに大火傷する例は、この他にも多数ありますので、ぜひ反面教師にしてください。